雅臣はそれ以上何も言わず、その知らせだけを星に伝えると、電話を切った。火を放ったのが誰なのか――それについて、星も雅臣も口にはしなかった。そんなことができる人間は、能力の面でも動機の面でも、そう多くはない。仁志が戻ってきた時、星が起きているのを見て、その瞳に一瞬だけ光が走った。彼は彼女の前まで歩み寄る。「星、いつ起きた?」「今、ちょうど」星は彼を見上げた。「仁志、さっきどこに行ってたの?」仁志は淡々と答える。「美咲に、早めに出ていくよう伝えてきた。ここにいられると目障りだし、俺たちの邪魔になる」その態度は、とても元妻に向けるものとは思えなかった。もっとも――星が雅臣に向けていた態度は、それ以上に冷たいものだった気もする。星は言った。「明日、翔太に会いに行こうと思うの。仁志も一緒に来て」仁志はあっさり頷いた。「いいよ」……翌日。仁志は約束通り、星の指にはまっていた指輪を溶かして外させた。指輪が外れると、指にはくっきりと跡が残っていた。しばらくすれば消えるものだ。それでも今は、どうしても目についてしまう。美咲はすでに去っていた。別れの挨拶はなく、ただ一通のメッセージだけが残されていた。――何かあれば、いつでも連絡して。仁志は、その指に残る跡をじっと見つめる。その表情からは、喜怒のどちらも読み取れなかった。星が何か言おうとした時、彼は先に彼女の手を取った。「次は、もっといい指輪を作る。高温でも簡単に溶けないし、そう簡単には外れないものを」星はその手を握り返した。「……うん」指輪の件を片づけたあと、二人は翔太の見舞いに向かった。翔太は今も、星と雅臣が五年間暮らしていたあの家に住んでいる。見慣れた別荘の門の前に立った時――星は一瞬、現実感を失った。離婚を決めてから、一度もここには戻っていない。隣で、仁志もその屋敷を見上げていた。「ここが……昔、お前が住んでいた場所か?」星は我に返る。「うん、そう」「入ろう」そう言われても、彼女は少し躊躇した。翔太とは頻繁に電話している。この家の中が、自分が出ていった時のまま、何一つ変わっていないことも知っていた。あの時は、過去と完全に決別するつもりで、持ち出した荷物も少なかった。
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