Semua Bab 対人スキルゼロの変人美少女が恋愛心理学を間違った使い方をしたら: Bab 31 - Bab 40

42 Bab

31話

 放課後になっても滝沢の席には荷物は取り残されたまま。本人が戻って来ることは無かった。 あいつは、どうしてしまったんだろうか。 滝沢に連絡を取るべくスマホを開くと、目的とは違う人物からメッセージが一件届いていた。『陽葵の学校にストリーが居るんだってな!こっちでも噂になってる』 メッセージの送り主は笹川秋人。 既に昨日の出来事が他県の高校まで情報が拡散されてしまっているようだった。 しかし、不可解だったのはその後に続く文字列だ。『でもさ、それってある意味ニセモノなんだよ。 だって、本物は俺の側にいるから』 全くもって意味不明だった。 何をもって、何を····と判断しているのか。 本文と一緒に添付されていた画像には、秋人とかなり可愛い女の子との自撮りツーショットが映っていた。 体を寄せ合い、腰に手を回している所を見るに、これが秋人が言っていた彼女なのだということを理解した。 この機に乗じて、可愛い彼女を見せつけたかったのか。まあ、男子高校生たるもの、そんな日もあるだろう…… 「ちょっと待って!誰だよその男!」 俺のスマホを上部から覗き込み、怒気をはらんだ声色で吉岡が叫んだ。 視線を合わせると目が血走っている。……ちょっと恐怖を感じたよね。「……ん?こいつか?俺の幼馴染だよ。今はサッカー推薦で他県に行ってるんだけどな────っておい」 最後まで言い終える前に、俺の手からスマホが奪い取られた。「やっぱり!」「やっぱりじゃないよ。返せ」 奪い返そうとしたスマホは、吉岡によってがっちりとホールドをされていて、微動だにしない。「ストリーちゃんだ!」「はあ?ストリーって今朝話題になってたやつか?それが、その写真のどこにいるってんだよ?否定したいあまり見えちゃいけないものが見えるようになっちまったのか?」 吉岡は血走った目をこちらに向け、力のこもった右手で俺のスマホ画面に指さした。「なにもかにも、ここにいるじゃないか!ストリーちゃんが。……志津里アイリたん! ここ最近全く姿も見せず、仕事もセーブしていたが男になんぞうつつをぬかしていたなんて。ぐぬぬぬぬ」 吉岡は悔しそうに唇を噛んでいた。唇から血が出てしまいそうな勢いだ。 そんな吉岡が指し示しているのは、秋人の彼女とみられる女の子。 そうそう偶然ってのが重なるとも思え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-12
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32話

 四人連れ立って向かった校門前には、人だかりが出来ていた。 近くに来てみると、教室で見ていた時より圧迫感を感じる。 近所で見たことがある制服もあれば、見たことがない制服。はたまたは私服姿で年上と思われる人の姿もあった。 一人余すことなく男であり、みなが何かを探すようにキョロキョロと校内を眺めるようにしている。 はたから見れば異様な光景だろうな。 怯えた様子の陽川を不思議に思いながらも、吉岡と二人で背中で庇うようにして歩いた。 その途中、連れ立ってやってきていたと思われる二人組の会話が耳についた。「ストリーちゃん。どこにいるんだろうな」 やはりこの人だかりは、噂通りストリーを探しに来ている群衆のようだ。 少なく見積もって四十人以上はいそうだ。 しかし、陽川がストリーを探しにきた群衆に怯えているのかがよくわからない。 普段の陽川なら、『邪魔よ。私とエマの通り道を開けなさい!』とバッサリ切り捨ててしまいそうなものだが。 なんなら、通り抜けるだけに収まらず、『ここは天下の往来よ!邪魔だから散りなさい!』と威嚇して追い払ってしまうまである。 天下の往来ならば彼らが···存在していても問題ないだろと言う話になってしまうが、そこに突っ込む隙を与えないのが陽川なのだ。 前を歩く陽川に目を向けると、俺の予想に反して顔を伏せて歩き、いつもの覇気はない。 その後ろを歩く矢野さんはと言えば、いつもの様子でポワポワと集まった人だかりを不思議そうに見ていた。 この様子だと、何らかの事情を親友である矢野さんにすら話していないようだな。 陽川を気遣いながら進む中、行く手を阻むように、俺たちグループの前に、他校の制服に身を包んだ三人組が立ちはだかった。 相手をしている暇はないと、三人組を避けて通ろうとするも、その三人組は俺達の進路に立ちはだかる。 もう一度逆に進むも進路を塞ぐ。 何をしたいのかも分からないし気味が悪い。できることなら相手をしたくないが──── そんな中、三人組に怯む事なく矢野さんがツカツカと眼前まで歩いていった。 そして、いつもの様子でポワポワとした口調で話しだした。「私のお友達があまり気分が良くなくて、早く帰らせてあげたいの。だから、道を塞ぐのはやめてくれないかな?」 そんな言葉を聞いて、三人組は矢野さんを舐め回すように見た
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-15
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33話

