Semua Bab 夫も息子もあの女を選ぶんだから、離婚する!: Bab 1471 - Bab 1480

1675 Bab

第1471話

「星……まさか本当に、男ひとりのために、俺たち――一心にお前を支えてきた人間を捨てるつもりなのか?」星は言った。「どうであれ、他人の命を使って、自分の利益と引き換えにしたくありません」山下会長は怒鳴りつける。「星!お前は本当に、目が覚めないんだな!」時間がない。星はもう、山下会長と言い合う気はなかった。彼女は足早に外へ向かい、背後の声を置き去りにする。「星、必ず後悔するぞ!」この先、後悔するかどうか。星には分からない。ただ分かっているのは――今行かなければ、絶対に後悔するということだった。……星はすぐに、拉致の場所に辿り着いた。そこはひどく人里離れた場所にある別荘だった。中へ入ると、広いホールにはソファが一つ置かれているだけ。がらんとしていて、人の気配が薄い。冷えた静けさが漂っていた。その時、忠はソファに腰掛け、葉巻をくゆらせていた。星が入ってくると、彼は腕時計に目を落とす。「来るの、ずいぶん早いじゃないか」星は忠を見据えた。「仁志はどこ?」忠はもったいぶる気もない。葉巻をひと吸いすると、ソファから立ち上がり、二階のある部屋へ向かった。星も後に続く。扉を開けた瞬間、星は仁志が椅子に縛りつけられているのを見た。その背後には黒服の大男が二人、無言で立っている。拘束されているにもかかわらず、男の佇まいは相変わらず端正で気品があった。みじめさは欠片もない。拉致されたというより――招かれた客として座っているようにさえ見える。星は仁志を確かめ、目立った傷がないことに気づいて、ようやく少しだけ胸を撫で下ろした。すると、傍らから忠の声が響く。「星。お前は最近、判断をことごとく誤って、うち――雲井グループに大損害を出した。それに、この仁志は……会社の機密を漏らした人間の可能性が高い」星は淡々と遮った。「要点だけ言って」忠は鼻で笑う。「こいつは雲井グループの商業機密を漏洩させた。それなのにお前は始末もしないどころか、護衛まで付けた。星、俺から見れば、お前は完全に取り憑かれてる。徳がない者に地位は似合わない。雲井グループを管理できないなら、もう口を出すな。そもそも株だって、お前の取り分じゃないんだ」星は、憎たらしいその顔を黙って見つめるだけだった。忠は気にも留めず、少し離れた場所を指さす。「星。あれ、見え
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第1472話

忠は冷ややかな目で星を見つめ、正論めいた口調で言った。「星。俺だって母さんの子どもだ。お前が持ってる原株は、本来なら俺の取り分もある。けど、兄妹なんだから、お前がそれを独り占めしても、俺らは兄としては目をつぶってきた。ただ――お前は、男に迷わされて会社の利益まで損ねた。母さんが何年もかけて築いてきたものまで台無しにした。何だかんだ言っても、俺らは身内だ。だから一度だけ、選ぶ機会をやる。原株と仁志――どっちを取る?」いつの間にか、忠の手には鋭いナイフが握られていた。窓から差し込む陽光を受け、白い刃がきらりと冷たく光る。忠は口元をゆっくり吊り上げ、悪意を隠さない笑みを浮かべた。星は低い声で言う。「忠……何をする気?」忠は笑った。「お前に人殺しをさせるのは、さすがに酷だって分かってる。でもさ、雲井グループの商業機密を盗んだ凶犯を、数回刺すくらいならできるだろ?星。原株を選ぶなら、このナイフで――こいつを何度か刺して、誠意ってやつを見せろ」星が手を下せば、彼女と仁志の間に、もう未来はない。仮に原株を一時的に守れても、背後で支えてくれる仁志がいなければ、手元の持ち分はいずれ食い尽くされる。それどころか――星の一太刀で、仁志が彼らの味方に回る可能性だってある。そう思うと、忠の瞳に、抑えきれない高揚がにじんだ。「さあ、選べ。こいつの命か――それとも、お前が握ってる株か」ここに来る前、星は最悪の事態も想定していた。命のほうが、株より重い――それは当然だ。ただ、その時なぜか、山下会長の言葉が脳裏をよぎった。忠に従えば、彼女はまな板の上の魚になる。好きなように切り刻まれるだけだ。そうなったら、彼女も仁志も――かえってもっと危険ではないのか。忠の一手は、容赦がなく、逃げ道もない。彼女が積み上げてきた計画を、根こそぎ崩してくるほどだ。頭が単純な忠が、本当にこんな陰湿な手を思いつくのか――?星の迷いは、忠の想定内だった。忠はさらに火を注ぐ。嘲るような、ねじれた口調で仁志に言った。「俺の目が節穴だったな。利益の前じゃ、お前ってその程度なんだ。ほら。原株を手放せないなら、仁志を刺せ。忠誠心を見せろよ」そのとき――ずっと黙っていた仁志が、ふいに口を開いた。「忠さん。星野さんに、どうやって原株を渡させるつもりですか。買い取るのか、それとも…
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第1473話

