Lahat ng Kabanata ng 『からくり紅万華鏡』—餌として売られた先で溺愛された結果、この国の神様になりました—: Kabanata 41 - Kabanata 50

67 Kabanata

41.おちゃめな神様③

 淤加美が懐から宝石を取り出した。蒼愛が作った不完全な色彩の宝石だ。「月詠見に借りたのだけれど、蒼愛が作った宝石を、使ってもいいかな?」「はい、勿論です。けど、まだきっと完璧ではなくて」 蒼愛は紅優を見上げた。「俺の左目が戻って番として完全な絆を結べないと、充分な強度の色彩の宝石は造れないようなんです」「でも、紅優の左目を戻しちゃったら、臍を守る宝石がなくなっちゃうから」 紅優と蒼愛の話を聞いて、淤加美が頷いた。「なら、ちょうどいいね」 蒼愛は首を傾げた。「犯人を釣る餌さ。現行犯で捕縛したら、言い逃れできないからね? そういう状況を作るのに、この宝石はちょうどいいよ」 月詠見の言葉に、蒼愛はまたも首を傾げる。「次の寄合で、この玉を本物と偽り神々に加護を与えてもらう。紅優の左目に代えて社に祀る。不完全とはいえ、一時的な強度としては充分だ。本物を作るまでの間くらいなら持つだろう。色彩の宝石さえあれば、紅優の目は戻せるからね」 淤加美が爽やかに笑んだ。 月詠見が蒼愛に問う。「改めて聞くけど。完全な番になれば、蒼愛は完璧な色彩の宝石が作れそうかい?」 月詠見の確認は、淤加美に聞かせるための最終確認なんだと思った。「多分、できると思います。左目が戻ってから、紅優にいっぱい妖力を送ってもらえば」 具体的に何が足りないのかは、実のところよくわからない。 だが、何かが欠けていると感じる。 それはきっと、紅優の中の何かだと感じていた。「いっぱい……」 日美子の呟きに、蒼愛の顔は火を噴きそうなほど熱くなった。「ちがっ、その、貰い方はいろいろあるから」 慌てる蒼愛の頭を、日美子が嬉しそうに撫でる。「いっぱい送ってもらってる間でも、本物を作っている間でもいいけど、その間に犯人に偽物を盗んでもらおう。現場を抑える警備を敷かないとね」 淤加美が、とても良い笑顔で蒼愛を眺めている。
last updateHuling Na-update : 2025-07-08
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42.甘い誘惑①

 水ノ宮を訪れた日以来、蒼愛と紅優は泊り込みで淤加美と共に準備をしていた。 準備と言っても淤加美から受けた加護を体に馴染ませているだけなのだが。 蒼玉である蒼愛は水ノ宮にいるだけで霊力が強まり、淤加美の加護が馴染むらしい。 水の加護が馴染むと全体的な霊力の底上げにもなるそうだ。 神力も分け与えてもらっているので時間がかかるらしく、もう数日は留まる予定だ。「蒼愛、何を見てるの?」 露台で滝を眺める蒼愛に後ろから声が掛かった。「滝のね、水の飛沫を見てたんだ。ここに居ると水の霊気を感じて、気持ちがいいんだ」 紅優が隣に並んで、蒼愛の顔を覗き込んだ。「体調は、大丈夫? 辛くない?」 紅優が熱を確認するように額に触れる。 淤加美の加護を貰うと意識を失いそうになるほど体が熱くなるので、心配しているようだ。「大丈夫だよ。段々、慣れてきたみたいで、熱くなるのも減ってきた」 初日に一回、その後は一日二回の加護を、もう二日受けている。 口付けで流し込まれるのだが、淤加美が蒼愛に加護を授ける度に、紅優が苦い顔で見詰めている。 蒼愛としては居た堪れない。 加護を与えられたあとは、淤加美に隠れてこっそり口直しのキスをされている。 その時の紅優の表情がまた、何とも言えない顔をしていて、申し訳ない気持ちになる。「蒼愛、紅優。ここにいたんだね」 また後ろから声が掛かった。 淤加美が、いつもの穏やかな顔で歩み寄った。「今日はこれから月詠見と日美子が来るから、蔵から地図を取ってきてくれないかな。蒼愛に社の場所や結界について、教えてやりたいんだ」「わかりました。蒼愛、行こうか」 蒼愛の手を握って歩き出そうとした紅優を、淤加美が引き留めた。「蒼愛には話したいことがあるから、紅優が取ってきてくれるかな」 淤加美が蒼愛の空いている手を握った。「話なら俺も一緒に聞きますので、まずは二人で地図を取ってまいります」 歩き出そうと
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43.甘い誘惑②

