Semua Bab 対人スキルゼロの変人美少女が恋愛心理学を間違った使い方をしたら: Bab 11 - Bab 20

42 Bab

11話

 翌日の朝、学校へ向うと、隣の席は空席のままだった。 俺が登校したのは遅刻ギリギリの滑り込みセーフ。つまり滝沢は遅刻、又は休みという事になる。 昨日は体調の方はもう大丈夫だと言っていたのに、もしかしたら俺に気を使って嘘をついていたのかもしれないな。 少し心配だ。「よう桐生。殿様出勤。ご苦労さん」 いやみったらしく声を掛けてきたのは、一つ前の席の吉岡だ。「別に遅刻してないんだから殿様出勤ではないだろ。って言うかお前の言葉づかいって、時々おっさんみたいだよな。今日び殿様出勤なんて言葉づかいしないだろ」 俺の指摘が気に食わなかったのか、吉岡は両手を顔の横で広げ、外国映画でよく見る、役者が理解が及ばない時に見せるポーズをしてみせた。「あっ、そうそう。なんかさ滝沢のやつ顔にえらい怪我してたぞ。もしかしたら矢野の親衛隊にでもやられたのかもな。可哀想に」 昨日、矢野さんの家の近くの路上であった事を思い出した。勢いよく顔面から突っ込んで痛そうだったよな。 というか、まてよ……「なんで滝沢が怪我してること、吉岡が知ってるんだよ?」「なんだ。お前も知ってんのか」 吉岡は顎に手を当ててははーんと一人で納得してから、後ろ向きに椅子に座り直してこちらに顔を向けた。「そういや、桐生は矢野に告白して振られてたもんな。矢野可愛さにお礼参りで女の子の顔あんなにしたら可哀想だろ」「……俺がやったわけじゃないよ」 俺は追いかけただけで、直接的に危害を加えた訳では無い。 追いかけた事で間接的に怪我をするきっかけになってしまった事には変わりはないが、その両者には大きな開きがある。「冗談だよ。桐生にそんな度胸ないもんな」 吉岡はヘラヘラと笑う。なんか腹が立つ。「っていうか、どこで滝沢を見たんだ」 「教室だよ。朝早く来ていたみたいだけど、ちょうど俺が来たタイミングで横島先生に連れていかれたぜ。────今から二十分くらい前かな。まあ、昨日、あんな事をしたんだから自業自得だよな。よく学校に来れたもんだよ。俺だったら恥ずかしくて校門まで来て、引き返しているところだぜ」「……ああ」 よくよく考えてみればそうだよな。 俺と滝沢は個人的にはわかり合う事ができた。 だがら、矢野さんに関する事件は既に解決したように錯覚をしていた。 しかし、実際はどうだろうか。 事態は何
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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12話

 都合の良い事に、生徒指導室は一階、職員室の隣にある。 本命は生徒指導室だけど、先に職員室の中の様子を確認する事にした。少しだけ扉を開けて、中の様子を伺ってみる。もうすぐ朝のホームルームということもあり、埋まっている座席の数は少ない。 扉から見やすい位置にある横島先生の机も当然空席だ。 となると、やっぱり滝沢が連行されたのは生徒指導室か。 ゆっくりと扉を閉めてから踵を返した。 そして、少し歩いて歩みを止めた。 『生徒指導室』室名札にはそうしるされている。 室内からは想像していた怒号のような物が聞こえてくる事はない。 しかし、なんというか、言葉では現しづらい、禍々しい異様な空気が生徒指導室一角に漂っていた。 なんとか助けようと思ってここまで来たものの、尻込みしてすぐに扉を開ける覚悟はできなかった。 中がどんな様子か探るために、俺は扉にピタリと耳をつけた。 壁に耳ありってやつだな。「────」 室内での会話は途切れ途切れながらも聞き取る事はできた。 しかし、中での会話の異様さが、耳をついた。『こんなに顔怪我しちゃって、どうしたのよー。まさか!誰かにやられたの?まさか男!?うちの学校の生徒なら今すぐ言いなさい!お姉ちゃんが締めてあげるから』 聞いたことのある声だ。いつもより甘ったるく感じるが、芯の通った声。 横島先生のそれとよく似ている気がする。いや気の所為だよな……? 聞いてはいけない物を聞いてしまったような気がして、思わず扉から耳を離した。 きっと来る場所を間違えてしまったのだろう。 念の為、顔を上げて、先程確認したばかりの室内札を何度か確認してみるが、そこにはしっかりと『生徒指導室』と表記されていた。 もしかしたら滝沢はもっと上、校長室なんかに連れて行かれてしまったのかもしれないな。『だ、大丈夫。わ、私がドジで、一人で転んだだけだから』 かなり弱々しい声色だけど、静まり返った廊下にかすかに聞こえたその声は滝沢の物で間違いない。 慌てて扉に耳を寄せる。『なに言ってるのよ!ただ転んだだけで、こんな風になるはずがないでしょ!お姉ちゃんの目はごまかせないんだから!私が昔、元カレに二階から投げ飛ばされた時と同じよ!凛もそうされたんじゃないの!?』 頭の中はクエスチョンマークで溢れていた。 あの横島先生が滝沢のお姉ちゃん!
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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13話

