王宮に戻ったアゼルはすぐに医師の診察を受けた。すぐに処置したおかげか容態は安定しており、医師からは「問題はないがしばらくは安静にして身体を休めるように」と指示された。安堵とともに私の心にも静かな疲れが広がっていた。そして、その夜のことだった。私の部屋の扉が、コンコン、と小さくノックされた。「葵、少し話をしたいんがだが、今、いいか?」扉の向こうから聞こえてきたのはサラリオの声だった。まさかサラリオが私の元を訪ねてくるなんて、思わず私は一瞬息を呑んだ。久々にサラリオから直接話しかけてきてくれたことへの喜びや、部屋に訪れたことに緊張と戸惑いが胸の中で渦巻く。アゼルが高熱を患ったことを咎められるかもしれない。私が無茶をしたことへの叱責かもしれない。悪い想像ばかりが矢継ぎ早に頭の中をよぎった。私はゆっくりと扉を開け、サラリオを招き入れた。「はい……どうぞ」サラリオは、私の向かいに座ると深く息を吐いた。その顔には、いつもの威厳と冷静さの中にどこか疲労の色と、そして深い苦悩が浮かんでいるように見えた。私の不安は募るばかりだった。「葵、すまなかった。」
Terakhir Diperbarui : 2025-07-24 Baca selengkapnya