All Chapters of 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Chapter 151 - Chapter 158

158 Chapters

151.明かされた真実と裏切り

父の隣に立つ、ゼフィリア王国の国王陛下はニヤリと笑みを浮かべた。その表情は、私たちがまるで獲物であるかのように、冷たく、そして計算高かった。「いや、バギーニャ王国に『魔法を操る異国の女性』がいると聞いてな。国王陛下に見つけたら連絡して欲しいと言っておいたんだ。その見返りとして、我が国との貿易量増加と祖国の基軸通貨の価値の引き上げを伝えたんだ。この国の『女神様』は、わが国でお世話させてもらうよ。」ゼフィリア国王の言葉に、私はハッとした顔をして父である国王陛下の顔を見た。その目は怒りと失望で滲んでいる。父が話していた「真の危機」とは、隣国との国益を巡る駆け引きであり、その人質として葵が利用されていたのだ。「父上、これが父上が話していた言葉の意味なのですね。」私の声は、怒りで震えていた。「ああ。女神は国を反映させる可能性も、滅びてしまう可能性もある。そんな危険な人物をこの国に置いておくのは危険だ。私が求めるのは、国民の平和と安定した暮らしだ。」父の言葉は、冷たく理性的だった。「だからと言って、国の繁栄のために葵の身柄を引き渡すなんて……人身売買です!」「……そうかもしれないな。しかし、それで全国民の生活が豊かになるのであれば、多少の犠牲はやむを得ない。それに、私はこの女神様がお前と関係を既に持っているなんて知ら
last updateLast Updated : 2025-08-24
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152.一年の猶予、運命をかけた戦い

「ゼフィリア国王陛下……お願いがあります。私は、女神・葵を引き渡したくありません。どうか、どうか私に少し時間を頂けないでしょうか。」私は、絶望的な状況の中で、最後の望みをかけてゼフィリア国王に懇願した。「時間を与えて、一体何が出来るというのだね。」ゼフィリア国王の冷徹な声に、私の心は一瞬怯んだ。しかし、葵の震える身体を腕に感じ、私は再び決意を固めた。「はい、葵はこの国や周辺国にいる女性とは性質や考え方が大きく違います。周りの女性と同じように扱えば彼女の本来の力は発揮できません。そして、彼女と長く時間を共にした私の元でなら希望と発展を与える真の女神になるでしょう。ここにいて、国を滅ぼすような可能性などありません。」私は、そう力強く断言した。「そして、発展の折にはゼフィリア王国にも十分な恩恵がいくようにします。そのために、どんなことが出来るか知恵を絞らせてください。」「サラリオ!!」父が私に何か言おうとするのをゼフィリア国王が制した。私の言葉には、葵への深い愛と彼女の力を信じる確固たる信念が込められていた。ゼフィリア国王は、その言葉に興味を持ったのか考え込むように黙り込んだ。私は、ただ静かに、彼の次の言葉を待った。そして、しばらくしてから彼は重
last updateLast Updated : 2025-08-24
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153.運命を切り開く決意

「え?父上が、ゼフィリア国王陛下に葵を引き渡す密約していた?葵に会いたいと言ったのは引き渡すための罠だった、だって?」王宮の一室で、サラリオ様は、父である国王陛下がゼフィリア国王と交わした密約について、アゼル、ルシアン、キリアンの三人に説明した。彼らの表情は、一様に驚きと動揺で固まっていた。「ああ、そうだ。葵を引き渡したら、貿易量増加とバギーニャ王国の通貨の価値を引き上げると持ち掛けられ、国王陛下はその交渉を飲んだそうだ。」サラリオ様の言葉に、アゼルは感情を隠すことなく憤りを露わにしていた。「何やっているんだよ!!!!」ルシアンとキリアンも、尊敬する父の決断に言葉を失っていた。「まさか……父上がそんな交渉を受けるだなんて。父上は、国民のことを第一優先で考えていて尊敬していたのに。」ルシアンの言葉に、サラリオは静かに答えた。「国民のことを最優先に考えたからこそだろう。葵は、違う国からやってきた人間だ。ここで暮らしていても『国民』ではない。だからこそ、この地で生まれ育ち懸命に生きる国民のことを考えての決断だと思う。」「でも、そんなことって……。」
last updateLast Updated : 2025-09-01
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154.それぞれの役割