 目を上げると、月詠見が怒り顔で立っていた。「流石に、これ以上は見逃せないなぁ。蒼玉の霊力に煽られるのは、わかるけどねぇ。やりすぎだよ、淤加美」 腕を引いて、日美子が蒼愛の体を引き寄せる。  力の入らない蒼愛の体を抱きとめた。  殴られた淤加美が頭を抱えて蹲る。  何度も頭を振って、呼吸を整えていた。「ぅ……、はぁ……。助かったよ、月詠見。我を忘れて、止まれなかった。危うく、可愛い蒼愛を傷付けてしまうところだった」 額を抑える淤加美の顔が上気して、まだ熱に浮かされた目をしている。  そんな淤加美の姿に、月詠見と日美子が驚いた顔をした。「淤加美ですら、我を忘れるのかい? 同属性の宝石の霊力に中てられたってだけじゃ、なさそうだね」 抱きかかえた腕の中の蒼愛を、日美子が見下ろす。  月詠見も、蒼愛を覗き込んだ。月詠見が顔をしかめた。「確かに、この状態の蒼愛は、まずいね。霊力が甘く薫って、かなり美味そうだ。俺でも手を出したくなるよ。蒼愛は色彩の宝石だから、神様なら全員、欲情を煽られて蒼愛の霊力を喰いたくなるかもね」 蒼愛を抱える日美子の顔も、蒼愛に食いつきたいのを抑えているように見える。  蒼愛自身も、淤加美の神力で体が熱い。  いつもなら感じないような疼きが体中を走って、我慢するのが辛い。「紅優、は……? 紅優に、抱かれたい。触れたい。キスしたい。紅優……、助けて……はぁ……んっ」 涙目で縋り付いて、日美子に訴える。「蒼愛自身も煽られているね。淤加美、何かしたのかい?」 「いつも通り、加護を与えながら神力を流しただけだよ。あとは少し、蒼愛の霊力を……」 日美子に叱られて、淤加美が申し訳ない声で弁明している。  遠くで何かが落ちる音がした。  バタバタと駆け寄る足音が聞こえる。「蒼愛!」 紅優の声が聞こえて、蒼愛は必死に手を伸ばした。「紅優、紅優……!」 涙で歪んだ視界に、紅優の影が映った。  知っている匂い
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44.閨の睦言

 腹の中に紅優がいる。 大きな紅優の男根はいつもより熱くて、奥の壁にあたって快感を刺激する。 さらにその奥に熱い先がハマると、腹の中でグポグポと音がして、もっと強い快感が頭の先に突き抜けた。「ぁあ! こうゆ、ぅ……、もっと、欲し……、もっとぉ!」 視界が涙で歪んで良く見えない。 ぼんやりと映る赤い目が蕩けて潤んで、蒼愛を見下ろしているのだけは、わかった。「蒼愛、いつもより、可愛い……。中、トロトロに絡み付いて、そんなに俺が、欲しいの?」 聞こえる声が艶を増して、甘い。 紅優も感じているのだと思った。「欲しぃ……、紅優が、ぃぃ。紅優じゃなきゃ、やだぁ……、ぁっ、また、でちゃぅぅ」 紅優が少し腰を押し付けただけで、蒼愛の陰茎から精液が流れ出る。 白濁を指で掬って、紅優が舐め挙げた。「あぁ、甘い。こんなに美味しい蒼愛は初めてだ。加護を得る度、蒼愛はどんどん美味しくなるね」 紅優が蒼愛の唇を塞ぐ。 霊力を吸い上げて、飲み込んだ。 いつもなら一度で離れる唇が今日は吸い付いて、喉を鳴らして蒼愛の霊力を飲み込む。(喰われるたびに、気持ちぃ……。お腹の奥が疼いて、紅優がいっぱい流れ込んできて、ぁっ、またっ) 紅優の強い妖力を喰らって、蒼愛はまた射精した。「蒼愛、蒼愛……、愛してる。俺だけの蒼愛」 譫言のように零しながら、紅優が何度も腰を振る。 奥を突いた紅優の男根の先が更に奥にハマって熱い白濁を流し込んだ。「ぁ……、紅優、溶けちゃう。もっと、僕を食べて、ひとつに、なって……、僕の、紅優」 腕を伸ばして大好きな紅優の首に絡める。 口付けて、蒼愛は自分から霊力を差し出した。〇●〇
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45.魅了の使い道

