その瞬間、会場にいる令嬢たちの多くが、羨望の眼差しで星を見つめていた。誰かが小声で囁く。「星って、ずっと外にいたのに……完全にみんなに可愛がられてるよね。雲井家に株を10%貰って、しかも元々の原株も持ってる。それで今度は星野家まで10%譲るって。この街の社交界の令嬢で、ここまでの待遇、そうそうないでしょ?」別の声が続く。「明日香って、派手で完璧そうに見えるけど、雲井家で育ったのに、ずっと雲井グループに入れてもらえてなかったよね。星が戻ってから、やっとついでみたいに雲井グループへ入った。そう考えると、雲井家って明日香にはそこまでじゃない?」「結局、明日香は駒なんじゃない?あれだけ優秀に育てて、実態は政略結婚の道具。外に差別してるって言われたくないから、仕方なく雲井グループに入れただけだと思う」「そう聞くと、明日香も可哀想かも。星が戻った瞬間、愛され枠を総取りで、明日香は星の残り物を拾うしかないんだもん」あちこちから好き勝手な囁きが飛び、ほとんどが羨望と嫉妬だった。いま、星が手にしているものは、将来の後継者である靖に比べても、見劣りしない。星野おばあ様に名を呼ばれた瞬間、星のまぶたが理由もなく跳ね上がった。突然の話に、喜びは一切湧かない。その様子に気づいた仁志が、低い声で言う。「星野さん。どういうことですか?」星は小さく答えた。「分からない。星野家から事前に何も聞いてない」仁志の黒い瞳が、深く沈む。雲井家の人間もこの件を知らない。星がその場で動かないのを見て、靖が促す。「星、何をぼんやりしてるんだ?上がっておばあ様にお礼を言ってこい」靖にとって、星野家の株など大したものではない。けれど、あの利己的な星野家が株を渡すというのは、星へ少しは本心がある――そう見えなくもない。数秒後、星は足を踏み出し、壇上へ向かう。その背に、仁志がふいに声をかける。「星野さん」星が振り返る。仁志は短く言った。「気をつけてください」星は頷いた。ほどなく、星は星野おばあ様の隣に立つ。星野おばあ様は彼女の手を取り、慈しみに満ちた笑みを浮かべる。「星、今まで苦労したね」そう言いながら、星野おばあ様は横のトレーから一通の書類を手に取る。「星、これが星野グループの株式譲渡契約書だよ。ここにサインをすれば、星野グループの株10%はあ
Read more