数日後、現れたルーウェン王国のリリアーナ王女はその評判に違わぬ人物だった。王女としての気品と、知的で深い教養を持ち合わせ、周囲をたちまち魅了した。その柔らかな物腰と、目を引くような妖艶な美しさは、まるで絵画から抜け出してきたかのようで、彼女が微笑むたびに周りの人々がため息を漏らすのが聞こえるほどだ。リリアーナ王女は、来訪初日からサラリオ王子に積極的に接近した。公の場では常にサラリオの傍らに立ち、彼の隣がまるで彼女の定位置であるかのように振る舞った。公務のない時間でも、躊躇なくサラリオの元を訪れ、庭園を案内して欲しいと誘ったり、書庫で共に本を読んだりしながら、巧みに距離を縮めようとした。リリアーナ王女の行動はあっという間に王宮中に広まり、その噂は私の耳にも届くようになる。侍女たちの間で、彼女とサラリオ王子が結ばれるのではないか、という話が交わされるようになった。「リリアーナ王女様とサラリオ王子様が結ばれたら、きっと素晴らしいご夫婦になるわね」 「本当に絵になるお二人だわ」そんな声が、食堂や廊下、庭園の片隅、どこからともなく聞こえてくる。王女の存在は、静かな水面に投げ込まれた小石のように、王宮全体に波紋を広げ始めていた。 そして、リリアーナ王女自身も、今回の訪問をサラリオの王妃として嫁ぐ覚悟で迎えていた。ゼフィリア王国が王妃候補を送り込んだ話は、友好国であるルーウェン王国にも届いていたのだ。三国は友好的な関係にあるが、より強固なものにするためにはバギーニャ王国との縁談を結びたいという強い思惑があった。
Last Updated : 2025-08-05 Read more