消灯し、警備会社への登録となるスティックキーを差し込むと、瑞穂と和田マネージャーの二人は足早に社屋を出た。「さてと」ジャラリ、と音を響かせ、和田マネージャーは鍵をジャケットのポケットに入れると、ゆっくりと振り返り、後ろの瑞穂を見据えた。「ところでさ、高畑さん。今日は晩ごはん、どうするの?」「えっ」思わぬ和田マネージャーの問い掛けに、瑞穂の胸は高鳴りを見せる。「……そうですね。遅くなったので、今日はお弁当でも買って帰ります。さすがに、今から帰って作ったりするのは面倒ですしね。あとは、頑張った自分へのご褒美として、ビールの一本でも買って帰りますよ」「その、ご褒美とやら。俺に出させてもらっていいかな?」「えっ?」「メシでも食いに行こうよ。今日はおごってあげるよ。もちろん、ビールもね」「えっ、いいんですか?」瑞穂は高揚した気持ちを抑えきれず、つい声が大きくなってしまった。「いいよ、メシくらい」その瑞穂の様に、和田マネージャーは微笑した。「今日の高畑さんは、結構頑張ってくれたからね。メシでもおごらなきゃ、後で俺が高畑さんに何か言われそうだよ。っていうか、俺が帰ってきた時には高畑さん、メチャクチャ恐い顔してたからね。何か、塩分間違えた味噌汁でも飲んだような顔してさ」「えっ、アタシ。そんな怒ってるの、顔に出てました?」「うん、結構。だって、扉開けて、一人仕事してる高畑さんの顔みたら、完全ヤクザみたいになってたもん」「ちょっとー、ヤクザとかさすがに言い過ぎじゃないですかぁ」ストレートな和田マネージャーの表現に、瑞穂は眉根を寄せた。「あっ、ゴメンゴメン」和田マネージャーは再び笑うと、商店街に向けて、ゆっくりと歩を向けた。「とりあえずさ、ついて来てよ高畑さん。ちょっと歩くけど、美味しくて面白い店があるんだ。今日は、そこで晩ごはんを食べようよ」「はい」瑞穂は頷くと、緩やかなスピードで歩いてくれる和田マネージャーの傍らから離れないよう、軽やかな足取りでもってついて行った。·商店街を突き抜け、繁華街に突入したトコロで、和田マネージャーは通りを左折した。瑞穂も続いて左折をすると、居酒屋やラーメン屋などが建ち並ぶ通りを、キョロキョロと見回しながら、和田マネージャーがどの店に入るのかを推察する。「この店」ボーリング場
Last Updated : 2025-07-03 Read more