 横島先生は、かなり驚いた様子で目を見開くと、ギロリとした擬音がぴったりの視線で俺を凝視した。 俺からでは後ろ姿の為、滝沢の表情を見ることはできない。しかし、昨日電信柱の後ろから声をかけた時のように肩を大きくビクつかせている。「ど、どうした桐生。もう、ホームルームが始まっている時間だろう?」 つい先程、扉の向こうで『お姉ちゃん』と言っていた声ととても似た声だ。 いや、全く同じものだと断言できる。 毎朝のホームルームから、帰りのホームルームまで余すことなく聞いていた声だ。 聞き間違うはずがない。 狭い生徒指導室内を見回してみても、滝沢と横島先生以外に姿はないし、人が隠れられるような場所だってなければ、死角もない。 ゴリラのようにガタイが良く、端正な顔立ちで、女子生徒からの人気も高く、女子贔屓《じょしびいき》することもない為、男子生徒からも慕われている。 そんな先生の秘密を知ってしまったようで、複雑な気分である事は否定のしようがない。 ……いや待てよ。もしかしたら、口を割らない滝沢の為にそういうキャラを演じていたという線がまだ残るな。 そうした場合どういう癖なんだよと言う事にもなってしまうが…… 目撃してしまった。盗み聞きしてしまった事が信じられなくて、念の為、確認の為に口を開いた。「先生ってオネエ系なんですか?いや、そんなはずないですよね。ハハハ。すいません変な事聞いちゃって」 言いながら普段の横島先生の凛々しい姿を思い出して、『そんなはずはない』。自ら心の中でそう否定した。 だけど、俺が後頭部をポリポリと掻いて誤魔化そうとしていると、横島先生は表情を強張らせて、無言で俺の方に向かって迫ってきた。 目の前まで迫って来ると、185センチは大迫力だ。しかも胸板も厚い。 完全に視界を遮られたまま、生徒指導室内に引っ張り込まれると背後でピシャリと扉の閉まる音がした。 そして、右手で俺の口を塞ぐと、ギロリと睨みを効かせてこう聞いてきた。 正直、言うと俺はビビって膝はガクガクと震えていた。ここに来てしまった事に少しの後悔を覚えていると言えば嘘になるだろう。「桐生、どこから聞いていた?先生、怒らないから正直に答えろ」 口を塞がれて喋れない俺は、首を横にふるふると振ることしかできない。「お、お姉ちゃん。桐生君が驚いているからやめてあげて」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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14話

