最初の音が鳴った瞬間に体がキュッとなった。この曲……今の祥太君の気持ちを素直に表しているんだろう。とても優しい音色。きっと、心の乱れがない状態で作ったんだと思う。1音1音があまりにも綺麗で、素敵な曲に引き込まれる。深く、さらに深く……魅力溢れる祥太君の世界に――最後の音が鳴り止み、余韻をほんの少し味わってから、拍手がおこった。文都君、颯君、私……3人の感動は最高潮に達した。やはり、ピアノのもつ力は凄まじい。もっとずっと聴いていたかったけれど、祥太君は椅子から立ち上がった。「すごく良かった。祥太兄、めっちゃカッコイイ」「本当?ありがとう、颯」「祥太君には、恐ろしい程の才能があるんですね。全く音楽がわからない僕の心にもすごく響きました。本当にすごいです。絶対にピアノ……続けて下さい」優しい文都君の目には、少し涙が潤んでいた。「そうだよ。祥太君、絶対ピアノ続けてね。素敵過ぎて、私、演奏中体が固まっちゃってたよ」「いいな。結姉にそんなふうに言われて」「いいだろ~?」「ほんと、祥太兄はズルいよな~」「ズルいですね」心の奥底から湧き上がるような感動に、私も涙を我慢することができなかった。祥太君のピアノには人の心を魅了し、虜にする力がある。何度聴いてもその感動が衰えることはない。まるで魔法にでもかかったみたいに――「またみんなでコンサートに来て。そしたら、もっともっと良い作品を見せれると思うから。みんながいたら……心強いよ」「行きたいです。僕には無い魅力がある祥太君から学ぶものは本当に多いです」「俺も、祥太兄の世界にどっぷり浸かりたい。何か……心が洗われる気がする」「2人とも褒め過ぎだよ。俺も2人からはいつも何かを学ばせてもらってる。すごく刺激になっているよ。作曲には刺激が必要だからね」「お役に立ててるなら嬉しいです」真面目な文都君の返事。祥太君は笑顔でうなづいた。みんながそれぞれに、それぞれの人生に何らかの影響を与えながら、良い刺激を受けあっている。同居人として偶然集まったメンバーが、ここまで仲良くなれたことに改めて
Last Updated : 2025-08-22 Read more