謝恩会が終わり、鴨下の祖父は遥香に残るよう勧めたが、遥香は用事があると口実を作り、先に屋敷を出た。屋敷の入り口で、保が遥香を引き止めた。「運転手に送らせよう」遥香は無表情で言った。「110億」「は?」保は目をぱちくりさせ、あどけない笑みを装った。「インド象の象牙と彫刻代で、110億円。もう充分安いわよ」保は呆れながらも苦笑し、怒りを込めて返した。「おい、お前、金に困りすぎて頭がおかしくなったのか?あれはおじいさまへの贈り物だろう、なんで俺に金を要求するんだよ?」遥香は一言ずつはっきりと告げた。「あなたがいなければ、私が縁もゆかりもないあなたのおじいさまに贈り物をする必要はなかったわ。110億円で、あなたのおじいさまの信頼を買ったのよ。まさか、この取引断るの?鴨下家の他の人間なら皆、喉から手が出るほど欲しいものよね……?」遥香は小切手をよこせとばかりに手を差し出した。保は、まさか自分が女にここまでやり込められる日が来るとは思わなかった。彼は歯を食いしばりながら110億円の小切手を遥香に渡した。「ご利用ありがとうございました!またの機会には割引しますね」遥香は皮肉交じりに言った。「お姉ちゃん!」そこへ柚香が駆け寄ってきた。「おねえちゃん、ごめん。佐和子があんなことを言うとは思わなかったの。無実を証明できてよかった!……佐和子、悪気はなかったと思うの。許してあげて。佐和子の代わりに謝るわ」遥香は目を向けず、佐和子のことなど最初から気にも留めていなかった。佐和子の行いは、ハレ・アンティークに害を及ぼすどころか、上流社会の場で秦家の面目を潰しただけだった。「謝らなくていいわ」そのまま運転手の到着を待ち、車に乗り鴨下家を後にした。車窓越しに、慌てて駆けつけてきた修矢の姿が見えた。――あんなに急いで……私が柚香をいじめてるって心配してるの?あなたはいつもそうやってえこひいきするのね。「鴨下社長、今回の取引が終わったら、二度と遥香に関わらないでくれ」修矢は低く冷たい声で告げた。二人の視線が鋭く交錯した。保はポケットに手を突っ込み、やる気のない態度でニヤリと笑った。「ほう、尾田社長はどのお立場で俺に忠告してるんだ?遥香の友人として?それとも――元夫として?」その口調はますます勝ち誇った色が浮かぶ。傍ら
더 보기