All Chapters of 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~: Chapter 91 - Chapter 100

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4 新しい1歩

最初の音が鳴った瞬間に体がキュッとなった。この曲……今の祥太君の気持ちを素直に表しているんだろう。とても優しい音色。きっと、心の乱れがない状態で作ったんだと思う。1音1音があまりにも綺麗で、素敵な曲に引き込まれる。深く、さらに深く……魅力溢れる祥太君の世界に――最後の音が鳴り止み、余韻をほんの少し味わってから、拍手がおこった。文都君、颯君、私……3人の感動は最高潮に達した。やはり、ピアノのもつ力は凄まじい。もっとずっと聴いていたかったけれど、祥太君は椅子から立ち上がった。「すごく良かった。祥太兄、めっちゃカッコイイ」「本当?ありがとう、颯」「祥太君には、恐ろしい程の才能があるんですね。全く音楽がわからない僕の心にもすごく響きました。本当にすごいです。絶対にピアノ……続けて下さい」優しい文都君の目には、少し涙が潤んでいた。「そうだよ。祥太君、絶対ピアノ続けてね。素敵過ぎて、私、演奏中体が固まっちゃってたよ」「いいな。結姉にそんなふうに言われて」「いいだろ~?」「ほんと、祥太兄はズルいよな~」「ズルいですね」心の奥底から湧き上がるような感動に、私も涙を我慢することができなかった。祥太君のピアノには人の心を魅了し、虜にする力がある。何度聴いてもその感動が衰えることはない。まるで魔法にでもかかったみたいに――「またみんなでコンサートに来て。そしたら、もっともっと良い作品を見せれると思うから。みんながいたら……心強いよ」「行きたいです。僕には無い魅力がある祥太君から学ぶものは本当に多いです」「俺も、祥太兄の世界にどっぷり浸かりたい。何か……心が洗われる気がする」「2人とも褒め過ぎだよ。俺も2人からはいつも何かを学ばせてもらってる。すごく刺激になっているよ。作曲には刺激が必要だからね」「お役に立ててるなら嬉しいです」真面目な文都君の返事。祥太君は笑顔でうなづいた。みんながそれぞれに、それぞれの人生に何らかの影響を与えながら、良い刺激を受けあっている。同居人として偶然集まったメンバーが、ここまで仲良くなれたことに改めて
last updateLast Updated : 2025-08-22
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1 夢の実現に向かって

数日後、私はキチンと計画を立て、信頼できるパパの知り合いの業者さんに連絡を入れた。丁寧に相談に乗ってくれ、パパが残してくれた大事な大事な遺産で、別荘をペンションに改築することにした。きっと、パパも喜んでくれると信じている。その日からは、毎日が忙しく、様々なことをやりこなすのに精一杯だった。それでも、みんなが支えてくれるおかげで、元気に頑張れた。オープンは来年の春に決まり、今からすごく待ち遠しい。内装も、業者さんと納得がいくまで何度も打ち合わせをして、なるべく理想に近づけられるように話し合った。颯君は、ペンションを宣伝するためのホームページを立ち上げ、いろいろアップしてくれている。その出来栄えはプロ並だ。パソコンまで得意で、颯君は本当に多才だ。慌ただしく過ぎる忙しい日々だけど、全てに感謝しかなくて、大袈裟だけど「幸せ」とはこういうことなんだと、心から思えていた。3人もオープンが楽しみらしく、積極的にいろいろなことに関わってくれ、気がつけばみんながペンションのオーナーのような気分になっていた。私達は、たくさんのアイデアを出し合い、毎晩のように話し合った。みんなの若い感性には、いつも驚き、感動した。客層は全世代をターゲットにしているから、それこそ、様々な意見があると助かった。年齢の高いお客様に向けてのサービスは、お義母さんの意見がかなり参考になった。また、祥太君は、大学時代、経営学部だったのを最大限に発揮してくれた。ペンションの経営に興味を持ってくれ、秀才の頭脳をフル回転させてくれている。こんな心強い味方がいて助かったと、本気で頼りにしている。そして、内装に関しては、颯君のオシャレなセンスがかなり参考になった。お客様に出す料理も、細やかな気配りを取り入れながら一緒に考えてくれた。文都君は、勉強で忙しい中、雑用や買い物に付き合ってくれて……みんながそれぞれに手伝ってくれ、優しい気遣いの言葉もかけてもらえて、不思議と疲れはそれほど溜まらなかった。ストレスをほとんど感じずに前に進めているのは、明らかに彼らのおかげだった。1人では、間違いなく、ここまで上手くいかなかっただろう。
last updateLast Updated : 2025-08-23
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2 夢の実現に向かって

