杉浦マイが作ってくれた雑炊が、奏効したのか、続けて会社を休んだ金曜のお昼頃には、瑞穂の風邪はほぼ治っていた。もはや、懸念するのは喉の不快感のみという状況にまで体調が回復した瑞穂は、ベッドの上でのど飴を舐めながら、月曜日にどういう心構えで出社すべきかを思案していた。「とりあえず、若松部長のデスクに行って謝るでしょ。そんで、真中課長と和田マネージャーにも……」ここで瑞穂の思考は、Web動画の再生を一時停止したようにストップする。「和田マネージャーか」瑞穂は呟くと、寝返りを打った。「アンナ事」をした挙げ句、結果的に逃げたように休んだというのもあり、瑞穂は週明け和田マネージャーと顔を合わせるのがどうにも気まずかった。風邪を押して出社した、今週の月曜と火曜は、和田マネージャーが外回りに出ていた為、挨拶程度のやり取りで済んだが、来週通常通りに出社するとなると、そうもいかない。仕事上、何かしら和田マネージャーとやり取りする事は必至である。その時、自分は和田マネージャーと普通にやり取りする事が出来るだろうか。もしかしたら、自分が休んでいる間に、和田マネージャーがあのアバンチュールを誰かに話している可能性だってある。そして、早退を入れればほぼ4日も出社しなかった事に対して、和田マネージャーが何かしら胸の内に溜め込んでいる可能性も否定出来ない。以前までの、和田マネージャーなら、『別に気にしてないよ、俺。部長も同じ事言ってたけど、高畑さんが休む事自体滅多にないからね。つーか、他の奴も有給を取ってるんだから、高畑さんもたまには取るべきだよ』と、言ってくれるかもしれない。が、身体を交えた今、和田マネージャーは以前みたく「心優しい上司」として自分に接してくれるだろうか。──いや、「心優しい上司」でいる可能性は十分にある。自分は和田マネージャーに交際を申し込んで、断られているのだ。変に期待を持たせて、なし崩しにセックスのみの関係に和田マネージャーが持っていく事も否定は出来ない。いくら、心牽かれた相手とはいえ、所詮和田マネージャーも性欲に従順な「男」であるのだから。そうなると、勘のいい女子社員の間で自分と和田マネージャーの事が噂になり……。「あー、めんどくせぇー!」瑞穂は頭をかきむしると、考えるのをやめた。これ以上考えたってどうにもならないし、
Last Updated : 2025-07-14 Read more