All Chapters of 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Chapter 131 - Chapter 140

213 Chapters

131.神秘的な誓い、二人の未来

十七の儀―― この国では、十七歳を迎えると成人となる。十五から二年間の働きを経て、十七の儀を経て一人暮らしや婚姻が認められる。そして、その年までに将来を約束した相手がいる場合は、相手の誕生日を待って婚姻をする人が多かった。 そして今日、メルの誕生日に「十七の儀」と一緒にリアムとメルの結婚式が執り行われた。王宮の庭園に設えられた特設会場は、まるで夢の世界のようだった。太陽の光が降り注ぎ、王宮の神秘的な水が煌めいている。 「リアム、メル、あなたたちは互いを愛し、信じて生涯を共にすると誓いますか?」 神官の厳かな声が響く中、二人は微笑みながらはっきりと誓い合った。 「はい、誓います――」 バギーニャ王国は、世界中の滝や湖の水と繋がっている神秘的な場所だ。王国の綺麗な水を各地と交換して循環しており、婚姻の儀にもその神聖な水が使われる。 正装した二人がひざ丈ほどの浅い水の道を手を繋いで一緒に渡る。石碑で舗装された道は、五メートルほどの距離だが、衣類を身に纏ったまま歩くと、服に水を含んで重くなり、動きづらい。 その不自由さは人生の困難に例えられており、手を繋いで歩くこ
last updateLast Updated : 2025-08-18
Read more

133.知と愛をもって降臨す女神

サラリオsideバギーニャ王国には、王家を継承する者だけが知る一つの神話があった。『バギーニャ王国に危機が訪れる時、聖なる滝より女神が降臨し、混迷を極める国を導く。その者は異邦の地から来たる純粋なる魂を持ち、知と愛をもって国を繁栄させるであろう』神話は代々受け継がれてきたが、誰もがおとぎばなしだと捉えており、女神の登場を信じる者はいなかった。それは、私も同じだった。しかし、ある日突然、私の目の前に葵があらわれた。この世界に来たばかりの葵は、様々な者の視線におびえ、自分が嫌われているのかもしれないという哀しみと恐怖に暮れていた。女神を連想させるような雰囲気や度量は、その時の彼女には微塵も見当たらなかった。道に迷って森の茂みから出てきた小鹿のように弱々しく怯えていたのだ。そんな葵だったが、誰よりも人の役に立つことを考えて行動していた。その行動の根源には、彼女がかつていた世界で、夫に愛されなかった経験があった。夫には他に想い人がいて、葵が何をしても優しい言葉をかけることもなければ、愛の言葉も囁かない。指一本触れるどころか、興味を持つことさえしなかったという。この国では、男性が妻や大切な女性にそのような態度を取ることはあり得ない。もし、そんなことをすれば、女性は愛想を尽かして離れていってしまうだろう。
last updateLast Updated : 2025-08-19
Read more

134.愛の蜜月、新しい扉

リアムとメルの祝典が終わった日の夜、部屋の扉が控えめにノックされた。私は、もうその音だけで誰が来たのかが分かった。サラリオ様だ。「葵、私だ。いいか。」その声に私の胸は高鳴る。「サラリオ様、来てくださり嬉しいです。今日は特に、サラリオ様にお会いしたかったです。」「私もだ。昼間、幸せな気持ちになったら葵に会いたくて仕方がなかった。」そう言うと、サラリオ様は私の腰に手を回し優しく抱き寄せる。私もそっと彼の背中に触れ、しばらくの間、言葉を交わすことなく、ただ互いの存在を確かめ合うように密着していた。昼間、二人の幸せな姿を見た時、私もまた、サラリオ様とあの水の小道を一緒に歩く姿を思い浮かべた。そして、サラリオ様のことを思い、二人きりで会いたいと切に願っていたのだ。出会った頃は、手の甲にキスをされただけでも心臓がおかしくなりそうだったのに、今ではこのキスも、彼の吐息も、体温も、欲しくてたまらない。サラリオ様の温もりを感じないと、どこか寂しく感じるようになっていた。サラリオ様がそのまま唇を合わせてくる。それは、少し離れてはすぐにくっつく、吸い付くようなキスだった。何度もしているうちに、呼吸を合わせるかのように、私も自然と唇を動かしていた。「はぁ、ん……」
last updateLast Updated : 2025-08-19
Read more