だから、感謝を込めて、私はみんなに提案した。オープンしてからのお手伝いは無償の代わりに、家賃は受け取らないことにした。同居人というより、一緒にペンションを経営する仲間としてそうしたかった。もちろん、ペンションの収入が安定したら、バイト代として払えるようになればいいなと思っている。申し訳ないと言ってくれていた3人には、結局、私が押し切る形で了承してもらった。それから私達は、オープンまで慌ただしくも待ち遠しい日々を過ごし、それぞれやるべき事にしっかりと取り組んだ。そして――寒い冬を越え、いよいよ待望のペンションオープンの日が目前に近づいた。今日まで、みんなでいろいろなことを乗り越えて頑張ってきた。まるでひとつのチームのように――山崎祥太君、25歳。一人っ子だったこともあり、お父さんの会社、日本を代表する大企業である山崎フーズを継ぐ身だった彼。だけれど、大好きなピアノを諦められなくて悩んでいた。でも、最近、とうとうお父さんとの話が決着したみたいだった。『俺、楽団を続けるよ。山崎フーズは父さんの弟、俺の叔父が継ぐことになったから。ものすごく優秀な人だから安心だよ。父さん、今度、俺の演奏を聴きたいって……やっと言ってくれたんだ』祥太君は、そう言いながら泣いていた。頬に流れた涙は、とてもキラキラして美しかった。祥太君、本当に……良かったね。私までものすごく嬉しい。これからは、楽団を続けながらも、ペンションの経営にも関わってくれるから、とても心強い。そしてまた、嬉しいことに、夜の食事の時、お客様にサービスでピアノを生演奏したいと提案してくれた。その申し出にはかなり驚き、申し訳無さも感じてしまった。だけれど、彼の思いは揺るがず、ぜひそうさせてほしいと言ってくれた。有名な楽団の彼がお客様の前でピアノを弾いてくれるなんて、本当に夢みたいだ。あの音色を間近で聴けるとなれば、必然的にお客様も増えるだろう。祥太君自身、かなり忙しい中ではあるけれど、経営的目線でピアノ演奏をやろうと言ってくれたに違いない。その提案には涙が出るくらい感謝した。
last updateLast Updated : 2025-08-23
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3 夢の実現に向かって

神田文都君、24歳。有名大学の医学部5年生になった文都君。いつもずっと真面目な頑張り屋さんで、本当に頭が下がる。続けていた英会話教室のバイトをオープンに合わせて辞めて、これからは、時間のある時には無料でお客様に英会話を教えてくれることになっている。これも文都君が申し出てくれたことだ。勉強しながらでは大変だろうけれど、ほんの少しだけでも役に立ちたいと、文都君は前向きになってくれている。とても人気の企画になりそうで、今からとても楽しみだ。文都君の思いにも感謝が溢れる。望月颯君、22歳。美大に通いながら画家を目指す彼。一緒に暮らす中で颯君が描き貯めた絵画と、今まで書いてきた絵画を合わせ、ペンションに飾りたいと言ってくれ、個展スペースができた。私がモデルになった絵もそこに飾られた。かなり恥ずかしいけれど、どうしても飾りたいと颯君に押し切られ。素敵な絵の数々、そこはまるで異世界のような素敵な空間になった。お客様も必ず足を止めて観てくれるに違いない。そして、スーパーのバイトは辞めて、私の料理をサブで手伝ってくれることになった。さらに手が空いた時には、お客様の似顔絵を描いてプレゼントしてくれるサービスを、颯君自身が考えてくれた。これも本当に喜んでもらえそうだ。3人が3人とも、何とか私を助けたいと本気で支えてくれているのが手に取るようにわかる。これでもかと、一生懸命試行錯誤しながら、どうしたらお客様に喜んで頂けるかを一緒に考え、悩んでくれた。言い争いもなく、お互いの意見を尊重しながら最後まで頑張ってくれ、そのおかげで、これ以上ない夢のようなサービスをお客様に提供できるようになった。想像もできなかったことが現実になり、正直、ここまでのクオリティでペンション経営に携われるなんて思いもしていなかった。オープン初日は、4組のお客様をお迎えする。ペンションの内装に関して、最初に同居人のために用意した5部屋と私の部屋を少しだけ改装して、そのままのコーディネートカラーで使用することにした。私の部屋は赤に変えた。嫌味のない、深い赤。深紅というのか……それはそれは素敵な部屋に生まれ変わった。6つのコーディネートカラーの部屋はそれぞれに個性があり、宿泊するお客様に必ず喜んでもらえるだろう。元々、みんなのために考えた部屋がこんな風に役立つなんて、何
last updateLast Updated : 2025-08-23
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4 夢の実現に向かって

