「ママ、まだここにいちゃだめ?」娘は雨宮星羅(あまみや せいら)の首に抱きつき、涙ながらに訴えた。「今日、パパがレインボーのオルゴールをくれたの。パパって呼んでも怒らなかった。パパ、私のこと好きになったみたい。パパのこと、大好き。パパと離れたくない」星羅は娘のもちこの期待に満ちた瞳を見つめ、真実を告げることができなかった。榊柊也(さかき しゅうや)は娘を愛していない。ましてや妻である自分も、この家庭も愛していない。あの時、柊也は初恋の人との結婚を控えていた。しかし、結婚式当日、彼の恋人は他の男と姿を消した。柊也がどんなに引き留めようと、彼女は振り返らなかった。自暴自棄になった柊也は、参列者の中から星羅を選び、その場で彼女と結婚したのだ。しかし、結婚して5年、二人はずっと別々の部屋で寝ていた。ある日、柊也は酒に酔った勢いで、星羅と一夜を共にした。その後、星羅は妊娠した。柊也の母は星羅に中絶手術をやめさせ、子供を産ませた。この一件で、柊也は星羅をひどく憎み、生まれた娘にも冷たく当たった。娘は生まれてから半月間、集中治療室に入院していたが、彼は一度も見舞いに訪れることはなかった。娘を抱き上げることもなく、ミルクを吐いて窒息しかけた時でさえ、見て見ぬふりをした。実の父親でありながら、赤の他人よりも冷たかった。今夜、柊也の元カノが離婚して帰国した。普段はもちこに無関心な柊也だったが、娘を抱くと何度も頬にキスをし、娘にはレインボーのオルゴールをプレゼントした。「ママ、聞いて!パパがくれたオルゴール、流れてるのは『愛しき我が子』の曲なんだよ!」もちこは音楽に合わせて踊り、嬉しそうに笑った。「パパがくれた曲、私の一番好きな曲!パパはきっと私のこと、好きになったんだよね?」星羅が答える間もなく、もちこは家族写真を持って駆け寄り、訴えかけてきた。「ママ、見て!パパが私を抱っこして、1歳の誕生日写真撮ったんだよ!パパは私のこと、愛しているんだよね?見て!パパ、すごく嬉しそうに笑っている!」星羅が黙っていると、もちこの瞳の輝きが消え、涙が頬を伝った。「ママ、パパは毎日たくさん手術をして疲れているから、私に笑いかけてくれないし、抱っこもしてくれないんだよね?私のこと嫌いなわけじゃないんだよ
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