「サラリオ殿下、お待ちしておりました。葵様もご足労頂き、ありがとうございます。」側近が出迎えてくれ、国王のいる重厚な部屋へと案内してくれた。扉が開くと、部屋の奥には国王陛下が立っていた。噂で聞いていた厳格な姿とは違い、穏やかな笑顔で私を迎え入れてくれた。「やあ、君が噂に聞いていた女性かね。お会いしたかったよ。」国王陛下は笑顔で私のところまで近付き、握手を求めるとそのまま軽く抱擁をした。私は、その温かい歓迎に驚きつつも、丁寧に挨拶をした。「国王陛下、お招きいただきましてありがとうございます。」私の挨拶に、国王はニコリと微笑み、椅子へ座るように促してくれた。私はサラリオ様の隣に座り、国王陛下と向かい合って話をした。私が泉から現れた話や、元いた世界のことなど、国王は次から次へと矢継ぎ早に質問してきた。私が言葉に困っていると、サラリオ様がうまく助太刀をして、代わりに説明をしてくれた。サラリオ様のサポートのおかげで、会話は終始和やかな雰囲気で進んだ。「今日は、楽しかったよ。サラリオ、少し二人だけで話がしたい。いいかね。彼女には、他の者が王宮まで送るようにするよ。」「はい、大丈夫です。葵、すまない。先に……先に戻っていてくれるか。」「分かりました。国王陛下、今日はありがとうございました。お話しできてうれしかったです。それでは失礼いたします。」私はそう挨拶をして部屋を出た。部屋の外には、案内するための付き人が既に待っており、彼の後について廊下を歩いていった。(この道、行きに来た時に通ったかしら……?)見慣れない廊下を進むうちに、私の心に小さな不安が芽生えた。そんな私の不安に気がついたのか、案内人が声を掛けてきた。「遠くまで歩かせてしまい申し訳ございません。馬車でお送りするために、厩舎のほうへ向かっております。」「いえ、大丈夫です。お心遣いありがとうございます。」「葵様、こちらの扉から出てくださいませ」案内された向こうは、外の通路へ繋がるであ
Last Updated : 2025-08-22 Read more