雅臣の声は、かすかに掠れていた。「星……ありがとう。でも……たぶん、もう葛西先生の手を借りる必要はなさそうだ」その一言で、星はすぐに察した。「……分かった」電話を切ったあと、星と仁志は翔太を迎えに行った。翔太は、ひどく元気がなかった。星と綾子の仲がどれほど悪かったとしても、綾子は翔太にとって祖母だ。しかも、彼女は本心から翔太を可愛がっていた。そんな祖母の容体が危ういとなれば、翔太が落ち込むのも無理はない。幸い、仁志は子どもの扱いに慣れていた。ほどなくして翔太の気をうまく別のことへ向け、沈んだ気持ちも少しずつ和らいでいった。その日、星はテーブルのそばに座り、翔太と仁志が囲碁を打つのを眺めていた。すると、手元の携帯が突然鳴った。画面に表示された名前は、またしても雅臣だった。星は時間を確認する。夜の八時。その瞬間、胸が小さく跳ねた。嫌な予感がした。彼女はベランダへ出て、電話に出る。「雅臣、何かあったの?」受話器の向こうから聞こえてきたのは、しゃがれ、震えた雅臣の声だった。「……ああ。母さんが、最後に翔太に一目会いたいって」星の胸が重く沈む。最後に一目――それはつまり、綾子がもう長くないかもしれないということだった。電話を切ると、星は翔太のそばへ行き、声をかけた。「翔太、支度して。今から病院に行こう」仁志も何かを察したのだろう。立ち上がって星に言った。「俺が送る」星は断らなかった。三十分後、星は翔太を連れて病院に到着した。雅臣の表情はひどく暗く、眉間には深い疲れが刻まれていた。「星、わざわざ来てもらって悪かった」星は静かに首を振る。それから三十分ほどして、病室の中から雨音の張り裂けるような泣き声が響いた。星は振り返り、その病室を見つめる。そして、そっとため息をついた。たしかに、彼女と綾子の間には深い確執があった。けれど今、綾子が命の終わりを迎えようとしているのなら、これまでの恩怨もまた、彼女と一緒に消えていくような気がした。その時、一着の上着が星の肩にそっと掛けられる。耳元で、仁志の声が響いた。「夜は冷える。風邪を引くな」星は思わず、仁志の手を握った。さっきまで落ち着かなかった心が、不思議なくらいすっと静まっていく。その
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