 声のした方を振り返ってみると、三人組のうちの一人に陽川は腕を掴まれていた。 やはり、陽川に普段のような覇気はなくて、オドオドとした様子。 いつもならあんな事されたら容赦しないくせに、今は振りほどくような仕草もみせない。不安気な表情でただただ掴まれている自らの右腕を眺めているだけだ。「なんか喋ってみろよー。ストリー検定、段位持ちの俺が、一発で見抜いてみせるからよー」 半笑いで、その男が言うと、周りの二人も同調するようにニタニタと笑う。「そうだ。なんか喋ってみろよ」「アポトーシスさんの覇気にビビってちびってんじゃねえの?」 一見して腹立たしい光景だけれど、俺はどうして良いものか分からずにその場に立ち尽くしていた。 陽川に俺は否定された。絶好宣言をされた。 そんな俺が陽川を助けて良いものかと。 むしろ、今ここで助けた事でさらに余計な反感を買ってしまうかもしれない。 ただでさえよくわからない状況なのに、下手に動くべきではないと考えてしまった。 そう、考えたら動くことが出来なかった。「……お前にとって、ストリーとは────推しとは、なんだ?」 俺の背後からそんな声がして、先ほどまであくびをしていたとは思えない、キリッとした顔の吉岡が陽川と三人組の間に割って入った。「はあ?なんだよお前。お前に用はないからさっさと散れよ!」「そ、そうだ」「どけよ!」 陽川の手を掴んでいる男もといアポトーシスさんが威嚇のように怒鳴り散らすが、吉岡はそれを意にも介さない。 吉岡は陽川の事を掴んでいるアポトーシスさんの手を掴み、そして振り払った。「……けんちゃん」  「お前っ!何すんだよ!?」 振り払われた側のアポトーシスさんはガナリ声を上げ、吉岡に歩み寄る。「推しって言うのはさ、とても尊いもので、傷つけたりするもんじゃねえよな?愛でて愛でて、決して見返りは求めない。俺はそう思うんだよ。同推しを持つものとして、お前はどう思う?」 怯む様子は全く見せずに、吉岡は理路整然と言葉を並び立てる。 吉岡が何を言っているのかが俺にはよくわからなかったけれど、三人組がたじろいでいるのはわかった。 三人組はそれぞれ顔を見合わせ、何か言いたげな様子。 陽川の腕を掴んだ男、もといアポトーシスさんは一歩前に出て口をワナワナと動かすが、うまく言葉が出てこないようだった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-16
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34話