「ですが忠さん。妹の持ち分を、ただで取り上げるわけにはいかないでしょう」仁志は淡々と続けた。「星野さんが保有している原株が、どれほどの価値を持ちますか。ここにいる皆さんは、分かっているはずです。しかも、その株は――複数の最先端テック企業を支配できるだけの議決権も含んでいます」仁志は、笑っているようで笑っていない目で忠を見た。「昔から言いますよね。親しい兄弟でも、勘定は明確に。星野さんがあなたの妹だからといって別扱いするならともかく、仮に彼女がただの一般株主だったとしても、あなたは一円も払わずに、雲井グループから追い出すつもりですか?」その言葉が落ちた瞬間、配信を見ていた株主たちは一斉に背筋を伸ばした。金を奪うのは、親を殺すのと同じ――そう言われるほどだ。数年前、正道もまた、表に出せない手を使って一部の株主に持ち株を売らせ、結果として一気に筆頭株主へ上り詰めた。だが、あれは「売買」だった。ただで寄越せと言われれば、相手は共倒れでも構わないと腹を括る。下手をすれば、殺されるくらいならと先に噛みつく。忠は口を開きかけた。「星は、必ずしも俺の妹じゃ――」その言葉を、彼は無理やり喉の奥へ押し戻す。ここで関係を切り、「星の身元は怪しい」と言い出せばどうなる。雲井家と直接関係のない株主たちは、こう思うはずだ――いずれ雲井家が自分たちの持ち株を買い取るときも、同じようにただで奪われるのではないか、と。そんな疑念が広がれば、たとえ今日、星の原株を手に入れても、名分が立たない。地位が上がるどころか、ますます足元が揺らぐ。得だけ狙って、対価を払う気のない指導者を、誰も支持しない。忠は歯ぎしりするほど仁志を憎んだ。無関係な人間の株を買うなら補償が必要。なら――実の妹の株なら、何も払わなくていいのか?そんなことを口にした瞬間、雲井家の評判は地に落ちる。会社そのものが、内側から分裂しかねない。こいつ……本当に厄介だ。ここまで来ても、まだ星を守る言葉を重ねてくる。忠はどうにか冷静さを保ち、歯の隙間から絞り出すように言った。「仁志。調子に乗るな。星はまだ、株を譲るって決めてないだろ」だが言い終える前に、星の声が割って入った。「兄さん……分かった。答えるよ。私、承諾する」その「兄さん」という呼び方は、忠の耳にはどこか皮肉に聞こえた。忠の視線
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第1474話