「あなた、この二人どういう関係なんだろう?今、そう思ったでしょ」 オネエ口調の横島先生は、俺が疑問に思っていた事をピタリと当てて見せた。 妙に勘が鋭い。 なんちゃらの勘は良く当たる。的な奴なのだろうかと驚き半分、感心半分で頷くと、横島先生は体の前で両手を使い、大きくバツを作って見せた。「それはトップシークレット!詮索するのはダメ。もちろん、周りの友達に言いふらしてもダメ。────もし破ったら、どうなるか……わかってるわよね?」 オネエ口調の横島先生は普段の十倍は迫力があった。、怒鳴りつけられるよりよっぽど怖い。された事はないけども。 それに、最後に舌なめずりしたの、なにあれ。いったい俺はどうなってしまうんだ…… 背筋に悪寒が走り、嫌な汗が流れた。「しません、しません。しませんよ!もう今後一切、二人の関係性を聞いたりしませんし、詮索もしません。決して誰にも言いふらしたりしません。本当です。信じてください」 両手を顔の前でパタパタと振り、自分にはそんなつもりはないと必死に否定した。 横島先生は疑うような目つきでしばし見たあと、唐突に笑顔を浮かべると、お嬢様のようなしなやかさで祈るように両の掌を胸の前で合わせた。「そう。それならいい。今回だけは、凛に怪我を負わせた事も不問にするわ。……次はないけどね」 ボソリと最後に呟いた言葉は重低音で、地面を伝ってくるようだった。「は、はい肝に銘じます」「お姉ちゃん。き、桐生君をイジメないで」「イジメてない。これは凛、あなたのためなんだから」 そう言いながら横島先生は滝沢の頭をポンポンと撫でた。「で、でも、かわいそう」 もう、直接勘ぐるつもりも言いふらすつもりもないけれど、この二人、本当にいったいどんな関係性なんだろう。 担任の男性教師をお姉ちゃんと呼ぶ滝沢はおかしい。 担任男性教師が女子生徒を名前呼びしているのも引っかかる。 元から滝沢はおかしいやつだと思っていた。 けれど、百歩譲ってお兄ちゃんならまだわかる。……それはそれで禁断の関係感が強まることになるのだけれど。 ……いや待てよ、もしや、横島先生がオネエだからお姉ちゃんなのか? 滝沢も矢野さんに好意を寄せているわけで、そういったものに寛容な滝沢が、禁断の関係を築いた上で、お姉ちゃんと呼んでいる可能性もあるよな。 なんて考えていた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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15話

 滝沢が謹慎処分をくらった翌日の放課後、帰り支度を淡々と進めていると、ある校内放送が流れた。 その放送は特定の生徒を生徒指導室へと呼び出す事を告げる放送だった。何もやらかした記憶はないし聞き流していて呼び出された人物の名前なんて全く気にしていなかった。 身支度も終えて帰ろうとしていると、何か面白い事があったのか、吉岡がニヤけづらで俺の肩を叩いた。「おっとと、やっこさん……何やらかしたんだ?昨日は滝沢、そして今日は桐生が謹慎かー」 吉岡の言っている事に全く心当たりはないし、何を言いたいのかがよくわからなかったから、手を振り払いながら侮蔑の目を向ける。「俺はお前みたいに遅刻もしなけりゃサボりで保健室を使ったりもしない優等生だぞ」「なーにが、優等生だよ」 そう言いながら吉岡は教室前方を指さした。 指先から線を伸ばして視線で追っていくと、そこにはスピーカーがあった。 スピーカーを目視して意識した瞬間に、耳に全く入って来ていなかった呼び出しのアナウンスが、これでもかと言うほどクリアに聞こえた。『もう一度繰り返す。一年三組、桐生陽葵。生徒指導室に来なさい』 そこまで言うと放送はプツリという音と共に切れた。 一年三組は俺が所属しているクラスで、三組に桐生陽葵という生徒は一人しか存在していない。「……って俺!?」 小馬鹿にするように、または慰めるように吉岡は「どんまい」と言いながら俺の肩に手を置いた。「いや、本当に何もしてないんだけど」「何もしてない人を生徒指導室に呼び出したりはしないだろうよ。なんだ、もし怖いなら付き添ってやろうか?」 こいつ、完全に俺を小馬鹿にしてやがるな。でも、なにも怖気づく事はない。「何も怖いことなんてないさ。なんせ俺は何もしてないんだからな。きっと、呼び出した先生はなにかを勘違いをしているだけだろうよ」 再度吉岡の手を払い除けると、生徒指導室へと向うことにした。 俺の背中に吉岡が「達者でな」なんて言っていた。けれど、それは完全に無視して教室を出た。 本当に何もしたような記憶はないし、俺はなんの心配もしていなかった。 四階から早足で階段を降りて、すぐに生徒指導室を目指した。 たどり着いた先、生徒指導室の扉を三度ノックして「失礼します」と言ってから扉を開いた。 中で待っていたのは、担任教師である横島先生だった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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16話

