翌日の朝、学校へ向うと、隣の席は空席のままだった。 俺が登校したのは遅刻ギリギリの滑り込みセーフ。つまり滝沢は遅刻、又は休みという事になる。 昨日は体調の方はもう大丈夫だと言っていたのに、もしかしたら俺に気を使って嘘をついていたのかもしれないな。 少し心配だ。「よう桐生。殿様出勤。ご苦労さん」 いやみったらしく声を掛けてきたのは、一つ前の席の吉岡だ。「別に遅刻してないんだから殿様出勤ではないだろ。って言うかお前の言葉づかいって、時々おっさんみたいだよな。今日び殿様出勤なんて言葉づかいしないだろ」 俺の指摘が気に食わなかったのか、吉岡は両手を顔の横で広げ、外国映画でよく見る、役者が理解が及ばない時に見せるポーズをしてみせた。「あっ、そうそう。なんかさ滝沢のやつ顔にえらい怪我してたぞ。もしかしたら矢野の親衛隊にでもやられたのかもな。可哀想に」 昨日、矢野さんの家の近くの路上であった事を思い出した。勢いよく顔面から突っ込んで痛そうだったよな。 というか、まてよ……「なんで滝沢が怪我してること、吉岡が知ってるんだよ?」「なんだ。お前も知ってんのか」 吉岡は顎に手を当ててははーんと一人で納得してから、後ろ向きに椅子に座り直してこちらに顔を向けた。「そういや、桐生は矢野に告白して振られてたもんな。矢野可愛さにお礼参りで女の子の顔あんなにしたら可哀想だろ」「……俺がやったわけじゃないよ」 俺は追いかけただけで、直接的に危害を加えた訳では無い。 追いかけた事で間接的に怪我をするきっかけになってしまった事には変わりはないが、その両者には大きな開きがある。「冗談だよ。桐生にそんな度胸ないもんな」 吉岡はヘラヘラと笑う。なんか腹が立つ。「っていうか、どこで滝沢を見たんだ」 「教室だよ。朝早く来ていたみたいだけど、ちょうど俺が来たタイミングで横島先生に連れていかれたぜ。────今から二十分くらい前かな。まあ、昨日、あんな事をしたんだから自業自得だよな。よく学校に来れたもんだよ。俺だったら恥ずかしくて校門まで来て、引き返しているところだぜ」「……ああ」 よくよく考えてみればそうだよな。 俺と滝沢は個人的にはわかり合う事ができた。 だがら、矢野さんに関する事件は既に解決したように錯覚をしていた。 しかし、実際はどうだろうか。 事態は何
Terakhir Diperbarui : 2025-06-18 Baca selengkapnya