翌朝。 目が覚めたばかりの私の視界に入ったものは、見覚えのない天井だった。(......あ、そうだった) 意識がはっきりしてくると同時に、昨日からの出来事が頭によみがえった。 ここは蓮司の――いや、今は形式上"夫"の家。私たちは昨日、契約結婚に合意したのだった。 スマホで時間を確認すると、午前6時。いつもの癖でこの時間に目が覚めてしまった。前の結婚生活でも、朝は早起きして朝食の準備をするのが日課だったから。 ベッドから起き上がり、パジャマのまま部屋を出る。 廊下は静寂に包まれていて、蓮司はまだ寝ているのかもしれない。そっと足音を立てないようにしながらキッチンへ向かった。 まずはコーヒーでも淹れようかと思い、棚を開けてみる。 すると未開封のコーヒー豆の袋を発見した。高級そうなパッケージだけど、開けた形跡はない。(この人、コーヒーも飲まないのかな......) 冷蔵庫の中身といい、どうやら蓮司は食べるということにほとんど関心がないらしい。昨夜も「夜は基本食べない」と言っていたし。 でも、さすがに夜も食べずに朝も食べないなんてしたら、体調崩しちゃう。なにか食べさせなきゃ! そう思って、私は持参した食材を確認しながら簡単な朝食の準備を始めることにした。 コーヒーメーカーの使い方を試行錯誤しながら覚え、冷蔵庫にあった卵で玉子焼きでも作ろう。おかずになるものがなにも無いし、食材と呼べるものがそもそもストックされていない。 せめてトーストくらい焼きたかったけれど、パンすらない。仕方なくご飯を早炊きしておにぎりでも作ろう。 あとは、インスタントの味噌汁。 準備をしているうちに30分ほど経過していた。蓮司の起床時間がわからないので、このまま待っていていいのか迷う。そんな時、足音が聞こえた。「おはよう」 振り返ると蓮司がパジャマ姿で現れた。髪が少し寝癖でくしゃっとしているのを除けば、相変わらず整った顔立ち。パジャマ姿でも様になっていてお洒落に見えるのはなぜだろう。「あ、おはようございます。早く起きち
Terakhir Diperbarui : 2025-08-13 Baca selengkapnya