「何ですって?」傍らの江里子が焦れて罵った。「きっとまた柚香、あの下劣な女よ!」江里子は黙り込む遥香を見ながら言った。「遥香、今度は場所を取られちゃったわ。どうすればいいの?」遥香はのぞみと江里子を見回し、落ち着かせるように微笑んだ。「二人とも慌てないで。この場所はもともと候補の一つで、家賃が高すぎてまだ決心がつかなかったの。ちょうどいいわ、もう考えなくて済むから」「でもここが地理的に一番の好条件だったの。ここ以外に大型展示場なんて思いつかないわ」のぞみは頭を抱え、髪をかきむしった。この二日間、場所探しで足が棒になるほど走り回ったのに、それでも他人に先を越されてしまった。「私が柚香のところへ行くわ!あの恥知らず、展示場は私たちが先に目をつけていたのに、どうしてそんなに厚かましくできるの!」江里子は苛立って文句を言いに行こうとしたが、遥香に手を取られて止められた。「江里子、私たちは手付金を払ってなかったんだから、展示場を先に貸されても仕方ないわ。衝動的にならないで」遥香は少し考えてから続けた。「街中の大型展示場が合わないなら、郊外を探してみましょう」「でも郊外は街から遠すぎるわ。誰がわざわざ足を運ぶの?」江里子は眉をひそめた。「これは多分うまくいかないわ」「彫刻は芸術展よ。大衆の審美には合うけれど、すべての人が鑑賞に来るわけじゃない。彫刻を支えているのはやっぱり愛好家なの」遥香は冷静に二人へ分析した。「展覧会をきちんとやれば、本当に彫刻が好きな人は見逃さないの。それに鴨下家の後ろ盾もある。みんなは遠いなんて言わないわ」まだ口には出さなかったことがある。鴨下家の名が冠されていれば、たとえ墓地の隣に展示場を開いたとしても、大勢の人が押し寄せるだろう。だから展覧会の場所について、遥香は少しも不安を抱いていなかった。「そうよ、オーナーの言う通り!私たちの展覧会さえ気に入ってもらえれば、人が来ない心配なんてないわ!」遥香の分析を聞いて、のぞみも納得し、すぐに笑みを浮かべた。江里子もぱっと表情を明るくした。「その通り!遥香が手がけるんだから、あの柚香になんて負けるわけない!」「そんなことは絶対にない!」のぞみはこの彫刻展に大きな自信を持っていた。何より遥香がいることで、揺るぎない安心感があった。江里子にと
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