「ここまで来りゃ大丈夫だろ」 吉岡がそう言って入った公園には既視感があった。 それもそのはず。滝沢といざこざのあったあの公園だったのだ。 これは偶然ではなく必然とも言える。 三人は幼馴染で家も近い。 陽川の家へ向かえば必然と、矢野さんの家へと近づく事にもなる。 矢野さんの家付近で滝沢がストーキング行為をしていた時に訪れる事になった公園も……と言うことだ。 それはさておき……「行こう」 エモい光景が目の前で繰り広げられている。 吉岡が陽川の手を離した後、矢野さんは元気のない陽川の手を取り、励ましながらここまで歩いてきた。 なんとも天使で健気な、友達思いな矢野さんらしい行動だと思った。 陽川は矢野さんに促されるままに公園に入って行った。 俺もその後に続く。 矢野さんは隅の方にある年期の入った木製のベンチに近づき、そこに陽川を座らせ、その横に自らも座った。 両脇は空いていたけれど、なんだか座りづらくて俺は二人の正面に立った。 吉岡は落ち着かないの事があるのか、少し公園内をフラフラと歩いたあと、俺の横に立った。 そして、みんなの視線が陽川に注がれていた。 陽川の家に直行せずにここにやってきたのは、陽川本人たっての希望だ。 付き合ってくれた俺達に、話さなければならない事があると、か細い声で告げたのだ。 そんなことよりも家に早く送り届けたほうが良いのではないか、とも思ったのだけれど、陽川の様子をみたら否定する事はできなかったのだ。 なんとなく、陽川がこれから俺達に告げようとしている事はわかるような気がした。 今朝から起こっている事、現在の状況、陽川の態度から見れば推理するのは容易な事だ。 きっと、陽川が告白しようとしている内容に俺を除く二人も気がついているはずで、俺と同じく陽川が口を開くのを待っているだけの状況だ。「あのね……」 俯いていた陽川が突如口を開き、俺達三人を順に見ると、決心を付けるように、ひとつ大きく頷いてから続きの言葉を絞り出すように言った。「……実は、今朝から騒がれていた……ストリーの正体は────私なの」 やはりと、いった内容だった。 そうなのではないかと考えながらここまで歩いてきた、内容そのままだった。 矢野さんも感づいていたようで、優しく微笑みながら陽川の頭をよしよしと撫でる。 なんてエモい光景
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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35話

 陽川は、矢野さんの体に隠れるように体を埋めた。 陽川のスレンダーな体が小さく震えているのが、見ているだけでわかった。 緊急事態にも関わらず、相変わらず吉岡は頭を抱えて念仏を繰り返しているだけ。肝心な時に役に立たないタイプだなこいつは。 本当に不審者が現れたのならば、蹴りでも入れて正気に戻す所だが、俺にとっては好都合だった。 今、俺たちの前に現れた不審者には見覚えがあった。 というか、そんなやつが世の中にゴロゴロいてくれたら困る。 あの背格好。そして、あの日と全く同じ服装に、俺はなぜか安堵感を覚えていた。「大丈夫。姫の事は私が守るから」 こんな時でも矢野さんは健気に陽川の事を気づかっている。 きっと自分だって怖いはずなのに。 普通に考えたら、陽川の事を追ってやってきた不審者だと、そう思うはずなのに。 ひとまず彼女たちの解釈は置いておくとして、この場で不審者の正体に気がついているのは俺だけ。「桐生君。姫の事頼める?」 普段とは違う、糸がピンと張り詰めたような緊張感を帯びた声色で矢野さんがつぶやく。 状況的に、矢野さんが不審者を取り押さえるか、追い払おうとしていることは明白だった。 もし、そうなればどんな事が起こるだろう…… 矢野さんがジリジリと近づいただけで、不審者はきっと、あの日のように逃げ出す。 しかし、どんくさいアイツのことだ。きっと、けっ躓いて、五メートルもしないうちに顔面からアスファルトにダイブするはずだ。 そうなれば、正体を看破され、なんやかんやいちゃもんをつけられて、今回の情報流出の責任をすべて負わされる可能性だってある。 ……ある、と言うか極めて高いと言えるだろう。 今まで矢野さんにしてきてしまった事の報い。そして、矢野さん、陽川にはよく思われていない事、それを加味して考えれば、必然だと言える。 矢野さんは「大丈夫だよ」と声をかけベンチに震える陽川を残し、一人立ち上がる。 相手が相手で無ければ友達思いで、勇敢だなと惚れ直していた所だろうが、俺の中では焦りが勝っていた。 このまま矢野さんを行かせてしまえば、不器用な美少女の願いは、永遠に叶わぬものになってしまうだろう。 ジリジリと矢野さんは進んでいき、不審者の五メートルほど手前で止まると声をかけた。「あなた、もしかして姫への付きまとい?そういうのはとても
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-18
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36話

