月子は、大切な人が傷つけられると、我を忘れるほど取り乱してしまう。だから今、本気で怒っていた。その傷口を改めて目の当たりにした彼女の顔は、見る見るうちに青ざめていった。誰に言われるでもなく、南はすぐに救急箱を用意させた。隼人がソファに座って傷の手当てを受けている間、月子も手伝おうとした。隼人は、彼女の瞳に宿る心配の色を見て、それを断った。「月子、大丈夫だ。デザートでも食べていてくれ。すぐに終わるから」「あなたのそばにいたい」月子はそこを動こうとしなかった。彼女は、誰かが怪我をしたり病気になったりすると、とても心配になる性分だった。それに、辛い時に誰かがそばにいてくれれば、きっと心強いはずだと思っていたから。隼人は少し固まったが、やがてため息をついた。「わかった」ここにいるかかりつけの医師は手際がよく、処置はテキパキと進んだ。傷は見た目ほど深くなく、縫う必要もなかった。薬を塗って数日安静にすれば、すぐに良くなるそうだ。「傷が濡れないようにしてください。海に入るのはもってのほかです」月子はそれを聞いてようやく安堵し、医師を見送った。甲斐甲斐しく立ち回る月子を見て、隼人は無意識に唇をきつく結んだ。腕の傷など、大したことではなかった。痛みすら感じない。ただ、月子の反応に、彼は思わず罪悪感と自己嫌悪という感情に駆られてしまうのだ。ついさっき、自分はあの状況を利用して……そう、衝動的に抑えられずにいたのだ。正直なところ、隼人はこの恋愛に自信を持てていない。しかも、静真はいつ爆発するかわからない時限爆弾のような存在だ。月子が静真を嫌う最大の理由は、その冷酷さにある。しかし、もし彼が変わってしまったら?隼人は幼い頃から静真をよく知っている。それと同様に静真もまた彼の気性を熟知しているのだ。静真が月子に「愛している」と告げた時、隼人はそれが本心だと分かった。確信するのに、証拠など必要なかった。それはまるで、静真が直感だけで、隼人が祖父に愛されるために「聞き分けの良い子」を演じられると見抜いたのと同じだった。幼い頃、両親に守られず、劣悪な環境で育った彼は、安心感を知らなかった。唯一の拠り所である祖父の愛情を得るために、必死だった。ありのままの自分でいることも、感情をむき出しにすることも、許されなかった。J市
Read more