影斗は、星が気まずさを感じるような話題にはもう触れなかった。代わりに、星のコンクールや音楽会の話など、穏やかなことばかりを話した。やがて昼になり、四人は近くのビュッフェレストランへ入った。影斗は終始、気が利くように動き回っていた。グラスや箸を取ってやり、水やジュースを注ぎ、まるでウェイターのように世話を焼く。その姿に、翔太は目を丸くした。星と怜が料理を取りに行っている間、影斗は笑いながら言った。「翔太くん、どうしてそんな目で見てるの?」翔太は慌てて視線をそらす。「べ、べつに......なんでもないよ」影斗はその小さな心の内を、すぐに見抜いた。「もしかして――君のパパとママとごはんを食べるとき、いつも動き回ってるのはママのほうかな?」翔太は少し考えてから、正直に頷いた。「うん、そう」「じゃあ、君のママは、一人でやるか、誰かに手伝ってもらう、どっちが嬉しいと思う?」翔太は真剣に考え、小さな声で答えた。「たぶん......手伝ってもらうほう」そんな単純なことを、五歳の子どもでもわかっている。影斗は静かに笑った。「翔太くん、気づいたかな。君のママは、パパと離婚してから、どんどん輝いてきたんだ」翔太はこくりと頷いた。「じゃあ、もし昔のママと今のママ、どちらかを選ぶとしたら――君はどっちを選ぶ?」翔太の小さな顔が、たちまち曇った。昔のママは、なんでもしてくれる優しい人だった。でも、今のママは違う。少し遠く感じるけれど、その分、どこか眩しくて、いつも新しい発見がある。彼は長いこと悩み込んでから、「......どっちも選んじゃダメ?」と小さく言った。影斗は首を振る。「ダメだよ。ひとつだけ。欲張りはなし」翔太は真剣に考え直し、ようやく答えを出した。「......今のママ」影斗は、やはりというように微笑む。人は皆、強いものに惹かれる。子どもはなおさら、純粋でまっすぐだ。翔太は少し恥ずかしそうに言った。「今のママって、なんでもできるんだ。外国の言葉も話せるし、ヴァイオリンも弾けるし、絵も描ける。前みたいにずっと僕のことばかり見てくれなくても、なんか今のママのほうが、楽しそう。だから、今のママがいい。僕、もう大きくなったから
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