All Chapters of 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Chapter 101 - Chapter 110

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101.リリアーナ王女の登場と接近

数日後、現れたルーウェン王国のリリアーナ王女はその評判に違わぬ人物だった。王女としての気品と、知的で深い教養を持ち合わせ、周囲をたちまち魅了した。その柔らかな物腰と、目を引くような妖艶な美しさは、まるで絵画から抜け出してきたかのようで、彼女が微笑むたびに周りの人々がため息を漏らすのが聞こえるほどだ。リリアーナ王女は、来訪初日からサラリオ王子に積極的に接近した。公の場では常にサラリオの傍らに立ち、彼の隣がまるで彼女の定位置であるかのように振る舞った。公務のない時間でも、躊躇なくサラリオの元を訪れ、庭園を案内して欲しいと誘ったり、書庫で共に本を読んだりしながら、巧みに距離を縮めようとした。リリアーナ王女の行動はあっという間に王宮中に広まり、その噂は私の耳にも届くようになる。侍女たちの間で、彼女とサラリオ王子が結ばれるのではないか、という話が交わされるようになった。「リリアーナ王女様とサラリオ王子様が結ばれたら、きっと素晴らしいご夫婦になるわね」 「本当に絵になるお二人だわ」そんな声が、食堂や廊下、庭園の片隅、どこからともなく聞こえてくる。王女の存在は、静かな水面に投げ込まれた小石のように、王宮全体に波紋を広げ始めていた。 そして、リリアーナ王女自身も、今回の訪問をサラリオの王妃として嫁ぐ覚悟で迎えていた。ゼフィリア王国が王妃候補を送り込んだ話は、友好国であるルーウェン王国にも届いていたのだ。三国は友好的な関係にあるが、より強固なものにするためにはバギーニャ王国との縁談を結びたいという強い思惑があった。
last updateLast Updated : 2025-08-05
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102.王女の嘆きと厚い壁

「どうすればサラリオ様の心を射止めれるのかしら……。このままでは、いくら頑張っても彼の心を動かすことはできないわ」リリアーナ王女は、来訪して数日が経った今もサラリオ王子との距離を縮めることに苦戦していた。王妃としてこの国に嫁ぐという固い決意を胸に、サラリオの好きな物や、幼少期の思い出など、「あなた自身」を知りたいと、積極的かつ情熱的にアピールしていた。サラリオ王子は、常に優雅で完璧な笑顔で彼女の問いに応じる。公務以外の場でも一緒に過ごす時間を増やし、王宮内でもお似合いだという声が聞こえているのも自覚していた。しかし、リリアーナ王女はその笑顔の奥にあるどうしても越えられない壁を感じていた。話は弾むが、彼の瞳は常に穏やかで冷静で感情が一切見えないのだ。焦燥感と苛立ちが彼女の胸の中で渦巻いていた。(周りには分からないようにしているけれど、サラリオ王子はなんだか一定の距離を保っている気がする。よそよそしい感じがするのよね。)自室に戻るため、厨房の前の廊下を歩いていると、中からは侍女たちが慌ただしく昼食の準備をしている賑やかな声が聞こえてくる。「これはアゼル様、ルシアン様、キリアン様……。あと、こちらは葵様の分ね」聞き慣れた王子の名前の後に、突然
last updateLast Updated : 2025-08-06
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103.謎の人物と新たなライバル

昼食後、サラリオと二人きりになったのを見計らって探りを入れるように話しかけた。「サラリオ王子、無礼がないように皇族の方々には全員ご挨拶をしたいと思っているのですが、まだお会いしていない方はいますでしょうか?」あくまで王女としての礼儀を重んじる姿勢を見せながら、サラリオの反応を注意深く観察していた。サラリオは、いつもの完璧な笑顔で応じる。「リリアーナ王女、お心遣いありがとうございます。しかし、初日に紹介した者が全員です。王女にご足労をかけないよう、来訪日の宴の場に関係者は全て招待しました。」「そうですの……。」サラリオからは何か隠しているような様子も戸惑いの口調も感じられない。しかし、その言葉にわずかながらの違和感を覚えた。(「アオイ」なんて珍しい名前なら、たとえ一度きりでも紹介してもらったら絶対に忘れるはずがない。だとしたら、あの宴にはいなかったということ?だけど、侍女には『様』をつけて呼ばれていた……) サラリオ王子の誰にも見せない心の壁。侍女たちが口にする皇族でも貴族でもない、見知らぬ「アオイ様」という名前。そして、アゼル王子がその存在を隠そうとしているような態度ーーーーその時、彼女
last updateLast Updated : 2025-08-06
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105.無邪気な声と暴かれる秘密

