朝はホテルのバイキングを利用した。冬凪は、夜中あれだけ食べたのに、大盛マグロ丼とオムライス並みに盛ったスクランブルエッグと小松菜のお味噌汁にプルーンジュース。和食なのか洋食なのか分からないメニューで朝から爆食する気満々。それに付き合う気はないから、あたしはトーストにスクランブルエッグとサラダ。それとカフェオレ(シナモンで!)と軽めに済ます。食べ終えて荷物を揃え駅前に出てバスを待つ。 「町役場まで」〈♪ゴリゴリーン〉 通勤時間なのに乗客が少ないのは今日が土曜日だからだった。あたしたちの他は、若いのから中年までサバゲースタイルのオタク風な男の人たちだった。その人たちの間を通って冬凪とあたしは出口近くの席に座った。あたしは車窓を流れる辻沢の旧町の風景を見ながら、昨晩枕元ではなく足元に出た黒髪の女性のことを考えた。あの時まゆまゆとはっきり言っていたから、あれはやっぱりミワさんだったのだ。でもどうしてミワさんがああいう現れ方をするのか見当もつかない。そのことを冬凪に話そうと思って横を見ると、抱えた登山用リュックに頭をもたげて居眠りをしていた。朝食をお腹いっぱい食べたせいだろうか。いつも気を張っている冬凪には珍しいことだ。 このバスは青墓がある郊外へは行かず、町役場と辻沢駅とを往復するシャトルバスだ。サバゲースタイルの人たちはどこへ行くんだろうと思って見ていると話し声が聞こえて来た。 「血の団結式ってなんだよ」 「スレイヤー・Rの参加認定式だろ」 「そんなの分かってる。俺が言いたいのは」 「ゲームに参戦するだけのためにわざわざ役場に呼び出して、大げさじゃね、ってことだろ?」 「そう。大げさだ。何か裏があるにちがいない」 「何の?」 「人死にもあるという非合法なゲームだから辻沢町も口外されたら困るわけだ」 「身代わりを取られるのか」 「そんなことに何の意味がある。人の口に戸は立てられんのだぞ。形代に魂を
Terakhir Diperbarui : 2025-08-31 Baca selengkapnya