135.愛と秘密と確かな絆

ベッドに横たわり、サラリオ様が優しく服をずらすと、彼の指が、そして唇が、私の身体を優しく這わせて撫でていく。触れている指の優しさや、唇から感じる熱、私の名前を呼ぶ彼の甘美な声に、小さな電流が全身を駆け巡る。「サラ……サラリオ様……。」自分でも知らなかった甘い声を出しながら、目の前にいるサラリオ様の名前を必死で呼んだ。恥じらいで身をよじらせる私を、愛おしそうに見つめてくる。その瞳の温かさに、私の心は満たされていった。身体を重ね合わせ、ギシギシと音を立てて一つになるたびに、好きという気持ちがこみ上げてきた。それは、言葉では表現しきれないほどの深い愛だった。互いの体温、鼓動、そして吐息が混ざり合い、私たちは、もはや二人ではない、一つの存在になったかのようだった。絡み合った身体をゆっくりと離し、横になりながら昼間のメルの結婚式の水が渦を巻いた神秘的な出来事を話していた。「今日の水が急に渦を巻いたのはビックリしたな。」「はい……。実は、私が元いた世界からここに来た時も、穏やかだった滝が、今日のような激しい音と激流に変わりました。抵抗する間もなく、そのまま飲み込まれてしまって……あの時は、水に近づいたらまた飲み込まれてしまうのではないかと、少し不安になりました。」この国に来てから、ずっと心の奥底にしまっていた秘密を自然と彼に話していた。
last updateLast Updated : 2025-08-20
Read more

136.国王陛下へ提言

サラリオside「国王陛下、この国の課題と対応策について一つお話があります。」この日、私は父である国王の元を訪れた。父は、重厚な玉座に座り、私を穏やかに見つめている。私は、先日葵が話をしていた「未病」への対応と、「学校」の創設について、胸に秘めた熱い思いを込めて提案した。「ほぅ、『未病』か……。確かに軽度の段階で気がつき対処できれば、感染症が流行るリスクや病気の重症化する可能性を低くできそうだな。」父は顎を指で撫でて感心しながら私の話に耳を傾けていた。その表情は、この案に大きな関心を寄せていることを示していた。「あと、学校というものも面白い。今まで医者は、その家系内でのみ引き継ぐものだった。引き継がせる者は既に高齢で、自分が動けるうちは目の前の患者で精一杯だった。医療に携わる者が増えれば、今いる医者の負担も減るしな。……それで、教えるのは誰がやるんだ。」父の問いに、私は胸を張って答えた。「父上の言う通り、この国は医者が自分の息子に継がせるケースが非常に多いです。しかも、子どもが成人するのを待ったり、自身が高齢になってからが多く、教える期間も人数も限られてしまいます。」 「そこで、引継ぎを考えている者に期間を早めてもらい、その間の収入保障をするのはどうでしょうか。また教える者も自分
last updateLast Updated : 2025-08-20
Read more

137.国王の嬉々と警戒

「これは……葵という、薬学の知識を持つ者です。彼女は突然、あの泉から現れました。黒髪に華奢な体つきは、我々の国の者でも、隣国の者でもありません。彼女は、元居た世界で滝で水浴びをしていたところ、激流に飲み込まれてこの地に来たと申しています。」「なんだと!?サラリオ、それは本当なのか?」父は目を見開いて驚き、重厚な赤い皮の椅子から立ち上がった。父もまた、あの伝説の神話を思い出しているのだろう。「はい、彼女はこの国の役に立つために、自分の知っている薬学の知識だけでなく、この国の文化や歴史も学びたいと申しています。この案も医療の相談をした際に、彼女から提案されました。」「そうか。私も一度、会って話がしてみたい。今度連れてきてもらえるか?」「はい、承知いたしました。」嬉々とした表情と光輝に満ちた明るい声で父は言った。私は、父と葵が会う機会が出来て、心の底から喜んでいた。これで、葵が王妃として認められる道が開ける。そう確信し、国王がいる宮殿を出た。 「サラリオ殿下が王宮から帰られました」国王陛下の側近である宰相が告げる。「分かった。サラリオが噂の女性を連れてきたら、厳重に対処するように。決して傷をつけるようなことはしてはならぬぞ――――」その声は、さきほどとは打って変わって暗く沈んでいた。その瞳の奥には深い警戒の色が宿っていた。「あと、この件をあのお方にも直ちに伝えてくれ」「かしこまりました。」
last updateLast Updated : 2025-08-20
Read more

138.私が国王に?不安と動揺

「え?国王陛下が私に会いたい?サラリオ様、それは本当ですか?」国王のいる宮殿から戻ってきたサラリオ様は、すぐに私を呼び出し国王陛下の反応を教えてくれた。「ああ、父も提案の内容に感心し、進めることを許可してくれた。そして、発案者を聞かれたんだ。葵が泉からあらわれたことを話すと興味津々で是非会いたいと言っていたよ。今度、一緒に王宮へ来て欲しい。」「は、はい……。私で良ければ。」国王陛下ともあろうお方が、私に会いたいと言ってくれているなんて現実味がなかった。私は、この国の最高権力者である国王にいったい何を話せばいいのだろう。不安で胸が締め付けられそうだった。「葵様、サラリオ様からお話伺いました。国王陛下の元へ行く際のお洋服を選んできたので、着てみて頂けますか。」上品な仕立てのドレスを数着手に持って、メルが部屋を訪れた。「ありがとう。でも、私が国王陛下に会うだなんて……失礼があったり嫌われたりしたらどうしよう。」不安がる私にメルは優しく微笑んだ。「何言ってるんですか、葵様なら大丈夫です。葵様は、みんなに愛されています。それに……」そう言うと、彼女は声を潜めて私の耳元でこう囁いた。「すでに次期国王と言われているサラリオ様から寵愛を受けているんですもの。嫌われるはずありませんわ。」「メ、メル…………」私はメルの言葉と、サラリオ様との情事を思い出し顔を赤らめた。「ふふふ、だから何も心配しなくて大丈夫です。」メルの屈託のない笑顔に私の心は少し安らいだ。 しかし、この時の私はこの訪問が単なる好奇心だけでなく、もっと深い裏の目的があることを何も知らなかった。国王が私に会いたかった理由、そしてその背後にあるこの国の未来を揺るがすかもしれない秘密を。私は、メルが選んでくれたドレスを手に取って静かに着替えた。このドレスが私の運命を大きく変えることになることも知らずに。
last updateLast Updated : 2025-08-21
Read more