 閨を出て広間に戻ると、淤加美が月詠見と日美子と話をしていた。「落ち着いたのかい? 良かったね」 紅優と蒼愛の姿を見付けた日美子が安堵した顔をした。 蒼愛は皆の前で、ぺこりと頭を下げた。「僕のせいでご迷惑をおかけして、すみません」「蒼愛には魅了の質があるようで、いつもなら自分の術は把握できているのですが、魅了に限っては本人も発動のきっかけがわからないようなんです。制御も難しいようで、魅了中の記憶も曖昧なようです」 蒼愛に並んだ紅優が説明をしてくれた。「何となくは覚えているんですけど、よく、わからなくなっちゃって」 淤加美が蒼愛の前に屈んだ。「私こそ、すまなかったね。抗えず、酷い真似をしてしまった。紅優も、すまなかった」「いえ……、あくまで術のせいですから」 淤加美に謝られて、紅優が首を振った。「仕方がないよ、紅優。あれは俺でも抗えない。あの場に居たら、きっと淤加美と同じ真似をした。けど、淤加美はちゃんと殴っておいたから安心していいよ」 べっと舌を出して、月詠見が笑った。「うん、殴られた。お陰で我に返ったよ」 淤加美が申し訳なさそうに眉を下げた。 紅優が信じられないモノを見る目で月詠見を凝視していた。「もう蒼愛を傷付けないよう十全に注意するよ。だから、また私と仲良くしてくれるかな」「淤加美様に大変な失礼をしたのは、僕の方です。また仲良くしてもらえたら、僕も嬉しいです」 蒼愛は俯きながら答えた。「僕の方が、淤加美様に酷いこと、してなければいいんですけど。ちゃんと覚えてなくて、ごめんなさい」「されていないよ。ずっと紅優の名前を呼んでいただけだよ。それは流石に、ちょっとショックだったかな」 顔に火が付いたように熱くなった。 紅優も、いつになく赤くなっている。「魅了の術に蒼愛自身も飲まれているように見えたけど、蒼愛は紅優しか呼んでなかったね」 日美子が、クスクス笑っている。
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46.クリスマスケーキ①

「魅了の話はこれくらいにして、おやつでも食べようじゃないか。蒼愛、こっちにおいで」 日美子が蒼愛の手を引いて、広間の奥に移動した。 卓の上には、大きなホールのケーキがおいてあった。「ぅわぁ、綺麗……」 デコレーションされたケーキの装飾がとても綺麗で作り物のようだ。 ケーキの上にはチョコレートの家やゼリーで作られた人形が飾り付けてある。 どれだけ見ていても飽きないと思った。「現世に行ったら、たくさんケーキが売ってたから買ってきたんだ。蒼愛は、お菓子が好きだろ」 日美子を見上げて何度も頷いた。「理研に置いてあった絵本で見たこと、あります。本物がこんなに大きいなんて、初めて知りました」 あまりの感動にワクワクが隠しきれない。 紅優も楽しそうにケーキを覗き込んだ。「へぇ、現世はクリスマスの季節なんだね。もう冬か」「クリスマス……、冬……」 蒼愛は軽く混乱した。 自分が幽世に売られてから、まだ二ヶ月も経過していないはずだ。「僕が紅優の所に売られたのって、夏くらいだった気がするんだけど」 確か、八月に入ったばかりの頃だったと記憶している。 理研の壊れかけのクーラーの効きが悪くて、酷く暑かったのを覚えている。 あの時は、売られた先の方が快適かもしれないとか、自分に言い聞かせていた。「ん? ああ、現世と幽世って、時間の流れが違うんだよ。幽世の方がゆっくりなの。だから、こっちに住んでると現世の時の流れが、やけに速く感じるんだよね」 急に怖くなって、紅優に飛びついた。「僕は……、現世と幽世、どっちの時間の流れで成長するの?」 見上げた紅優の顔が、きょとんとしている。「成長は、しないんじゃないかな」 紅優の言葉に、ショックが隠せない。「じゃぁ、僕はこれ以上、身長伸びないの? 大人にならないの?」
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47.クリスマスケーキ②