忠は少し迷った。そうだ、わずか10%の持ち株で星の10%の原株を手に入れることができる。損はしない、むしろ大儲けだ。――なのに。星に散々やり込められてきたせいか、胸の奥に微妙な引っかかりが残る。忠は警戒するように仁志を見た。「お前の言葉だけじゃ信用できない。星本人が承諾しないと意味がない」言い終える前に、星が答えた。「いいよ」忠は星の表情をじっと観察した。妙な色は見えない――だが、忠は簡単には騙される気にはなれなかった。「今のは、株主全員の前でお前が自分で言ったんだからな。俺は脅してない。あとで『脅されたから無効』とか言って、話をひっくり返すなよ」星はうなずく。「分かってる」それでも忠は念を押す。「なら、みんなの前で言え。自分の意思で株を譲渡して、俺に売るって。証人は山ほどいる。異論ないな?」彼は買う。取引の記録も残る。これだけの見届けがあれば、星が後から逃げることはできない。このときばかりは、忠も仁志の一言に感謝した。でなければ、星の狡猾さなら、土壇場で反故にしかねない。だが取引履歴が残り、視聴者も大勢いる。今さら覆すのは難しい。星は静かにうなずいた。「異論ない」忠は少し考え、配信の向こうの面々に向けて言った。「みんな、見てただろ?今日の件は全部、星の自発的な意思だ。俺は脅してない。二択で、星は株を選ぶこともできた。だが選ばなかった。自分で捨てたんだ。誰のせいにもできない」ほどなくして、星は忠に言われるまま、「自分の意思で忠に株を売却し、譲渡する」そういった内容を、皆の前で口にした。その後、忠は電話をかけ、契約書を持って来させた。書類は三通。一つは原株の譲渡契約書。一つは普通株の譲渡契約書。そして最後が、二人の株式売買契約書。弁護士、そして雲井グループの全株主の立ち会いのもと、二人は三通すべてに署名した。星が全書類にサインするのを見届け、忠の胸のつかえがようやく下りる。同時に、底知れない歓喜が湧き上がった。普通株?そんなものはどうでもいい。原株さえ手に入れば、雲井グループの大株主になれる。それだけじゃない。あの複数の最先端テック企業の意思決定権まで握れる。外に出て、好きに伸ばせる。事業も作れる。そのとき手にしている会社は、雲井グループにだって劣らないはずだ。後継者じゃない?だから何だ。家業を継
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第1475話

忠は手をひらひら振った。「順調だなんて思わないね。朝陽が先に土台を作ってくれて、あいつがあれだけ金を突っ込んだからこそだろ。そうじゃなきゃ、計画がこんなにうまくいくわけない」翔は表情を引き締める。「それはそうだけど……それでも、そんな単純じゃない気がする。忠、少し気をつけたほうがいい」翔が言い終える前に、忠が遮った。忠は警戒心むき出しで翔を見た。「翔。まさか……俺の原株を、分け前よこせって言う気じゃないだろうな?」翔は一瞬、言葉に詰まる。「……お前の?」忠は当然だと言わんばかりに言い返した。「俺のに決まってるだろ。違うって言うのか?最初から最後まで、俺は金も出したし、手も動かした。株主を扇動して、星の憎しみを全部引き受けて、仁志の拉致までやった。最後は俺の10%の持ち分を出して、星の原株と取引したんだ。お前と明日香は、俺の背中で口を動かしただけで、何か払ったか?」唇の端に冷たい弧を描く。「汚れ役は全部俺。代償も全部俺。それで最後にみんなで山分けとか、さすがに不公平だろ?」忠は衝動的な性格だが、頭が空っぽではない。自分が雲井家の銃にされていることくらい、分かっている。それでも構わない。身内なら、損も得も分かち合うものだ。だが、悪役だけ押し付けられて、果実だけ皆で摘む――それは別だ。過去のことはまだいい。だが原株だけは、絶対に譲れない。忠は言い切った。「俺の会社は星に底値で買われた。今度は普通株まで星に渡した。だから原株は、俺の命綱なんだ。そこに手を出すなら、誰だろうと容赦しない。この件でお前らも動いたのは分かってる。その代わり、あのテック企業との提携は、今後多めに分けてやる。身内なんだ。金のことで俺に噛みついたりしないよな?」翔も明日香も黙ったままだった。忠は立ち上がる。「父さんと兄さんにバレたら、また白々しく説教されるんだろ。あいつらの小言、うんざりなんだよ。それに会社の取締役たちも、きっと俺を糾弾してくる」苛立ったふりで眉間を揉む。だが上がった口角が、内心の得意を隠しきれていない。「じゃ、用がないなら俺は帰る」忠が去ったあと、明日香と翔は、しばらく無言で向かい合っていた。やがて翔がぽつりと言う。「明日香。星があんなにあっさり株を手放したのって……最初からこの展開を狙ってたんじゃないか?俺らを分裂させるため
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第1476話