 なんとなく、矢野さんの家の前は通らない方が良いような気がしたため、滝沢の家へ向かう道中は少し遠回りをした。 その結果、俺の額からは滝のような汗が流れ落ちている。 学校から徒歩で四十分。歩く距離ではなかったなと晩夏の暑さを呪いたい気分だ。  不満はあるが、文句を言うことは許されないだろう。 なんせ、滝沢のスマホが壊れてしまった原因は、俺にあるのだから。 一度家に帰り、自転車で来るべきだった。もし次回このような事があるのならばそうしようと決意をしながら路地を左手に曲がると、つい先日訪れたばかりのボロアパートが見えてきた。 今にも崩れそうな、錆びた鉄骨階段を恐る恐る登り、二階の一番奥の部屋の扉の前に立った。 中から物音は聞こえてこない。 扉をノックしようとして、左側に呼び鈴がある事に気がついて、ノックしようとしていた右手を下げ、左手で呼び鈴を押した。「……」 呼び鈴が鳴った様子はない。 もしかしたら、部屋内では鳴っているのかもしれないけれど、俺の鼓膜を揺らすまでには至らなかった。 しばらく待ってみたけれど、部屋内で誰かが動く様子もない。 もしかしたら接触不良かもしれないと、今度は強めに、それでも音が鳴らないから三連打してみた。 それでも呼び鈴はならなかった。 後ろを振り返って、今にも朽ちそうな廊下の手すりを見て、きっと故障しているのだと決めつけて扉を三度ノックした。「滝沢、桐生だけど、横島先生に言われて様子を見に来たんだ」 三十秒程待っても応答はない。「……」 ドアポストから中の様子を覗く事も考えた。けれど、それは人としてどうなのかと思って踏みとどまった。 なんとなく、ドアノブに手を伸ばして捻ってみると、鍵がかかっている様子はなく、少し引いてやるとキィと鈍い音を立てて扉が開く。 えっ、まじ?あいつ施錠とかしない感じ? 多分、女の子の一人暮らしだよね。 力を込めていないのに、扉は自然と開き、全開になってしまったため、声をかけながら部屋の中へ足を踏み入れた。「滝沢?桐生だけど」 相変わらず殺風景な部屋だった。そんな一日や二日で変わるものでもないだろうけど、俺が訪れたあの日のまま、物の配置が変わっている様子もない。 でも注意深くよく見てみると、一つだけ変わっている事があった。 玄関と奥の部屋を隔てるように設置された半開
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-24
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17話

「……いいよ」 遠慮がちに開かれた扉から、カサブタだらけの顔が伏見がちに出てくると、そう言った。 やっぱり傷を気にしているのだろうか。女の子にとって顔は命って言うしな。「ああ。お邪魔します」 罪悪感を感じつつ、再度滝沢の部屋へ入った。 何も無い部屋のテーブルの上には既に飲み物が用意されていた。矢野さんが遊びに来た時用に使うと言っていた、猫をモチーフにした赤と青のマグカップ。 テーブルを挟んで対になるよう配置されている。 この前と同じなら、おそらく赤の方が俺の座り位置なのだろうと理解して腰をおろした。「見てないからな」 遅れてやってきた滝沢は「へ?」と間抜けな声を出した。 滝沢的には俺を異性として見ていないから、だらしない姿を見られようが見られまいがどちらでも良いのだろう。『何が?』と滝沢は目で訴え続けているが、なんか負けたような気がするから無視して早速本題に入る事にした。「スマホ、壊れてんだろ?」 なんで知ってるの?と言わんばかりに滝沢はハッとした顔をするが、よほど鈍いやつでもない限り気がつくのが当然の事だろう。「……あ、うん。雨で壊れちゃった」「弁償するよ。俺のせいだしな。壊れちゃったの」「べ、別に誰も私に連絡なんかしてこないし、壊れたままでも大丈夫だよ」 滝沢なりに必死に笑顔を作ってそう言ったつもりなのだろうが、滝沢らしい、少し不気味さのある笑顔だ。「そういうわけにもいかないだろ。横島先生だって連絡取れないって心配してたし。それで今日、横島先生に頼まれてここに来たんだ」「あー、お姉ちゃんね。うん。でも、保険使って直せるから、弁償は本当に大丈夫」「……そうか。でも、なにか問題が発生したら教えてくれ。なにか書くものある?」 滝沢は部屋の隅に置かれていた鞄にテトテトと近寄ってフタを開けると、ルーズリーフとシャープペンを取り出して俺に手渡して来た。 ルーズリーフを一枚抜き取って、スマホの電話番号を書き記し、その上に桐生陽葵と書いてそれを渡した。「俺の番号。俺の助けが必要になったら連絡してくれ」「う、うん」「……」「……」 沈黙が訪れ、俺はマグカップに手を伸ばした。 注がれていたのは、この前と同じ麦茶だった。 麦茶をあおりながら、俺はふとある事を考えていた。 いよいよ焼きが回ってしまったのだろうか、目の前の少女
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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18話