「止めないのかい?」 後ろで小さく聞いた日美子に、紅優が息を吐いた。「蒼愛が嬉しそうなので。こんな風に大勢でクリスマスケーキを食べるなんて、蒼愛は経験がないでしょうから。淤加美様も思った以上に子供っぽい仕草をしているので、見逃します」 紅優が堂々と言ってのけて、日美子が笑った。「蒼愛はもう少し、子供でいた方がいいね。子供じゃないと出来ない経験を、もっとたくさんした方がいい」「じゃぁ、これも子供の特権だ。現世ではクリスマスにプレゼントとか、あげるんだよね」 月詠見が大きな包みを蒼愛に手渡した。「え……、これ、僕に?」 両手に収まりきらない程の大きな包みを受け取って、蒼愛は呆然とした。「俺と日美子からのプレゼント、紅優と番になったお祝いだよ」 蒼愛の胸に、じわじわと感動がせり上がった。 膨らんだ感情が堰を切って、目から溢れ出る。 「僕だけのモノ。紅優以外にもらったの、初めてです。万華鏡を貰った時くらい、嬉しい」 紅優に万華鏡を貰って以来、一体どれだけ嬉しい贈り物をもらってきただろう。 こんな風に誰かに何かを贈られて、嬉しい気持ちになれる日が来るなんて、思わなかった。 自分のために贈り物を準備してくれる相手がいるのが、こんなに幸せだなんて、知らなかった。「月詠見様、日美子様、ありがとうございます」 涙を拭いながら、蒼愛は貰ったプレゼントを抱きしめた。「月詠見も日美子も狡いな。私も蒼愛に何かあげたい。蒼愛、何か欲しいものはないのかな?」 淤加美に問われて、蒼愛は考え込んだ。「今、嬉しくて胸がいっぱいで。淤加美様にはたくさん加護を頂いたので」「加護なら、いつでもあげるよ。そういうのではなくて、他にないのかい?」 蒼愛は紅優を見上げた。「欲しいものじゃないけど、お願いなら」「お願い? 勿論、いいよ。言ってごらん」 淤加美がワクワクした様子で蒼愛に顔を近づける。
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48.創世の惟神クイナ①

 ケーキを食べてひとしきり楽しんだあとは、地図を広げての授業になった。 瑞穂国を知らない蒼愛へ、神様たちが色々教えてくれるらしい。 淤加美が広げてくれた地図は紅優が見せてくれたものより大きく、古いように感じた。「まずは瑞穂国の地形について教えよう。この国の地図を見るのは、初めてかい?」「月詠見様と日美子様の宮に行く前に、紅優が見せてくれて、説明してくれました」 大雑把な国の全体図と、神様の宮の場所は聞いた。 明るくて広い町や城がある場所の上空に日ノ宮があったり、暗がりの上に暗ノ宮があったりと、神々の宮の下の大地には、それぞれの属性に近い自然が広がる。 淤加美の水ノ宮の下には巨大な湖と大きな滝がある。「ならば、臍の場所も聞いたかい?」 淤加美に問われて、蒼愛は地図の中央付近の小さな社を指さした。「このお社の中に臍があって、そこに紅優の左目があるって。色彩の宝石の代わりに均衡を保っていると黒曜様に聞きました」 社は国のほぼ中央、暗がりの平野寄りに建っている。 臍と言っても真ん中じゃないんだなと思った。「瑞穂国の全体図はちゃんと理解できていそうだね。じゃぁ、均衡を守る役割が、具体的にどういうものかは、聞いている?」 首を傾げる蒼愛に、淤加美の目が紅優に向いた。「本当に話していなかったんだね」「すみません。話すタイミングがなくて」 言われてみれば、霊元が開いてから紅優と番になったり色彩の宝石の話があったりと盛りだくさんで、紅優の役割まで話が至らなかった。「僕が知らないことばかりで、他の話を説明してもらっていたから、聞けませんできた。ごめんなさい」 ぺこりと頭を下げる。 上がった頭を淤加美に撫でられた。「蒼愛にとっては初めての経験ばかりだ。現世とは勝手も違うだろう。知らねばならない事柄ばかりだから、仕方がないね」 蒼愛の場合、理研で過ごした生活が現世の総てだ。 きっと普通の現世とは違うのだろうと思う。 初めて知るという意味では、幽世
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49.創世の惟神クイナ②