翔が言った。「もしかすると、仁志が星のそばにいる目的は――原株なのかもしれない。今まであれほど星を助けたのも、信頼を勝ち取るため。そして、肝心な場面で、星に自分を選ばせるためだった、とか」明日香は眉をわずかに動かす。翔は続けた。「よく考えてみろ。仁志は確かにいろいろ手を貸した。でも、あいつが差し出したものなんて、星の原株に比べたら……大したことないだろ?」明日香は唇を結んだ。確かに。たとえ仁志が星に兆円を渡したとしても、星が持つ10%の原株の前では――その1兆円ですら、霞んで見える。明日香は言う。「原株のために星を助けていた……それなら筋は通る。でも最後に原株を手に入れたのは、忠兄さんだよ。まさか……忠兄さんの原株を奪いに行くつもりか?忠兄さんがどれだけ短気でも、あれが最後の切り札だってことくらい分かってる。誰かが原株に手を出したら、本気で命を懸けてくるはず」すると、翔が、ふっと笑った。「もし狙いが星じゃなくて……お前だったら?」明日香が目を瞬く。「……私?」翔は言った。「たぶん、あいつはお前の目に留まりたいんだ。将来、お前を娶るつもりで。仁志が星を利用して原株を外に出させた。その原株が誰の手に渡ろうと、結局は雲井家の中だ。父さんにとっては同じなんだよ。父さんなら、忠から原株を買い戻す手段なんていくらでもある。でもこの一件で、父さんは仁志を見直す。頭が切れる、腕があるって。そうなれば、仁志がうちに縁談を持ち込んでも、父さんは必ず検討する」明日香の瞳が揺れる。「でも……あの人、私にはいつも冷たいんだ」翔は肩をすくめた。「世の中には、相手をわざといじめて、注意を引く男がいる。見たことあるだろ?仁志は、まさにそのタイプに見える。だって、お前と仁志は何の因縁もないのに、あいつは妙にお前にだけ厳しい。説明がつく」明日香は数秒黙ってから言った。「でも……どうして原株を忠兄さんに渡した?忠兄さんは……」言いかけて、明日香は口をつぐんだ。翔は淡々と答える。「仕方ない。拉致の汚れ役は忠にしかできない。俺らには無理だ。仁志からすれば、誰に渡っても同じだと思ったんだろ。星の手から原株を引きずり出せるチャンスなんて、いつでも転がってるわけじゃないから」明日香はなおも迷いを残した顔をする。「……本当に、そうか」翔は言った。「じゃあ逆
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第1477話

忠の別荘を出たあと、星は尋ねた。「仁志、怪我はない?病院で一度診てもらう?」仁志は短く答える。「大丈夫です。忠さんは僕に手を出していません」星は、忠がどうやって仁志を捕まえたのか聞きかけた。だが言葉は喉元で止まり、そのまま飲み込む。「無事ならよかった。雲井家の屋敷は、もう安全じゃないかもしれない。しばらく外で暮らす?」そう言うと、仁志は首を振った。「必要ありません。彼らは欲しいものを手に入れました。もう僕を狙う理由はないでしょう」仁志が譲らないので、星はそれ以上は言わなかった。彼女は最初から最後まで、持ち分を手放したことに、後悔も惜しさも一切見せなかった。まるで渡したのが株ではなく、ミルクティー一杯だったかのように。仁志は横目で、白く整った彼女の横顔を見つめる。そしてふいに言った。「来る前に、何か手を打っていたはずです。どうして人を突入させなかったんですか?」星はハンドルを握ったまま、前方から視線を逸らさない。「忠が配信を選んだ時点で、たとえあなたを救い出しても、株主は私を支持しない。それに、忠は原株を取るためなら、もっと悪質な手も思いつくはず。武力での衝突は、怪我人が出やすい。忠はずっとあなたを恨んでいた。原株のためなら、あなたに危害を加える可能性もある」忠は、彼女に何かするとは限らない。だが仁志は――話が違う。沈黙が少し落ちたあと、隣から仁志の声がした。「……すみません。僕のせいで、あなたは持ち分を失いました」星は首を振る。「株がなければ、そもそもあなたは拉致されたりしていない。謝るなら、私のほうよ。私が巻き込んだ」仁志の視線が、彼女の顔に落ちる。表情は少し翳っているのに、瞳は澄んでいる――取り繕っているわけじゃない。そう一目で分かった。仁志が言う。「僕があなたの機密を盗んだ、と疑わないんですか?」星はきっぱり首を振った。「あなたじゃない」仁志は静かに重ねる。「でも、疑いが一番濃いのは僕です」星は言った。「本当に原株が欲しいなら、私の力を伸ばす必要はない。あんな回り道をしてまで、私を助ける理由がない」仁志が何か言いかけた、その瞬間。星が先に言葉を重ねた。「仁志。言ったでしょう。何が起きても、私はずっとあなたを信じる」仁志はそれ以上、何も言わなかった。ただ呼吸が、なぜか少しだけ速くなる
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第1478話

