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第3話

Author: トトロからのハグ
リビングの時計が12時を指しても、柊也は帰ってこなかった。

いつもの結婚記念日と同じように、星羅は一人で、たくさんの料理が並んだテーブルの前に座り、夜が明けるのを待っていた。

昔なら、彼女は何度も電話をかけ、一緒に過ごそうと彼に頼んだだろう。

だが今は、もうそんな惨めな思いをしたくなかった。

どうせ、柊也はこの結婚を何とも思っていない。

自分と娘のことなど、どうでもいいのだ。

星羅は箸で、美味しそうな酢豚をつまんだ。

しかし、口にした途端、苦くて飲み込むことができなかった。

5年間の結婚生活と同じで、苦しくて、辛いだけで、少しの甘みも感じられなかった。

彼女は料理をゴミ箱に捨て、荷造りを始めた。携帯の写真フォルダから、柊也の写真を全て消した。

結婚写真をハサミで切り刻んだ。

庭に植えてあった、彼のために育てたひまわりを、根こそぎ引き抜いた。

全てが終わると、彼女は疲れ切った体で2階に上がり、もちこを寝かしつけようとした。

ベッドに横たわる娘の顔が真っ赤で、口元には血がついているのを見た。

星羅は嫌な予感がした。急いで娘を連れ、榊総合病院の救急外来に向かい、教授である木村先生の診察を受けた。

医師が聴診器を当てようとしたその時、

外から聞き慣れた声が聞こえてきた。「木村先生は、今日は何番の診察室ですか?」

「ママ、パパの声みたい!」

もちこのうつろな目に光が宿った。咳き込みながら、嬉しそうに言った。「私が病気だって知って、見舞いに来てくれたの?」

「よかった、制服のままで。もっと見てくれるかな。昨日、パパ、『制服姿、可愛いね』って言ってたから」

星羅は、そんなはずはないと思った。

しかし、もしかしたら、彼が娘の心配をして来てくれたのかもしれない、という淡い期待も抱いてた。

娘はこのところ、咳と発熱を繰り返していた。

柊也の母は、何度も星羅に電話をかけ、娘の容態を尋ねられ、そして柊也にもっと娘のことを気遣うようにと言いつけていた。

星羅が振り返ると、驚いた顔の柊也が目に入った。

彼は幼い女の子を抱いていた。

後ろに立つ沙耶が穏やかな口調で言った。「柊也、莉央は少し咳をしただけで、そんなに大騒ぎするようなことではないわ。

木村先生は忙しいのよ。重症患者を優先しなきゃいけないんだから」

「沙耶、咳は侮れないぞ。高熱が出て肺炎になったら、命に関わるんだ」柊也は深刻な表情で言った。

彼の言葉を聞いて、もちこの瞳の輝きは消え、より一層咳がひどくなった。その様子を見た星羅は胸が張り裂けそうで、娘の背中をさすった。「木村先生、娘は高熱が下がらない上に、血まで吐いてしまったんです。先に診てもらえませんか?

肺炎かもしれないんです!」

木村先生は困った顔をして、動かなかった。

星羅は柊也に縋るように言った。「榊先生、お願いです。娘は具合が悪く、すぐに検査が必要なんです……」

柊也はもちこの口元の血を見て、眉をひそめた。

しかし次の瞬間、彼はきっぱりと言った。「木村先生、先に莉央を診てください!」

星羅は信じられないという思いで柊也を見つめた。全身に寒気が走り、血の気が引いた。

彼は佐藤莉央(さとう りお)への愛情を隠そうともせず、もちこの悲しそうな顔には目もくれなかった。

彼の心の中に、もちこの居場所は全くなかったのだ。

星羅は失望し、娘を抱いて病院を出て、タクシーで別の病院へ向かった。

医師がもちこに点滴を打ってもらっている時、

普段は注射を怖がるもちこが、涙をこらえながら言った。「ママ、今日、注射の時、私泣かなかったよ。パパ知ったら、私のことを好きになってくれるかな?見舞いに来てくれるかな?」

星羅は娘の期待に満ちた瞳を見つめ、胸が詰まった。「もちこ、あなたは強くて、いい子よ。もっとあなたのことを大切にしてくれる人がいるわ」

「でも……パパに好きになってほしいの……」もちこは俯いて、しくしくと泣いた。「抱っこされたこと、一度もない……」

星羅は胸が張り裂けそうになり、思わず拳を握り締めた。

柊也、二度目のチャンスも失ったわね。

もう後は一回しかないんだから!
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