心に無数の針を突き立てられているようだ。 人に傷つけられるより、傷つけるほうが何倍も苦しい。 そして、身体の痛みより心の痛みのほうが何倍もつらい。 そのことを嫌というほど思い知った。 でも、たとえ代償がこの耐えがたい痛みだったとしても、安西さんと出会い、心と身体を通わせたことはわたしにとって、絶対に必要なことだった。 後悔していない。 ものすごく自分勝手な言い分だとわかっている。 けれど、安西さんと出会わなければ、わたしは人を愛することの本当の意味を知ることはなかった。 これまで、ひとを傷つけてまで、何かを得たいと思ったことは一度もなかった。 後にも先にも、そんなふうに情熱を注げるのは安西さん、ただひとり。 それほど、かけがえのない人。 でも、もう二度と安西さんに会わない。 昨日、安西さんとはじめて口づけを交わしたときから固く決心していた。 どれほどお互いが必要な存在であるかを知ってしまった今となっては、会えないのは半身がもがれるほどつらい。 それでも、俊一さんを傷つけたのに、のうのうと自分だけ幸せになることはできないし、なってはいけない。 もしそんなことをしたら、自分のことを一生許せなくなる。 安西さんにもう一度会いたい…… でも会ってしまえば、絶対に離れられなくなる。 自分の弱さは、すでにこの1カ月半で証明済みだ。 彼に会えない痛み、俊一さんを傷つけた痛み――それは、弱さに甘んじたわたしに与えられた罰。 流れ落ちそうになる涙をこらえようと、天を仰いだ。 この痛みをしっかり受け止めることしか、今の自分にはできない。 だから、安易に涙で流してしまいたくなかった。 見上げた空は、美しすぎるほど、青く澄みきっていた。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-23 Baca selengkapnya