二人が話している間に、時折雨が吹き込み、遥香のスカートの裾を濡らし、その冷たさがじわりと肌に伝わってきた。遥香は手に持った傘をぎゅっと握りしめ、声を落として再び尋ねた。「傘も渡しちゃいけないんですか?」「申し訳ありません、遥香様」執事は丁寧に一礼すると、トレイを持ってその場を離れていった。遥香はしばらく屋外に立ち尽くしていたが、やがて静かに部屋へ戻った。口を開く前に、尾田のおばあさまの声が聞こえた。「遥香ちゃん、さっき執事に修矢へ傘を届けさせようとしたでしょう?」遥香の表情が一瞬だけ固まった。「おばあさまの目をごまかせませんね」「やっぱり気にしてるのね、この子ったら」尾田のおばあさまは笑みをこらえきれず、手招きした。「こっちに来て、座りなさいな」遥香がそばに座ると、おばあさまは彼女の手を握り、静かに語りかけた。「遥香ちゃん、うちのろくでなしの孫を気遣うことなんてないの。あの子は柚香を庇うばかりで、そんな男、心配する価値なんてないのよ」「女はね、恋人想いばかりして、男のことで気持ちを乱されるなんて、損するだけよ。もう、彼のことは放っておきなさい」そう言いながら、尾田のおばあさまはじっと遥香を見つめ、まるで彼女の本音を聞きたくてたまらないといった表情だった。遥香は少し驚いたものの、微笑みながらうなずいた。「そうですね、男なんて気にする価値ありません」期待した返事が聞けず、尾田のおばあさまはぽかんとした。遥香が本当にこの言葉を受け入れたとは思っていなかった。傍らの芳美はおばあさまが自業自得になったのを見て、ひっそりとつぶやいた。「おばあさま、自分で墓穴掘ってどうするんですか」効果がなかったどころか、逆に裏目に出そうだった。これを後で修矢が知ったら、間違いなく血を吐くほど怒るだろう。尾田のおばあさまは芳美を睨みつけ、言い訳がましく付け加えた。「ゴホン、そういえば、修矢があそこまで柚香をかばうのには理由があるのよ。あれは彼のお母さんのことが関係してるの」遥香は初めて裏事情を聞かされた。彼女は目を伏せた。「お母様と関係がありますか?」「ええ、あの頃の話……」そう言いかけた尾田のおばあさまだったが、ふいに口を閉じた。「でもこんな話、私がすることじゃないわね。本来なら本人から説明すべきよ。あの子
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