 今頃、滝沢はスマホの修理依頼に行っている頃だろうか? まどろみ時の昼休み。俺はそんな事を考えながら、母さんが作ってくれた弁当をせっせと口に運ぶ。 うん。やっぱり母さんが作ってくれただし巻きたまごは世界一美味しい。感謝の気持ちを込めながら頬張る。「一つ俺にもくれよ」 そんな事を言いながら吉岡は俺の弁当箱からだし巻きたまごを一つ掻っ攫っていった。 いや、掻っ攫ってから言っていたような気もする。 普段なら文句をつける所だけど、ちょうどよい頃合いだと、吉岡の行為を俺は見逃した。 だし巻きたまごを食べ終えた後、大あくびを浮かべる吉岡。隙を見せた吉岡に仕掛けるべく、俺は声をかけた。「なあ吉岡。いつも話してくれてた推しについて詳しく教えてくれないか?最近、興味が湧いてきてな」 トロンと眠そうにしていた半開きの瞳が大きく見開かれる。「俺にそれを……聞いちまうか。────長くなるぜ?放課後はマスドにでも行こうか?なんだったら俺の家、ちょっと遠いが、桐生の家だって構わないぜっ!」 なんという瞬発力。少し引いてしまう程の圧を感じた。 俺は吉岡の推しになんて微塵も興味はない。騙すようで心苦しいが、これは滝沢のためだ。 割り切って笑顔を作って向き合う。「俺の家でいいか?」「ああもちろんだぜ。親友」 いつも小馬鹿にしてくる時とは違って友好的な態度をみせる吉岡。 親友だなんて思ってもないくせによく言うよ。「ちょっと、けんちゃん。辞めといたら?……こいつ、なんか裏がありそうだよ」 どこからともなく現れて、俺達の会話に乱入してきたのはナイト様こと陽川姫だった。 前々から思ってはいたが妙に勘は鋭い。矢野さんに告白をして振られてから俺自身が警戒をされている感も否めないが。「やだなー陽川さん。裏なんてないよ。いつも吉岡から話を聞いていて、なんとなく吉岡の推しに興味を持っただけなんだよ」 口を挟むと、陽川は射抜くような眼光を俺に向けた。 怖いよ。マジで怖い。 陽川さん。メンタル弱い男だったらその眼力だけで逃走必死。二度と吉岡には近づかない所だ。 しかし、俺には目的があるし、そこまでメンタルが弱い訳でも無い。 むしろ都合が良いと心の中で笑みを浮かべた。 ここで、陽川を引き込めるかどうかで、今後の展開が大きく変わってくると言っても過言ではない。「そんな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-26
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19話

