「本条刑事! あの……僕、何でも協力しますんで、犯人捕まえてください! お願いします!」僕はそう言って頭を下げた。「そう言ってもらえるのはうれしいわ。でもね、危険だから一般人を捜査に加えることはできないの。ごめんね」本条刑事がきっぱりと言った。彼女の言葉はもっともだし、僕にできることなんてないのかもしれない。それでも、このままじっとなんてしていられない。「でも……!」と、僕は食い下がった。「君が通う高校周辺の巡回は強化するし、捜査はきちんとします。それと、君の登下校時に部下を護衛につけましょう」だから、ここは引いてほしいと、本条刑事が真面目な声音で言った。ここまで言われてしまっては、引き下がるしかなくて。僕は、渋々ながらもうなずいた。「情報提供、ありがとうございました。それじゃあ、これで」と、本条刑事は伝票を持って立ち上がる。「あ、先輩! 支払いはあたしが!」母さんが慌てて言うと、「ここは私が払うわ。また今度、お茶しましょう」と、本条さんは笑顔で去って行った。「何だか、かっこいい人だね」本条刑事のスマートさに、僕はそうつぶやいた。「そうだね」と、母さんがまぶしそうに目を細めながら言った。きっと、学生時代に彼女に憧れた人は大勢いただろう。たぶん、母さんもその1人なのだと思う。出入口を眺める母さんのまなざしを見て、僕はそう思った。「さてと、あたしたちも帰ろうか」母さんにうながされ、僕はうなずいた。帰宅して夕食を終えた僕は、バッグからブレスレットを取り出す。(どうか、本宮さんの意識が戻りますように)ブレスレットを握りしめて祈った。* * * *翌日。僕が家を出る時間に合わせて、スーツに黒いジャケットを着た男性がやってきた。その男性は、森脇(もりわき)謙吾(けんご)と名乗り、出迎えた僕と母さんに警察手帳を見せる。昨日、本条刑事が言っていた彼女の
Huling Na-update : 2025-07-03 Magbasa pa