そして1階は業者さんの見事な仕事のおかげで、大幅な改装をし、イメージ通りに仕上がった。キッチンがあったところをオシャレなレストランスペースにして、そこに新しいピアノを置いた。リビングは受付のあるロビーにして、お客様を迎えるための場所にした。どちらもかなりの広さがある。ロビーの一角に颯君の絵画を飾り、英会話教室や似顔絵コーナーもここで行う。十分なスペースがあるので、窮屈にならないように使ってもらえそうだ。1階の部屋は、お義母さんのお気に入りの部屋なので、そのまま使ってもらうことにした。嫌だとは思うけれど、自分から志願してくれた祥太君が、元の旦那の部屋に入ってもらうことになった。あとのみんなは、1階のその他の部屋をそれぞれ使うことに。そして、1番のメインはお風呂。考えに考え、庭に男女別の大浴場と露天風呂を作った。雨の日も濡れないようペンションの建物から直接行けるように、わざわざ通路を作り庭に出れるようにした。かなりの工事が必要だったけれど、とても広くて素晴らしいお風呂が出来上がって大満足だ。この前みんなで行った露天風呂がとても良かったので、イメージを膨らませ、日本風の庭園に仕上げた。目でも楽しんでもらえるような露天風呂にするために、周りの景色が殺風景にならないよう、費用もかけてかなりこだわった。あの気持ち良さを、うちのお客様にも味わってもらえるなら、とても嬉しい。また、庭には色とりどりの花々を植え、お客様の心を癒せるよう工夫した。そのための手入れは怠らないつもりだ。あと、部屋の掃除などは、有難いことにお義母さんが引き受けてくれた。もちろん私も手伝って、時々、業者さんにも入ってもらうことにした。みんなで考えたことがこんなにも素晴らしい形で実現できたことは、もはや奇跡に近い。
last updateLast Updated : 2025-08-24
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5 夢の実現に向かって

お義母さんも、お客様とのふれあいを楽しみにしてくれているようで、実は昔こういう仕事をしてみたいと思ったことがあったそうだ。それを聞いて、私まで嬉しくなった。準備万端。あとは4組のお客様をお迎えするだけ。何とも言えない緊張感と期待感。颯君が楽しいブログを作成してくれたおかげで、予約も順調に入っていた。しかもオープン前だというのに、取材をしたいとの申し出もあり、実際に記者の人が来てくれ、全てを見てもらった。人気のトラベル雑誌に取り上げてもらえたことと、颯君の宣伝のおかげで、有り難いことに、一気に半年先まで予約が埋まってしまった。きっと、イケメン3人の写真が多数掲載され、ピアノに英会話に似顔絵と、企画も紹介してもらえたからだと思う。あっという間に噂が広まり、想像以上の反響に驚きを隠せなかった。企業の方々からスポンサー契約の話もあり、資金援助なども有難い申し出だったけれど、全て自分達で、自分達の好きなことを好きなように……ただお客様に喜んで頂くことだけを考えたいとの思いで、全てお断りした。部屋数を増やす話もあったけれど、それも断った。部屋数は、絶対に6部屋と決めていたから。お客様には十分なおもてなしをして満足して帰ってもらいたい。それをポリシーに、私達はペンション経営をしていこうと話し合っていた。そして、迎えたオープン初日――4組のお客様が宿泊する日がやってきた。文都君と颯君は大学が休みだったから良かったけれど、祥太君はわざわざ楽団の練習を休んでくれた。お義母さんはあたふたして、ずっとソワソワしている。なんと、今日も雑誌の取材が入ってくれ、私達の特集を組んでくれることになっているせいもあり、私自身もかなり緊張していた。
last updateLast Updated : 2025-08-24
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1 お客様との幸せな1日

