美しい旋律と会場中からの拍手の中、架純は堂々と胸を張って、父親と共にバージンロードを歩いた。大きなホールの中には招待客がひしめき、美麗に飾られた人々の宝石が、キラキラとシャンデリアの光りに反射して輝いていた。会場中を飾る花々は美しく咲き乱れ、架純の純白のウェディングドレスを引き立てている。彼女は長く尾を引くドレスに足を取られないよう細心の注意を足元に置いていたが、顔にはあくまでも幸せに満たされた微笑みを刻んでいた。ベールのせいであまり見えていなくとも、いつ、どこから見られても大丈夫なように、完璧に自分を装っていた。だから、気づくのが遅れた。隣を歩く父親の腕がある一瞬、強張ったのは知っている。でもそれは、ただ緊張をしているのだろうと気にしなかった。しかし、あともう少しで新郎へ花嫁を引き渡すという時、彼の足がピタリ、と止まった。「ちょっと!どうしたの!?」小声で諌めると、なんと父親はぶるぶると震えだした。「お父さん?」「……」見上げると、彼の目は驚愕に見開かれていた。そして、小さな声で呆然と呟いた。「これは……。彼は…彼は、誰だ…?」「は?何を言ってるの?彼は新郎よ?怜士に決まってー」架純の声はそこで途絶えた。真っ直ぐに正面から見た、本来新郎が立っているはずの場所に、まったく知らない男が立っていたからだ。「誰……?」そう言うと、男は可笑しそうに笑った。「誰って、君の夫さ。はじめまして、架純」「……」その言葉に、彼女は思わず一歩後退った。そして「信じられない…」と呟き、キョロキョロと辺りを見回したのだった。そんな彼女を、新郎は肩を竦めて黙って見つめていた。「怜士!」架純がある一点を見た途端、悲壮な声で呼びかけた。「どうしてあなたがそこにいるの!?あなたは新郎でしょ!?」そう言うと、徳仁の腕をパッと離して小走りでそこへ向かった。だがー「どこへ行く?」後ろからガシッと手首を掴まれ、足を止められた。「離して!」掴まれた手を取り戻そうと必死に暴れるが、全然びくともしなかった。架純は怒りに駆られて喚き散らした。「離して!離しなさいって言ってるの!!この痴漢!」「黙れ」「っ…」その威圧的な声音に、ビクッと身が竦んだ。男は新郎らしく真っ白なタキシードを着て、胸元には1輪の花を飾り、引き締まった身体を惜しげもなく
Last Updated : 2025-10-24 Read more