139.未来を喜び合う甘い夜

国王陛下の元を訪れた日の夜、サラリオ様が私の部屋を訪ねてきた。最近では、毎日のように私の部屋を訪れるようになっていた。扉がノックされるたびに、私の心臓は彼への期待で高鳴る。「葵、まだ起きていたか。」「はい、サラリオ様が来るのをお待ちしておりました。」部屋に入ると、メルが用意してくれたドレスがサラリオ様の目に留まった。エメラルドグリーンやコバルトブルー、サテンの淡いピンクのドレスなど、色とりどりのドレスが並ぶ中で、サラリオ様は一着を手に取り、まじまじと見つめていた。「あれはメルが用意してくれたものか。どれもよく葵に似合いそうだ。」「この深紅のドレスは大変珍しい。それに、葵の黒髪にもよく似合いそうだ。」深紅のドレスを手に取り、その艶やかな布地を指先でなぞった。「実はメルもそのドレスが一番いいと言ってくれました。私も気に入っていて……。」「よし、それなら国王の元へは、このドレスを着ていこう。」そう言うと、サラリオ様は私のお尻と太ももの境目に腕を回し、ひょいと私を抱え上げた。鍛え上げられた彼の肉体には、私の身体は軽すぎるようで私の視線は天井高くにある。抱きかかえられたまま移動すると、ベッドの天蓋にぶつかりそうになった。「きゃっ、サ、サラリオ様……おろしてください!」驚きで声を上げると、サラリオ様は楽しそうに笑う。「ああ、なんだか父上に葵を会わせるかと思うと嬉しくてな。今はこうしていたい気分だ。」彼の声は、喜びで弾んでいた。私も彼と同じくらい嬉しかった。「私も嬉しいです。でも、この体勢ではなくサラリオ様のお顔を見て喜びを共有したいです。」私がそう言うと、サラリオ様はすぐに私を下ろし優しく私の頬を撫でた。「そうだな、私も葵の顔をよく見たい。」そう一言だけ言うとそのまま唇を重ね合わせた。大きな手が背中をさすり、唇は頬や耳へと移り、それから首筋や鎖骨へと移動させていった。「あ、んっ……。サラリオ様、これではお顔がよく見えな
last updateLast Updated : 2025-08-21
Read more

140.緊張の訪問

サラリオ様が国王陛下の元を訪れた翌週、私はサラリオ様と一緒に陛下のいる王宮へと訪問した。 サラリオ様とメルが似合うと褒めてくれた深紅のドレスは、胸元がゴールドで縁どられており華やかな仕立てだった。私の黒髪によく映え、肌の白さを際立たせてくれる。しかし、この華やかさが私には少し過剰に感じられた。 「国王陛下にお会いするのに、こんな胸元が露わになったドレスは派手過ぎない?」 私の不安な問いにメルはいつもの穏やかな笑顔で答えてくれた。 「何を言っているんですか。隣国の王女たちが訪問した際のドレスと変わりませんわ。葵様が着慣れていないだけで、それほど露出は激しくありません。」 メルや他の侍女たちの言葉に後押しされ、私はドレスと綺麗にセットアップしてもらった髪で、サラリオ様の元へ向かった。 「サラリオ様、お待たせいたしました。」 私の姿を見るなり、サラリオ様の瞳が輝いた。 「ああ、葵――。とっても綺麗だ、よく似合っている。」 その言葉に、私の胸が高鳴る。きっと他の王女に対しても同じように「綺麗」と言っているのだろうけれど、サラリオ様に言われると、その言葉には特別な意味があるように感じられた。恥ずかしさで、最後は消え入りそうな声でお礼を言った。 「葵、緊張しているようだね。」 「はい、国王陛下にお会いするなんて夢のようで……。何を話していいか分からなくて……。」 王宮へ向かう馬車の中で私の手のひらは汗ばんでいた。胸の内を告白した私に、サラリオ様はそっと手を重ねてくれた。サラリオ様の温かく大きな手は、私の不安を少しずつ溶かしていく。 「大丈夫だよ。私がついている。何かあったら、私が助けるから安心してくれ。」 優しい言葉と安心させるかのように強められた手の力に、私の心は少し落ち着いた。 (サラリオ様は、私との未来を考えて動いてくださっ
last updateLast Updated : 2025-08-21
Read more
PREV
1
...
1213141516
...
22
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status