 決して*追いつかないスピード*で不審者を追いかける。 あいつと追いかけっこみたいな事をするのもこれで何度目だっけな。 だから、力加減はわきまえているつもりだ。 三人から見られる可能性が低い場所まで行ったら呼び止めれば良い。そう思って追いかけていた。 右へ左へ、不審者は蛇行するように路地を曲がって行くが、俺もその後を続く。 なんやかんや結構走って、不審者と俺は気がついたら河川の横に作られた舗装路の上に居た。 額にうっすらと汗が浮かんできている。厚着で走っている不審者さんはさぞ汗だくになってしまっている事だろう。 一応振り返って確認をしてみたけれど、三人のうちの誰かが俺達の事を追ってきているような気配は無かった。 そろそろ頃合いだ。 前方五メートル程、前を走る不審者に声をかけた。「滝沢。もういいぞ、止まれ」「……」 振り返りもしなければ、返事が返って来ることもない。しかも滝沢が止まる気配はない。 聞こえなかったのかと思ってさっきより大きな声でもう一度「滝沢。止まれって!」と声をかけた。 走りながら大声を上げるのってなかなかしんどい。 こんな時に考えることでもないかもしれないけれど、練習の前後に足並みを揃えて掛け声をかけ、ランニングをする野球部は凄いなと感心をした。 今度は間違えなく聞こえていたと思う。 その証拠に俺が声をかけた直後、滝沢は走るスピードをあげた。 それは明らかにオーバーペースで、この先に待っているものがなんなのか、簡単に想像ができた。 俺は滝沢を追い越すくらいの気持ちでペースをあげ、横に並んだ。 次の瞬間、滝沢の足がもつれ、コンクリートの床に向かって顔から倒れていく。 まったく。本当にこいつはしょうがない奴だ。 体が傾いた滝沢を無理やりに抱き寄せると、そのままの勢いで盛り土の堤防に倒れ込んだ。 そのままゴロゴロと転がって、坂の終着点でようやく止まった。「イテテテ。大丈夫か?」 かなりの衝撃があったけれど、人体の中では比較的防御力の高い背中で受け止められた事、舗装されていない雑草の生い茂った部分に倒れ込んだことが幸いしてか、怪我をする事は免れたみたいだ。 俺の上に跨るようにして体を起こした滝沢は、俯いて決して顔を上げようとしない。 転がった時に帽子は飛んでいってしまったのだろう。 髪はボサボサで、某
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-20
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37話

「はー、今日は一日疲れた……」  家の玄関をくぐった時、無意識に独り言が口をついていた。 なんせ、朝からいろいろあったのだ。仕方がない。 滝沢を待ち構えていたら禁止していた手紙を矢野さんの机にまた忍ばせようとしていたり、それを注意しようと人気のない場所に連れて行ったら矢野さんと陽川の内緒話を聞いてしまったり。 それがまた俺に関係している噂話で、滝沢と俺が付き合っているのではないかみたいな疑惑で、結局俺も連れ出されて問いただされて、間違った答えをしたら、それを滝沢が聞いていて何故か泣きながら逃げていったり。 そして極めつけに、ストリーの正体が陽川だったり、滝沢がまた変装して俺達の前に現れたり。それを捕まえていさめて家まで送り届けて……本当にいろいろあった。 今まで生きてきた十五年間で1番濃い一日だったかもしれない。『しれない』ではないな。間違いなく濃い一日だ。自分で自分を褒めてあげたい気分だね。 なにせ、まだ終わってないのだから……。靴箱にもたれて少しうなだれていると視界の端に人影が見えた。 玄関からまっすぐ続く廊下の先の扉からヒョイっと顔を出したのは母さんだった。「おかえりなさい。って、あら、そんなに制服汚しちゃって。明日の朝までに乾くように洗っておくから、脱いだら洗面所に置いておきなさい。お風呂も沸いてるから先にお風呂入っちゃいなさい」「ただいま。うん。わかった」 滝沢を河川敷で受け止めた時だな。 雑草が生えているとはいえ、土の斜面を転がったのだ。汚れてしまうのも無理はない。 そのまま框《かまち》を上がろうとすると、母さんに制止された。「あっ、そのままそこで全部脱いじゃいなさい。家の中が土で汚れちゃうから」「はーい」「『はーい』じゃないでしょ。返事は『はい』!」「はい。わかりました」「よろしい。ご飯も出来てるから、ちゃっちゃっとお風呂入ってきなさい。」「わかった」 言われるがままに下着を残して服を脱いでいると、母さんがビニール袋を持ってきて俺に手渡した。「全部その中に入れておいて」「はい」 言われるがままに袋の中に制服を詰めると、今度こそ家に上がり、まっすぐにお風呂場を目指した。 言われた通りに洗面台に袋を置いて、風呂場に入室した。 シャワーで体を一通り流してから、ちょうどよい温度に沸いている湯船に浸かった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-21
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38話

