朝ご飯は、星が仁志と一緒に食べたが、昼ご飯は彼女が病院を離れていて食べられなかったので、代わりに雅人が付き添って食べた。しかし、仁志は昼食に手をつけなかった。雅人は昼食を買ってきてくれただけでも十分で、それに加え「ちゃんと食べろ」とまで言わせるのは、星も少し酷だと感じた。「……仁志」星は少し迷ってから、切り出した。「これから数ヶ月、私……かなり忙しくなりそうで。病院に来られる時間が、今みたいには取れなくなると思う。私がいない間、雅人に少し付き添ってもらうのは……どう?」一拍置いて、言い添える。「もちろん、雅人のお給料は、私が三倍払うよ」仁志は、わずかに眉を上げた。口元に弧が浮かぶ。笑っているはずなのに、どこか冷たい。「……影斗さんからの依頼ですか」その鋭さに胸がひやりとしたが、星は正直に答えた。「そう。榊家のおばあちゃんがもう長くないみたいなの。でも、ずっと影斗の結婚を気にかけているらしい。少し前から、怜と一緒にお見合いを続けていたけど、なかなか良いご縁がなかったみたいで……」言葉を選びつつ、続ける。「影斗は、妥協で誰かと一緒になるつもりはないって言っていた。それで……私に、婚約者のふりをしてほしいと頼んできたの」仁志の視線が、星の手首へ落ちた。瑞々しい翠色の翡翠の腕輪が、夕方の光を受けて淡く揺れる。「……引き受けたんですね」「うん……。影斗には、これまで本当にたくさん助けてもらったのに、私はまだ何ひとつお返しできていないから」仁志は星を見つめたまま、静かに言う。「じゃあ……彼が結婚を要求してきた場合、引き受けるんですか?」星は首を横に振った。「それは、ないわ」声も表情も迷いがない。それは、心の底からの信頼そのものだった。仁志も分かっていた。この質問が余計だったことも。影斗が頼めば、星が断らないことなんて――最初から分かっている。そして、自分が彼女に惹かれた理由も、まさにそこにあった。情に厚く、義を重んじる、その在り方に。人はときに、答えが見えているのに、それでも確かめたくなる。まるで自分を傷つけるみたいに。仁志はもう一度、問いを重ねた。「……仮に、彼が必要とする結婚相手が、あなただったら、どうですか?」星の瞳が、わずかに揺れた。ほんの一瞬、躊躇が頭をよぎ
Read more