「話を続けるよ。色彩の宝石はね、実のところ、総ての力を把握できていないんだ」 蒼愛は首を傾げた。「何せ、瑞穂国ができてすぐに盗まれちまってるからね。均衡を維持する以外にも、備わっている力があるんだろうが、わかってはいないのさ」 日美子は前にも、そんな風に教えてくれた。 「最初の色彩の宝石を作ったのは、誰なんですか?」 そういえばと、ふと疑問に思った。 存在した以上、誰かが作っているはずだ。「この幽世を作った現世の人間だよ。勿論、只の人間ではなくてね。神と強く結ばれた神のような力を持った人間、そういう人間を:惟神(かんながら)と呼ぶんだ。名はクイナといった。クイナは死んでしまったけれど、今の現世にも同じ神を内包する惟神の人間はいるんだよ」「惟神……」 淤加美の言葉を繰り返す。不思議な響きの言葉だと思った。 神様を背負う、神様のような人間。 そんな存在が現世にいるのが不思議だった。(理研で何度か妖怪は見たけど。神様に会ったのは、瑞穂国に来てからが初めてだ。現世にも、そういう存在がいたんだ。だからあの所長は、強い術者を作ろうなんて、本気で考えたのかな) 理研に居た頃、所長の安倍千晴がやろうとしていた実験を、蒼愛は馬鹿らしく感じていた。 それはもしかしたら、蒼愛が強い術者や神様を知らなかったからなのかもしれない。 そういう存在が実現すると知っていたから、安倍千晴は自分の手で、強い術者を作ろうと考えたのかもしれない。(今でも、違う意味で馬鹿らしいと思うし、腹が立つけど。今なら荒唐無稽な夢物語だとは思わない) 身勝手な理由で命を作り出し、殺し、捨てる。千晴の行為には今でも怒りが込み上げる。 ただ、憧れる気持ちは、理解できる気がした。(今の僕は、強くなりたいって思ってる。守る力が欲しいと思う。力を欲するって、こういう気持ちなんだ) 強い力が欲しいと願う気持ちは、危ういし怖いと少しだけ思った。「その、今でも現世にいる惟神の人間には、色彩の
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50.創世の惟神クイナ③

「妖怪もね、瑞穂国から出るのは自由だよ。現世側から入るには許可が必要だから、出る前に黒曜に通行手形を申請するんだ。:幽世(こちら)側から行く分にはそれ以外の縛りはないよ。現世側から入るのは、難しいけどね」 紅優の説明に、蒼愛は首を捻った。 現世側から瑞穂国に入っても、人間にメリットはない。 瘴気に中てられて死ぬか、妖怪に喰われて死ぬ。「現世から瑞穂国に移り住みたい妖怪がいたら、どうするの?」「その手のコンタクトを取る窓口が黒曜なんだよ。瑞穂国に入る妖怪や人間を調節している。それもまた、均衡を守るために必要な役割だね」 淤加美の話を聞いて、ニコの話を思い出した。 女は子を孕むから、人間の女は勝手に喰ってはいけないが、自由にもしない、と話していた。「前に、ニコに聞いたんだ。人間の女は幽閉されるって。現世に、戻すの?」 蒼愛の問いを聞いた紅優が返事を戸惑った。「人間は繁殖力が強いからねぇ。瑞穂国に人間の女を放ったら、一気に増えて第二の現世になる。それじゃぁ、瑞穂国が在る意味がない。だから、瑞穂国では人間を繁殖させるのは禁止なんだ。現世に戻す場合もあるけど、食料にする場合が多いかな。人間の女を主食にする妖怪も多いからね」 きっと月詠見は、皆が話しずらい説明をしてくれた。 この国では、それが普通で、珍しい話でもないんだろう。 人間の価値は食料か奴隷か番だと、前に紅優も話してくれた。「中央で管理して、孕ませない条件付きで卸すんだ。個人で現世から買うのも禁止されてる。黒曜の所に売られてきたり、間違って迷い込んできちゃった程度しかないから、数は少ないよ」 紅優は蒼愛に気を遣ってくれているんだろう。 確かに怖い話だと思う。 しかし蒼愛は、来てすぐに紅優におねだりした牛肉を思い出していた。(人間だけが喰われないのって、自然なのかな。喰われたくないけど、それはどんな生き物だって同じはずだ。クイナは、どんな風に考えたのかな) クイナがどんな思いでこの国を作り、色彩の宝石を作ったのか。 それが知れれば、色彩
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