仁志は、頭の回る相手と話すのが好きだ。いちいち全部説明しなくても通じる瞬間がある。ふと、清子のことを思い出した。あの時、彼が「票とデータを回す」と言っただけで、清子は舞い上がった。自分のために動いてくれるのだと、都合よく信じ込んだ。だが実際は――彼女が落ちる穴を、掘っていたに過ぎない。同じ頃、仁志は星にも、票を回すことを勧めたことがある。だが星は、考える間もなく拒んだ。彼女には、善悪を見分ける軸がある。その時、はっきり分かった。仁志が言う。「彩香さんが僕たちに流した情報は、たぶん健人の手から出ています。数日前、怜央さんが庄園で彩香さんを大々的に探したと聞きました。それでも見つからなかった。健人さんが匿っていなければ、あそこまで隠れ切れないはずです」怜央が急に権力を奪わなければ、健人は次の家主候補だった。家主候補になれる男が、切り札を持っていないわけがない。星の表情が少しだけ複雑になる。「彩香……自分がバレかけてるって、まだ気づいてないかもしれない。今、健人のそばにいて……本当に大丈夫なの?」仁志は淡々と答えた。「健人さんが彩香さんを守った時点で、僕たちに意思表示しています。協力したいと。彩香さんは情報の受け渡し役として最適です。健人さんという後ろ盾があれば、怜央さんを崩すのは楽になります。当面は同盟で良いと思います」星が、ふと問いを投げる。「もし今回の計画が失敗してたら……健人は協力しなかった?それに、彩香も危なくなってた?」仁志は、星の整った横顔を見つめる。否定はできなかった。事実だからだ。「はい。そうです。健人さんは、この情報を渡して、あなたが掴めるか見ています。同時に、あなたの能力も測っている。協力する価値があるかどうか。一歩でも間違えれば、彩香さんは駒になります。司馬家に紛れ込んだ不審者として怜央さんに捕まる」本当なら、安心させる言葉も言えた。「大丈夫です」と言ってしまえばいい。どうせ流れは、望む方向へ進んでいる。仮に星の計画が失敗しても、後始末くらい彼ができる。だが――残酷さを見せなければ、彼女は温室の花のままだ。本当の意味では育たない。自分たちのような人間は、死体の山から這い上がってきた。役に立つ者だけ覚える。敗者など、見向きもしない。幸い、星の計画は成功した。彼の後手を使う必要
더 보기