忠は話を聞いても、少しも取り乱さなかった。淡々とした声で言う。「状況を整理して説明しろ。何が起きた」秘書は震える声で報告した。「書類を持って、株の名義変更の手続きに向かっていました。そしたら……その場所で、突然火事が起きまして……火の回りがひどくて、皆、逃げるのに必死で……弁護士が二人いたんですが、互いに『相手が書類を持ってる』と思い込んで、そのまま外に出てしまい……結果……どちらも、持っていなかったんです。株式譲渡の書類は……そのまま、焼けてしまいました……」忠は冷たく笑った。「やっぱりな。星が妙に大人しいと思ったら、ここで待ってたわけか。慌てるな。公証もあるし、バックアップもある。紙が燃えた程度で、俺と星の契約は無効にならない。こんな姑息な手で逃げ切れると思ってるなら、甘い」だが秘書の声は、今にも泣き出しそうだった。「私も最初はそう思いました。なので、お二人に電子版の控えと、公証書類を取りに行っていただいたんです。ところが……その……弁護士のお二人と、急に連絡が取れなくなりました!」忠のぼんやりした表情が、一瞬で消えた。「……は?連絡が取れない?どういう意味だ」契約は弁護士立ち会いのもとで結んだ。その場で公証まで取った――はずだった。手続きも全部、弁護士が進めた。その二人が消えた?あり得ない。秘書が続ける。「はい。一人は控えを取りに行くと言って、もう一人は公証書類を取りに行くと言って、別れました。ですが先ほどから……何度かけても繋がりません。部下を向かわせて自宅を確認させたところ、すでに――もぬけの殻でした」忠は、しばらく言葉を失った。あの弁護士二人は、忠の身内だ。雲井グループに入ってからずっと彼のそばで働き、一度もミスをしなかった。忠は信用していた。それなのに――忠は鈍くても、今は理解した。弁護士が……買収されたのだ。顔の筋肉が引きつり、歪む。書類が燃えたこと自体は致命傷ではない。本当に恐ろしいのは――身内に裏切られたことだ。忠は受話器を握りしめ、指の関節が白くなる。「星は譲渡は自発的だって動画を撮っただろ。あれがあれば売却の証明になる」秘書の声が、完全に震え切っていた。「その動画も……弁護士のお二人が持っています。公証に必要だと言っていたので、預けました……」忠は
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第1479話