 風呂から上がり、夕食を食べ終えてから自室へ戻ると、ベットに飛び込み、すぐに鞄からスマホを取り出した。 秋斗と共に写真に写っていた少女の正体について聞き出さなければならない。 しかし、件のメッセージを開く前に、新着のメッセージが入っている事に気がついた。 通知は三つ。 ストリーグループでのメッセージ、滝沢からのメッセージ、そして空目をしたのかと目を見張ってしまったのは、矢野さん個人からのメッセージ。 何から開くべきか迷ったけれど、楽しみは後に取っておく事にした。 まず開くべきはストリーグループのメッセージだろう。 そこに書かれていたのは、助けて貰った事についてお礼を述べる陽川からのメッセージだった。『今日は迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさい。明日からは、一人で解決できるように努力するから。』 なんとも陽川らしいメッセージだった。 凛としていて、強い。しかし、これは彼女の本心なのだろうか? ファンに追われてかなり弱ってしまった姿を思い浮かべて、助けるべきだと思った。けれど、彼女に俺は好かれていない。 俺に助けられる事を陽川が望むだろうか? 今回協力する事になったのだって、なし崩しに吉岡に助けを求めたオマケみたいなもの。 とは言え、既読をつけてしまった手前、スルーするわけには行かないよな。  そこまで考えて、陽川のメッセージにはOKの指の絵文字だけを送り、そっとグループメッセージを閉じた。 一つため息を吐き出してから次に開いたのは、滝沢からのメッセージ。『今日は助けてくれてありがとう。とっても、嬉しかったな』 お礼を言われるような事をしただろうかと疑問に思いながらも、こっちにはダブルサムズアップの絵文字を送信した。 すぐに既読がつくと、滝沢からもサムズアップの絵文字が返ってきた。 よくも悪くも裏表の無いやつだ。 そして、最後に満を持して、意を決して、覚悟を決めて矢野さんからのメッセージを開く。 どんな事が書かれているのか想像もつかない。 ポワポワした矢野さんだから、キツイことを言われたりはしないだろうけど、万が一って事があるからなと予防線を張りながら画面をタップ。 恐る恐る覗き込み、最悪の事態は免れたようでホッと肩を撫で下ろす。『グループメッセージの欄から勝手に個人宛にメッセージ送ってごめんね。これ私のだから登
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-22
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39話

