月子は、こんなに早くバレてしまうとは思ってもいなかった。咄嗟に隼人の反応が気になって仕方がなく、思わず彼の表情を窺ったが変わった様子がないのを見て、ようやく胸を撫でおろした。しかし、よく考えてみると、月子は何かおかしいことに気がついた。「静真には会っていません」電話で話しただけだ。「お前たちはデパートの外にいて、静真は車の中に。お前はカフェの入り口にいた」隼人がここまで調べ上げていたことに、月子は驚いた。そして、静真が急に洵のことを「心配」して電話してきた理由も、ようやく理解できた。どうやら、自分と鳴が一緒にいるところを見られて、鳴を見て洵のことを思い出したらしい。月子は事情を知らず、静真が改心したのだと思っていたが、本当は自分の思い違いで、今となっては、それが虫唾が走るほど気分が悪かった。隼人は、月子の反応をずっと観察していた。静真の話になると、彼女の意識がどこかへ行ってしまい、頭の中は静真のことでいっぱいになっているようだった。自分は目の前にいるのに、他の男のことを考えている。静真のこととなると、月子が彼を思い出すのは当然のことだと、隼人は理性的に理解しようとしていた。しかし、心の奥底では、それを受け入れたくなかった。月子は、周囲の空気が重くなったことに気づいた。隼人の表情に変化はなかったが、静真の話になると、彼はいつも機嫌が悪くなることを、月子は知っていた。月子は、彼が不機嫌になるのを見るのが嫌だった。「彼には会っていません。ただ電話がかかってきただけです」「どんな話をしたんだ?なぜ静真が急に俺のことを調べる気になったんだ?」月子は単刀直入に答えるのではなく、まず言い訳を用意した。「社長、前に仰っていましたよね?静真か天音が私を困らせたら、あなたの力をお借りしても構わないって」「ああ」月子はそれを聞いて安心した。しかし、静真の話になると、表情が少し険しくなった。「洵の会社のトラブルを解決してやると言われたんだけど、断りました。でも、彼のことが気に食わなくて、あなたの名前を……」月子は隼人の目を見て言った。「持ち出したんです。『鷹司社長が助けてくれるから、あなたなんて必要ない』って、言ってやりました。あなたの名前を借りて、利用させてもらったんです」彼女は戦果を報告するかのように意気揚々に
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