忠は星を指さし、声を荒らげた。「この厚顔無恥な女!俺の弁護士を買収して書類を燃やして、俺の株を騙し取ったのはお前だろ!」星は静かに茶を一口飲み、淡々と言い返す。「何を言ってるの?株はあなた自身の意思で私に譲渡したはずよ。それのどこが騙したになるの?」忠は一瞬、言葉に詰まった。「自分の意思だと?お前の持つ10%の原株と交換したんだ!」星はどこ吹く風で、肩をすくめる。「あなたがそう思うなら、そういうことにしておけば?」忠の目が怒りで見開かれる。「まさか約束を反故にする気じゃないだろうな?原株を渡さないつもりか!」そのとき、仁志が口を開いた。低く、無駄のない声だった。「忠さん。被害妄想では?あなたの手元にあるのは普通株です。星野さんの手元にあるのは原株です。普通株10%で、原株10%と等価交換――そんな不利な取引に応じる者はいません。愚か者でも分かる話です」その瞬間、忠は悟った。星は最初から、自分の株を奪うつもりだったのだ。彼は冷笑を浮かべ、二人を睨みつける。「俺の弁護士を買収して契約書を焼いたからって、証拠が消えたと思うな。あのときは全株主の立ち会いのもとで署名した。書面がなくても、署名した時点で契約は成立してる。証人がいる!」仁志は、相変わらず落ち着いた口調のまま言った。「では、その証人をお呼びください」忠は二人を睨みつけた。「覚えていろ……!」――一時間後。多数の株主が再び一堂に会した。今回は翔と明日香だけでなく、正道と靖までが星のオフィスに姿を見せた。株主たちは小声で今回の件を囁き合っている。幸い、星のオフィスは広い。これだけ人数がいても窮屈さはなかった。靖は、忠から経緯を聞き終えると、こめかみがぴくりと跳ねた。忠が10%の株を失った――話だけ聞けば荒唐無稽で、子どもの喧嘩みたいだ。しかし、だからこそ分かる。仁志の先見性と、その手腕の恐ろしさが。弁護士をその場で買収した、という話ではない。すべては事前に、周到に仕組まれていたのだ。三通の契約書を用意させたことにも、はっきりした意味がある。なぜ一通ではなく、三通に分けたのか。普通株と原株の売買契約なら、本来は一通で十分だ。だがそれでは、星は空手形で利益を取れない。契約を分けることで、彼女は利益を最大
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第1480話

忠は半ばパニックになりながら、星がどれほど狡猾で、どれほど恥知らずにすべてを仕組んだかをまくし立てた。そして最後に言い放つ。「当日のライブ配信、みんな見ただろう。あの場にいた全員が証人だ!星は株式譲渡に同意した。だから、たとえ契約書が焼けても、俺と星の間で結ばれた契約は法的効力を持つ!」すると、宗一郎が静かに口を開いた。「忠。確かに我々は配信を見たし、お二人が署名する場面も確認した。だが、契約の具体的な条項までは見てない。口約束だけでは、法的拘束力は認められにくい。結局、すべては書面契約が優先されるべきでしょう」夜派の株主たちも、しれっとした顔で次々に同調する。中立派もどちらにも寄らない曖昧な言い回しで、場を丸めにかかった。長年ビジネスの海を泳いできた連中ばかりだ。誰もがすぐに嗅ぎ取っていた――これは最初から仕組まれた罠かもしれない、と。忠を落とすための局。いま星の手元には原株が残り、さらに忠の普通株まで入っている。明らかに失脚したのは忠のほうだった。この状況で、敗軍の将に肩入れする者がいるだろうか。周囲の態度を見て、忠は愕然とする。「お前ら……偽証する気か?!」もっとも、まだ彼を支持する株主も少なくはない。だが双方が理屈をぶつけ合えば、結局は水掛け論になる。裁判になったとしても、自社の株主同士で証言が割れれば、判断は簡単ではない。山下会長も口を挟んだ。「忠。お前と星が交わした契約の中身は、我々は確認していない。聞いたのは口頭でのやり取りだけ。事実を述べているまでだ。当日の配信、どなたか保存していないか?もう一度確認してみてはどうでしょう」別の夜派の株主が続ける。「その映像を裁判に出したとしても、契約は無効と判断される可能性が高いでしょう。なにしろ――」視線が、仁志をかすめた。「忠は相手のボディーガードを拘束し、刃物で脅迫までしていた。どこへ持っていっても正当性はない。無効な行為を記録した映像が、証拠として通用するか?」忠は怒りで全身を震わせ、言い返そうとした。だが隣の翔に腕を押さえられた。翔が言う。「もし忠と星の契約が無効なら、忠が星に譲渡した普通株も無効になる」仁志は小さく笑った。声音は冷静で、言葉は簡潔だった。「映像内の合意が無効だとしても、映像外で忠さんが自筆署名
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