「兄さん、医療の学校創設は一年ではとても間に合わないよ。学校とまではいかなくとも、侍女たちが薬草の知識を身に着けるなど、身近な範囲でやって地道に広めるしかない。ここまで来たら、葵の存在を隠さず国民の支持を得るためにお茶会で貴婦人たちに葵がレクチャーするのはどうかな?」キリアンがそう告げると、サラリオは頷いていた。「そうだな。時間が気になっていた。国民を味方につけるということか……それも一手かもしれないな。やってみよう。」「あと、最終的な判断を下すのはゼフィリア国王陛下だ。ゼフィリア王国が今、何を問題として本当に求めているものや課題が分かれば、葵とは関係なく友好関係を築くことができるんじゃないかな。兄さん、僕と一緒に一度、ゼフィリア王国に訪問してみない?」ルシアンがサラリオ様を見ながら提案する。その瞳には、何か考えがあるようだった。こうして、私とキリアンは医療の発展のため、ルシアンはゼフィリア王国との友好関係を強固にするために動き出すことにした。サラリオ様は、この計画を無事遂行するために総指揮を執る。その間、サラリオ様がやっていた任務をアゼルが代理で務めることとなった。私をゼフィリア王国へは行かせない、と四人の王子たちが口を揃えて言ってくれたことに、私の涙は止まらなかった。私自身も約束の一年までに全力を尽くすことを心に決め、私たちは動き出した。この国に、そしてサラリオ様に、私のできる限りの恩返しをしたい。そして何よりも、この愛
last updateLast Updated : 2025-09-02
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157.希望の光、薬学の集い

葵side 「ね、キリアン?一年で成果をあげるなら何が一番効果的なのかな?」キリアンの執務室で二人で向き合っている時に、私はふと口にした。私たちは、与えられた一年という期限をどうすれば最大限に活かせるかを考えていた。「そうだね。あの時は、貴婦人たちにお茶会で教えることを提案したけれど、一年という期間を考えると広まるのは限定的な気がするんだ。それに、お茶会という場だと他の会話に流れてしまって、薬学の知識が忘れられてしまう可能性もある。」キリアンは、腕を組みながら真剣な顔で答えた。彼の言葉に私も頷く。「そうよね。だからと言って、薬学のためだけのお茶会を開くと言っても、興味を持ってもらえるか分からないし……。それに貴婦人たちは、怪我をしたら手当をしてもらう側で、自分から他の人の手当てをしないわ。そうしたら、せっかく知識を学んでも使う時がない気がするの。」私の言葉を聞いたキリアンは、何かに気がついたようでハッと目を見開き、私の手を強く握りしめた。「葵、それだよ!」「え?」「貴婦人たちは、自ら怪我の処置をしない。それなら、処置をする側の人を集めればいいんだ!貴族たちが集まる場で、侍女や執事たち向けの集まりを案内する。身分や階級を気にする貴族たちは、張り
last updateLast Updated : 2025-09-05
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158.再会のときめきと

アンナ王女side「ルシアン様、遠いところまで長旅お疲れ様でした。到着、心待ちにしておりました。」ゼフィリア王国の宮殿の門前で、私は胸を高鳴らせながらルシアン様を出迎えた。彼の姿が馬車から現れた瞬間、私の心臓は喜びで跳ね上がった。「アンナ王女、出迎え頂きありがとうございます。私も、アンナ王女にお会いできることを楽しみにしていました。」ルシアン様は、そう言って微笑んでから、優雅に膝まづき、私の手の甲にそっと唇を落とした。それだけで目眩がして倒れそうなくらい、私の心臓は目まぐるしい速さでドックンドックンと音を立てていた。その熱い感触が、手の甲から腕、そして全身へと駆け巡り、私の頬は赤く染まった。(キャッ、キャ、キャアアアアアアー!ルシアン様が手の甲にキスをしてくださった!?なんて光栄なこと!このまま気絶してしまいそう、耐えるのよアンナ!!!!)私の頭の中は、歓喜で埋め尽くされていた。「アンナ王女、私はゼフィリア王国のことについて深く知りたいと思っております。この国の自然や文化などにも実際に目で見て触れたいのですが、もし、お困りでなければアンナ王女に案内して頂けたら嬉しいのですが、お願いできますでしょうか。」ルシアン様からのご指名に、私は鼻息荒く即答した。「は、はい!!!も
last updateLast Updated : 2025-09-06
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