星は、身近な人には確かに優しい。ただ――仁志に対しては、少し優しすぎる。もう「友だち」の枠を越えているように見えた。星が澄玲と二言三言交わすと、澄玲は呼ばれて席を外した。今日は志村家の宴、しかも澄玲と靖の婚約発表がある。忙しいのは当然だ。しばらくして、葛西先生と朝陽が入ってくる。明日香は朝陽の腕に付き、しなやかな所作で会場へ。星は葛西先生を見つけると、すぐ迎えた。「先生、いらっしゃってたんですね」葛西先生は仁志を一瞥する。「見たところ、ずいぶん回復したようじゃな」仁志が笑って応じる。「先生のおかげです。こんなに早く復帰できたのは、先生のご配慮あってこそ」先生の隣で、朝陽の瞳に幽かな冷光が走る。だが顔には出さない。挨拶すら省く。代わりに明日香が微笑む。「星、仁志」星は礼として軽く会釈した。ところが仁志が、わざとらしく眉を上げる。「へえ。明日香さん、今日は朝陽さんと一緒なんですね。怜央さんは?この前までよく一緒にいましたけど、今日は同行じゃないんです?」露骨な揺さぶりだ。胸の奥が詰まるような苛立ちが、明日香の耳に刺さる。大勢の前で、よくもここまで。朝陽が冷ややかに笑う。「明日香が誰といるかは彼女の自由だろう。それよりお前は、自分の足元は見ずに、やけに彼女を気にするな――まさか、明日香に惚れてるのか?」仁志は肩をすくめた。「恋人の目には誰でも女神って言いますよね。朝陽さんの目には、明日香さんを一度多く見ただけで誰もが惚れて見えるんです?そんなに特別ですか。どのへんが?」首を傾げ、淡々と続ける。「腕の立つヴァイオリニスト、とは聞いてます。でも実績なら星野さんのほうが上。絵は……まあ普通ですね。レースもアマチュアの域、自分の曦光すら組めない――結局、大したことないんじゃないですか?」ここまで言われると、どれほど品のいい人でも笑っていられない。明日香の瞳が静かに冷える。葛西先生が軽く咳払いした。「若い者の話に、わしは口を挟まん。志村当主に挨拶してくる。お前らはゆっくり話しなさい」先生は振り返りもせず去った。星:「……」朝陽の視線がさらに冷たくなる。何か言い返しかけたところで、明日香がそっと腕を引いた。深く息を吸い、明日香が言う。「朝陽……もう、いい」ここで揉めれば笑い者になるのは自分たちだ。朝陽も分
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