鑑定士は慌てて特製の懐中電灯を手に取り、もう一度念入りに照らした。「本当に水晶製だ。前の鑑定士が間違えたのだろう」会場がどよめいた。だが、それでも信じない者が多かった。すぐに、今回のオークションの責任者が姿を見せた。場内をざっと見渡し、騒ぎの中心にいる遥香を見つけると、足早に駆け寄った。「オーナー、ご来場いただいていたのですか?」オークションの責任者蔵本憲人(くらもと けんと)は、公的に認定された代表者。商社やオークション会場でもよく顔を見せていて、ただの鑑定士よりはるかに信頼されている存在だ。彼が「オーナー」と呼んだ瞬間、場内の視線が一気に変わった。あの蔵本が、ハレ・アンティークのオーナーとこんなに親しいのか?それに、なんとなく言葉に敬意すらにじんでいた。遥香はうなずいた。「蔵本さん、私はこの瓶のために来たんです」「割れてる」蔵本は素早く見てそう言い、さらにじっくり観察したあと、目を見開いた。「本当に水晶製だ」「オーナー、さすがはお目が高いですね」人々はまだ疑惑を抱き、全く信じていない様子だった。遥香は蔵本に合図して、玉壺を持ってこさせた。そしてゆっくりと口を開いた。「この瓶は水晶製で、他の材料と違って鑑定が簡単です。本物の水晶は二重像が出て、光に当たるときれいに光ります。日光の下に置けば、一発でわかります」実際のところ、水晶の鑑定は難しくない。ただし水晶そのものの判別が難しいため、多くの人が本物と偽物を見分けられず、市場には偽物が大量に出回っている。だが、水晶の美しさは他の材料とは比べものにならない。遥香の確信に押されて、人々は黙って屋外へ向かった。案の定、瓶を日光にかざすと、鮮やかな輝きを放ち始めた。中に浮かぶ二重像に、ほのかに青みが差している。二色水晶。極めて希少な材料だった。江里子の目が輝いた。まさか遥香が適当に落札したそれが、こんな宝だったとは。この水晶は極めて貴重な材料だ。だからこそ、誰も信じたがらなかったのも無理はない。もし信じていたら、あまりの悔しさに目を潰したくなる。この奇妙な光景を見て、人々は驚きの声を上げた。「本当に水晶製だ……」「そんなはずない!きっと彼女が間違えたんだ。鑑定士でもないくせに、俺たちを誤魔化して!」「鑑定士に鑑定させろ!」我に
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