本当に……いよいよ始まる。新しい私の人生がここからスタートする。大きな玄関を開けて入って来られたお客様。心臓がドキドキしている。「いらっしゃいませ」まずは3人のイケメン君達がお出迎えした。最初の記念すべきお客様は、女性の2人組。いきなりのイケメンのお出迎えに、早速、キャーキャー言って楽しんでくれているようだった。私は、ロビーで受付を行った。お客様を最上の笑顔でお迎えする。必ず大満足して楽しんでいただくとの強い思いでいっぱいだった。「ようこそいらっしゃいました。本日は本当にありがとうございます」「お世話になります。あの、私達、ブログを見てすごく楽しみにしてました」颯君のブログ……本当に嬉しい言葉をいただいた。「ありがとうございます。楽しみにしていただいて、とても嬉しいです。ブログを見てどの企画に興味を持って頂きましたか?」「私は英会話です。文都君……ですよね?ブログで見てすぐにファンになりました。アメリカで過ごして、発音もネイティブみたいだって。私、海外旅行が趣味なんです。だから、いろいろ教えてもらいたいなって。すごく楽しみにしてます」文都君のファンのお客様だ。ブログだけでファンを作れるんだから、本当にすごい。「ありがとうございます。英会話、ぜひ楽しんで学んでくださいね」「あっ、私は……祥太君のピアノが楽しみで。楽団のコンサート、行ったことがあるんです。なかなかチケットが取れないのに2回も行けていいなって、友達に言われたりして。でも、まさか祥太君に目の前で会えるなんて夢みたいで……。今、出迎えてもらって、心臓が爆発しそうでした。本当にイケメンだし、こんな近くでピアノが聴けるなんて幸せすぎます。もう、すぐに予約しました」祥太君と、その祥太君が弾くピアノ……目の前で聴けば、またコンサートとは違う感動が溢れてくる。それを味わえるお客様は間違いなくラッキーだと私も思う。「それは本当にありがとうございます。お2人の大切なお時間が最高のものになりますよう、私達一同、精一杯おもてなしさせて頂きます。どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい」私はお客様にお礼を言って、お義母さんが部屋に案内してくれた。さっきの緊張は何処へやら、慣れた感じで、さすがお義母さんだ。次のお客様は4名様の家族連れ。ベッドは1部屋に2台なので、4名様の場合は2部
last updateLast Updated : 2025-08-25
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2 お客様との幸せな1日

「露天風呂に入りたい!お風呂楽しみ」「私はご飯が楽しみ~」と、お子様も嬉しそうに言葉を付け足してくれた。「ありがとうございます。露天風呂も日本庭園をイメージしてゆっくりと楽しんでいただけます。もちろん、お食事も皆様に喜んでいただけるように心を込めて作らせていただきますので」「それは楽しみだわ。ここを予約して良かったです。本当に素敵だわ」ペンションを褒めてもらって、俄然やる気が湧いてきた。別荘を愛していたパパも天国で喜んでることだろう。期待を裏切らないようにしっかりとおもてなししたいと思った。今日のご予約は、家族連れが2組、女性2人が1組、カップルが1組だ。それで満室。残りのお客様も到着し、全員が揃った。カップルの2人は、颯君の絵に興味があったようだ。「雑誌で見たんですけど、彼女と2人の似顔絵を描いてもらいたくて。美大の学生さんなんですよね」「はい、そうなんです。すごく素敵な絵を描いてくれますよ、センス抜群です。楽しみにしていて下さいね」「楽しみ~。さっき迎えてくれた人達、3人ともすごくイケメンでびっくりしました。あんなカッコイイ人達がいるなんてびっくりです。モデルさんなんですか?」かなりテンションが上がっている彼女さん。そんな姿を見て、彼氏さんは苦笑い。「いいえ。彼らはモデルではないんですよ。でも、見た目だけじゃなくて性格もすごく良いんですよ」「え~、イケメンで性格良いってヤバくないですか?」「お前な、さっきからテンション上がり過ぎだろ?彼氏を前によく言うよな~」「だって本当に超イケメンなんだもん。あんなカッコ良い人達、見た事ないよ。しかも3人もだよ。何だかドキドキしてきちゃった」「お前なぁ」そう言いながらも笑い合っている2人が、とても仲良しで素敵だ。ちょっと、うらやましい……大好きな人と2人きりの旅行だなんて、私にはなかったことだ。でも、いつか、そういう旅行をしてみたい……夢のまた夢なのかも知れないけれど。今日、ここに来てくれたお客様……男性、女性、お子様達、いろいろなお客様との会話はとても新鮮で楽しかった。私達は、ドキドキとワクワク、そして、少しの緊張感を持って、笑顔でお客様に温かいおもてなしを開始した。それぞれ、最高の思い出作りのお手伝いができるようにと張り切っていた。
last updateLast Updated : 2025-08-25
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3 お客様との幸せな1日