 翌早。 だいたい六時四十五分くらい。 俺は一人、早朝の公園のベンチに座っている。 待ち合わせの時間まで約四十五分。 別に楽しみすぎてこんな早くにやってきたわけではない…… ……嘘です。矢野さんに呼び出されたのが嬉しすぎて、凄く早く目が覚めて、部屋にいてもソワソワして落ち着かないから早く家を出てきたわけで。 母さんにも『こんな早く起きてくるなんて珍しいね。今日は雨でも降るのかしら?』なんて言われた。 実際の所、少し雲行きも怪しかった。もし今日雨が降ることがあれば俺のせいだと思う。 今のうちに周辺住民の家を一軒一軒チャイムを押して回って、謝っておこうかと思えてしまうほど気分が良い。 ……とは思いながらも、少し後ろめたさも感じていた。 一度は矢野さんに振られた身だ。 吉岡があんなだから俺に声がかかっただけであって、矢野さんにとっても、陽川にとっても本意ではないであろう事は明らかだ。 その証拠に、陽川は矢野さんに俺に近づかないように警告までしていた訳で。 それは単に、陽川の勘違いではあるのだけれど、きっと、矢野さん本人だって、なるべくなら俺とは関わりたくはないはずなのだ。 暗に俺も、振られたあの日以降は、なるべく関わらないようにはしていた。 俺自身気まずいってのもあったのだけれど、憧れていた人の意図を汲んであげるのも、振られた側の人間ができる最大限の配慮だとは思う。 振られても諦めないから!みたいなアニメやドラマにあるようなノリは、イケメンがやるから盛り上がるのであって、自他ともに認める普通オブ普通の俺がやれば気持ち悪がられるだけなのだ。 考えている事がチグハグかもしれないが、今の自分はそう考えていた。「そ、そうだよ。これは滝沢のためだ!滝沢と矢野さんをくっつける為にまずは俺が仲良くなるだけなんだ!」 思わず気持ちを誤魔化す為の、決意の言葉が口からあふれ出ていた。 自分が思ったよりも大きな声が出てしまったせいか、公園の隅の方で餌を食べていた地域猫が逃げていった。 ご、ごめんよ。別に君を驚かすために大声を出したわけじゃないんだ。ただ気持ちを落ち着かせる為に…… 半身の体勢で猫の逃げていった公園の入り口の方向に視線を向けると、そこには天使が立っていた。 薄っすらと笑顔を浮かべて、ヒラヒラと手を振る天使。 そう、矢野さんだ。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-23
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40話

 彼女の口から放たれた言葉の意味は、瞬時には理解できなかった。『私がいつ桐生くんの事を振ったのかな?』 その言葉が、頭の中で幾度となく反響していた。 一学期が終わるあの日、俺は間違いなく振られた。 それも、完膚なきまでに。 だから俺は、新学期からは矢野さんと距離を置くようにしていたのに、ここにきて彼女は何を言い出すのだろうか。「いや、だって、お祭りに誘った時、断られたじゃん」 あれは一学期が終わる、終業式の日だった。 各々が一学期という節目の終わりの日を慌ただしく過ごしていた。 矢野さんのナイト様。陽川も例に漏れず、あの日は矢野さんと一緒に行動をしていなかった。 千載一遇のチャンスだと思った。 俺の住む地域には、意中の相手を、あるお祭りに誘う伝統みたいなものがある。 一人で居る矢野さんを見て、覚悟を決めてお祭りに誘う事を決心した。 ここらの地域の学生であるならお祭りに誘われる=告白と取れる訳で、ここから先は言わなくても分かると思う。 終業式の日。ホームルームが終わった後、矢野さんを校舎裏へ呼び出した。 そして、天使を目の前にして、心拍数アゲアゲ、足元はフワフワ、俺がいるのは本当にこの世なのか、自分の体なのかと疑ってしまうほどの操縦性の悪さを感じながらもしっかりと言った。『もし、俺なんかで良かったら、来月の盆踊り……一緒にいってくれない?』 天使、もとい矢野さんは、左手の人さし指を頬に当てて、少し考えるような仕草を見せた後、こう告げた。『ごめんなさい』『ごめんなさい』その言葉を聞いた瞬間に俺の頭の中は真っ白になった。 その後も優しい矢野さんは、俺をフォローするような事を言っていたような気がするけれど、耳を素通りするばかりで、頭には全く入ってこなかった。 そして、気がついた時には、自室のベッドの上にいた。 どうやって帰ってきたのかも定かではなかった。 あの日の事を思い出すだけで、今だに茫然自失。腑抜け人間になってしまうからなるべく考えないようにしていたのに。「桐生くん……?」 名前を呼ばれて回想世界から現世に戻ってくると、心配そうに矢野さんが俺の顔を覗き込んでいた。「あー、ごめん」「お祭り……。それと振る事がどう関係あるの?」 全く悪びれる様子もなく、本当にわからないといった様子で語る矢野さん。 でも優しい彼女
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-24
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