『太陽の国のお姫様、ストリーちゃんの配信にようこそ!このチャンネルは、日出る国、ニッポンのみんなと仲良くなるために〜、お姫様であるストリーちゃん自らが、矢面に立って体当たりな企画に挑戦しているんだよ!』 ハツラツとしたアニメご……可愛らしい声が、俺の部屋の中に響き渡る。 スマホの小さな画面の中で、ヴァーチャルキャラである、ストリーがところせまし、ワチャワチャと動き回っている。 動画の冒頭部分が流れた所で、吉岡はスマホに手を伸ばし動画をストップした。「これが俺の推し『ストリーちゃん』だ。どうだ可愛いだろ。ムフフ。可愛いだけじゃなくて元気いっぱいでドジっ子な所がたまらないんだ」 俺とは目も合わせず、かなり早口にそう言い切った。 ついてきた陽川はと言えば、自らが好きな相手である吉岡の《推し》を受け入れられないのか顔を逸らし、明後日の方向を見ていた。 怒っているのか、横顔が少し赤くなっているようにも見える。わかるよ。君の気持ち。好きな相手がちょっとマイノリティな趣味を持っている事を知って複雑な気分なんだろう?「吉岡ってこういうのにも興味あったんだな。前は声優のアイリ?だか、なんただかが好きって言ってなかったけ?」「志津里《しずり》アイリたん。の事だね」 メガネなんてかけていないのに、吉岡はメガネを直すような仕草をしてからニヤリと笑った。「そうそうその子」「ふふふ。これを聞いて欲しい」 吉岡は開いていたヴァーチャルキャラの動画を閉じるとあるアニメの動画を開き直し慣れた手つきでシークバーを動かした。そして、ちょうど動画の真ん中辺りにシークバーを合わせると、再生を始めた。 どこかで見たことのあるアニメだった。 たしかショート動画で流れてきた事があったんだ。 つい最近放送していて、かなり話題になっていたアニメ。たしか、タイトルは『ホライゾン≒メソッド』だったかな。 アニメに詳しくない俺でも聞いたことがあるほどのタイトルだ。 吉岡のスマホから、再度アニメ声が流れ出す。『この水平線の彼方にはきっと、君の求めているモノはあると思うよ。────でも、行かないで欲しいんだ。私のそばに────居てくれない────かな?』 吉岡はそのセリフを聞いてニヤリと笑うと、動画の再生を停めた。 そして、もう一度シークバーを戻して再度再生しようとしたところで停めた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-27
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20話

 バーチャルキャラ、ストリーについての講義は二時間弱にも及んだ。 俺の部屋にやってきたのが四時くらいで、壁に掛けられた時計の針は、六時近くを指し示している。 窓の外はすっかり日が沈みかけていて、真っ赤な光線が部屋を照らし出していた。 正直な所、すっかりと疲れ切っていた。 自分から聞いた事だが決して興味がある訳ではない事。まるでテスト直前に苦手な科目を暗記しなければならず、無理やりに要点を詰め込んでいるような感覚に近い。 陽川もさぞ疲れただろうと視線を向けてみると、疲れた様子はなく、かなり機嫌良さそうに吉岡の言葉に相槌を打っていた。「……ふむ」 そうか。合点がいった。先程までの会話で陽川のやつが、ストリーについて妙に詳しいと思っていたけど────こいつ隠れファンなんだな。 好きな相手と好きな物を共有する、そりゃ陽川からしてみれば最高の時間だったに違いない。 むしろ吉岡が好きだから陽川も好きになったまである。なんたって吉岡狂いだからな。 どちらにせよ俺にしては好都合だ。陽川が一人で話を聞いてくれていた事もそうだし、俺がこれから提案しようとしている事にとっても。 そろそろ頃合いか。「あ、あのさ」 完全に二人の世界に入ってしまっている所申し訳ないのだけれど、声をかけた。 そろそろお開きにしたいところでもあるし。 するといつものようにキツイ視線がキッと─────飛んでこなかった。「何かしら?」 上機嫌な様子で俺に返事をする陽川に違和感を覚える。 いつもならこう、目からビルでも破壊できそうなの光線が飛んでくるか、キツイ一言をお見舞いされる所なのに。 よほど吉岡と推しについて語り合えたのが嬉しかったのだろう。「せっかくだから、推しについて語り合うグループ作らないか?ほら、今も盛り上がっているところだけれど、時間ももう遅いし」 言いながら時計を指差すと、もうこんな時間かと吉岡。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-28
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