家族連れのお客様は、まずお風呂を楽しんでいた。中から、直接外のお風呂に行けるようにして正解だった。雨の日も濡れないで行けるし、すごく便利でお客様も喜んでくれた。こだわって作ったお風呂でのひとときは、きっと1日の疲れを癒してくれるだろう。そして、2人組の女性のお客様は、英会話教室に参加していた。2人とも文都君に釘付けで目がキラキラしている。イケメンが英語を話すだけで、女子への破壊力は抜群なようだ。確かに私も、文都君が英語で話す姿にはいつもキュンとするけれど……ネイティブな発音がカッコよくて、聞き惚れてしまう。前のめりになって聞き入る女性達が可愛い。カップルのお客様は似顔絵コーナーに。颯君の絵の上手さにすごく感激していた。おまけに人懐っこい颯君はすぐにみんなと仲良くなって、お客様を和ませてくれた。彼女さんの方が、積極的に颯君に話しかけている。彼氏さん、置いてけぼりだけど大丈夫?と、言いたくなる。でも、彼氏さんも一緒になって笑ってくれているから大丈夫だろう。そしていよいよ夕食の時間になった。レストランにはたくさんのお客様が集まっている。なるべくお待たせしないよう、お義母さんと颯君が手伝ってくれ、手際よくテーブルに料理を運んだ。颯君の盛り付けのセンスは抜群。まるでお皿に絵を描いているみたいだ。お皿の上の芸術――そして、食事の始まりと同時に、最高に素敵なピアノの音色が響き始めた。お客様達は、そのピアノに聞き惚れているようだった。食事と会話の邪魔をしないよう、優しく繊細なゆったりとしたメロディの曲を選んで弾いてくれている。情熱的な熱いバラードなんか弾かれたら、食事どころじゃなくなるだろうから。かっこ良過ぎるピアニストに、若い女性もお母さん達もみんなウットリしている。
last updateLast Updated : 2025-08-25
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4 お客様との幸せな1日

食事も楽しんでもらえてるみたいで良かった。最後のデザートまで、誰一人残さずに食べてくれた。「お腹一杯美味しくいただきました。ありがとう」「楽しんでいただいたようで本当に良かったです」「明日の朝も期待してます」「はい。喜んでいただけるように心を込めて作らせていただきます」「あなたの料理は素晴らしいわ。本当にここにして良かった」お客様から料理を褒められると自然に笑顔になる。お風呂と同じく力を入れているところだから、満足してもらえたなら本当に嬉しい。明日も気合いを入れて頑張ろう。他にも、「素晴らしいピアノと食事、大満足です。ピアノ演奏は本当に贅沢過ぎました」「英会話も似顔絵も最高のサービスで、幸せな時間をありがとうございました」「お布団もふかふかでよく眠れそう」「露天風呂、気持ち良すぎて入り過ぎちゃいました~」など、たくさんの褒め言葉をもらった。クレームや失敗が無かったこと、今はとりあえずホッとしている。パパの大事な別荘をペンションにして、本当に本当に良かった。私の夢が叶った――そう思える最高の瞬間だった。お義母さんも3人も、みんなイキイキとしていて、思えば、私の夢がいつしかみんなの夢にもなっていたんだ。これは、みんなで掴んだ幸せ。私には仲間がいて、その大切な人達に守られている。それが、こんなにも嬉しいことだなんて、1年前には想像もしていなかった。今日は1日、みんなありがとう。疲れたと思うから、ゆっくり休んでね。そして、また、明日からもよろしくお願いします。
last updateLast Updated : 2025-08-26
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