でも、彩乃は月子にとって特別な存在だった。月子は誰かに頼ろうと思ったことはなかった。しかし、彩乃のためなら、すべてを投げ出す覚悟があった。そして、彼女には彩乃を支えられる力があった。二人はいつも互いを守り、何があっても、互いの味方でい続るのだ。「いつか歳をとったら、二人で世界一周旅行に行こうね」月子は言った。「いいね。ずっと一緒にいよう」月子と彩乃は、学生時代のようにお酒を飲みながら、未来について語り合った。今の二人はあの頃とは違っていた。より成熟し、自信に満ち溢れ、未来は目の前に広がっていた。……どれくらい飲んだだろうか。月子は隼人からの電話を受けた。「着いた」という男の声が聞こえた。月子のお酒の強さは、母親が亡くなってから鍛えられたもので、そこそこ強かった。しかし、今日はさすがに酔いが回っていたため、迎えに来てくれるのはありがたいと思った。「16号室にいます」月子は答えた。彩乃も酔っていた。「誰と電話してたの?」月子は電話を切り、「鷹司社長」と答えた。「迎えに来るの?」「うん。先にあなたを送ってもらう」「あなたはすごいわね」彩乃は月子の顔に触れながら言った。「鷹司社長を運転手代わりにするなんて」ノックの音がした。「来た」月子は彩乃に変なことを言わないようにと釘を刺したあと、「一緒に行こう」と言った。月子と彩乃は酒癖が悪くはなく、酔っても暴れたりはしない。ただ、普段通りの冴えた目つきではなく、思考も少し鈍っていた。ドアが開くと、全身黒づくめの隼人が立っていた。髪を後ろに流し、滑らかな額、そして彫りの深い目鼻立ち、黒いシャツ、黒いネクタイ、黒いスーツ、黒い革靴と、まさに全身黒一色だった。隼人はスタイル抜群で、オーダーメイドのスーツを着こなし、広い肩、引き締まったウエスト、そして長い脚が際立っていた。月子は少し頭がぼーっとして、まるでホストにでも出会ったのかと思った。しかし、彼が隼人だと分かると、余計な考えを振り払った。今日の隼人は、いつも以上に隙がなく、禁欲的で、近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。「先に彩乃を送ってくれませんか?」月子は彼を見つめ、瞬きしながら言った。隼人は30分で到着し、1時間半待っても月子から連絡がなかったので、こちらから電話をかけたのだ。月子
Read more