コンコンーーその時、執務室のドアがノックされ執事が尋ねてきた。「サラリオ様、申し訳ございません。レオン様とリオ様が予定にはなかったのですがこちらに遊びに来たようで……。王女が訪問中ですが、いつものように庭に案内してもよろしいでしょうか。」「うーん。王女の来訪日に二人も来て挨拶もしているし、まだ幼いから問題ないだろう。通してくれ」サラリオは、せっかく遊びに来た無邪気な子供たちを追い返すことが出来ずに承諾した。しかし、その判断は思いもよらぬ事態を招くこととなる。中に入るとすぐにリオンとレオはすぐ園庭に続く廊下を駆けだした。その時、屋敷内に大きな声が響き渡った。「お姉ちゃまー、どこー、あーそーぼ!」その声は、執務室にいるサラリオとルシアンにも、そしてきっとリリアーナ王女の元にも届いただろう。「!!!!」思わぬ事態に、サラリオとルシアンは顔を見合わせ無言で立ち尽くした。目が合った後にうなだれるように二人は下を向いて深くため息をついた。彼らの顔には、焦りとそして自らの甘さを後悔するような表情が浮かんでいる。リリアーナ王女の鋭い探求は、子供たちの無邪気な声によ
last updateLast Updated : 2025-08-07
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106.謎の「お姉ちゃま」

「レオン王子、リオ王子、こんにちわ。」「リリアーナ王女、こんにちは。大きな声を出してごめんなさい」「いいのよ。今日も元気いっぱいですわね」サラリオとルシアンが園庭に着く前に、リリアーナ王女は既に到着し、レオンとリオに笑顔で話しかけていた。満面の笑みで挨拶を返してくる二人の幼い王子に、リリアーナ王女はさらに柔らかな笑みを浮かべた。「あら、サラリオ王子とルシアン王子。お二人もレオン王子、リオ王子のところへ?」リリアーナ王女は、私たちが現れたことにわざとらしいほど驚いた表情を見せ、優雅に尋ねてきた。王女の言葉にルシアンが笑顔で応じる。「はい。ただ今日は王女もいらっしゃるし、二人には別の場所で遊んでもらおうと思って」ルシアンはそう言いながら、子供たちを王女から遠ざけようとレオンとリオの肩に手を置いた。しかし、その時、最も言ってほしくない言葉がレオンの口から飛び出した。「ねえ、今日は葵お姉ちゃまはいないの?」その言葉に、リリアーナ王女の顔がわずかに反応するのが見えた。彼女の瞳の奥に、鋭い光が宿る。ルシアンと私は、顔を見合わせ心臓が止まるような感覚に陥った。レオンの無邪気な声は、私たちの必死な努力をたった一瞬で打ち砕いてしまったのだ。
last updateLast Updated : 2025-08-08
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107.アオイの正体、サラリオの機転

「お姉ちゃまはね……みんなのものだよ!僕、お姉ちゃまのことが大好きなの」レオンの無邪気な言葉にリオも元気いっぱいに続く。「僕もー!」リオンとレオの言葉に、リリアーナ王女は目を丸くしていた。彼女は、「みんなのもの」という言葉に引っかかったようだ。「みんなのもの?」「そう。僕が転んで怪我した時に治してくれたの。他の人もね、痛いところや熱出したりするとお姉ちゃまが助けてくれるんだよ」レオンは、屈託のない笑顔で葵の存在を語った。リリアーナ王女は、その言葉に驚きを隠せない。「すごい方なのね……」笑顔で二人と会話を続けているが、その表情にはかすかな落胆が垣間見えた。しかし、サラリオはリオンの言葉を聞いて、妙案が浮かんだ。「リリアーナ王女、お恥ずかしながら、我が国は医療を課題の一つとして、改善に取り組んでおります。先ほど二人の話に出た人物は、その対応のために意見を伺うべく来てもらっている博識者です。しかしながら、我が国以外にも彼女に力を貸して欲しいという国があり、先日、無理矢理自国に連れて帰ろうとする悪い輩に絡まれ、危険な目に遭いました。そのため、国のために尽力してくれている彼女の身の安全を守るため、今は王宮外の者とは会わない
last updateLast Updated : 2025-08-08
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