Semua Bab 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!: Bab 11 - Bab 20

53 Bab

11

 翌朝。 目が覚めたばかりの私の視界に入ったものは、見覚えのない天井だった。(......あ、そうだった) 意識がはっきりしてくると同時に、昨日からの出来事が頭によみがえった。 ここは蓮司の――いや、今は形式上"夫"の家。私たちは昨日、契約結婚に合意したのだった。 スマホで時間を確認すると、午前6時。いつもの癖でこの時間に目が覚めてしまった。前の結婚生活でも、朝は早起きして朝食の準備をするのが日課だったから。 ベッドから起き上がり、パジャマのまま部屋を出る。 廊下は静寂に包まれていて、蓮司はまだ寝ているのかもしれない。そっと足音を立てないようにしながらキッチンへ向かった。 まずはコーヒーでも淹れようかと思い、棚を開けてみる。 すると未開封のコーヒー豆の袋を発見した。高級そうなパッケージだけど、開けた形跡はない。(この人、コーヒーも飲まないのかな......) 冷蔵庫の中身といい、どうやら蓮司は食べるということにほとんど関心がないらしい。昨夜も「夜は基本食べない」と言っていたし。 でも、さすがに夜も食べずに朝も食べないなんてしたら、体調崩しちゃう。なにか食べさせなきゃ!  そう思って、私は持参した食材を確認しながら簡単な朝食の準備を始めることにした。 コーヒーメーカーの使い方を試行錯誤しながら覚え、冷蔵庫にあった卵で玉子焼きでも作ろう。おかずになるものがなにも無いし、食材と呼べるものがそもそもストックされていない。 せめてトーストくらい焼きたかったけれど、パンすらない。仕方なくご飯を早炊きしておにぎりでも作ろう。 あとは、インスタントの味噌汁。 準備をしているうちに30分ほど経過していた。蓮司の起床時間がわからないので、このまま待っていていいのか迷う。そんな時、足音が聞こえた。「おはよう」 振り返ると蓮司がパジャマ姿で現れた。髪が少し寝癖でくしゃっとしているのを除けば、相変わらず整った顔立ち。パジャマ姿でも様になっていてお洒落に見えるのはなぜだろう。「あ、おはようございます。早く起きち
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-13
Baca selengkapnya

12

「不安か?」 ふと蓮司が聞いてきた。私は慌てて首を振る。「いえ、そんなことは......ただ、なんだか不思議だなって思って」「不思議?」「昨日まで本部長だった人と朝食を食べて、これから一緒に婚姻届を出しに行くなんて。まるで夢みたい」 正直な気持ちを口にすると、蓮司は少し考え込むような表情を見せた。「俺にとっても初めての経験だ。結婚というものは」「初婚ですもんね」 考え直すなら今ですよ、と言いたいところだけれども、そんなことを言っても多分彼の意思は固いだろう。プライベートな空間へすでに私を招き入れているんだし。「ああ。だから、わからないことも多い。もし迷惑をかけることがあったら言ってくれ」 意外な言葉だった。いつもの冷静で完璧な本部長ではなく、少しだけ人間らしい一面を見せてくれたような気がして、私は小さく微笑む。「私の方こそよろしくお願いします。一年間......よろしく」「ああ、よろしく」 そう言って、蓮司も僅かに口角を上げた。 笑顔というほどではないけれど、いつもの無表情よりもずっと柔らかい表情だった。「うまい朝食だった。ありがとう。洗い物は食洗器にかけるだけだから、俺がやる。君は支度に準備がかかるだろうから、ここは任せてくれ」 なんと片づけを買って出てくれた。こんなこと言われたことない…!「よろしいのですか?」「ああ」「ありがとうございます! すごく、すごく嬉しいです!!」 大げさかもしれないけれど、今まで「お前がやって当たり前」の世界で生きてきた私にとって、蓮司の言葉はほんとうに嬉しかった。気遣われるって、なんてありがたいのだろう。そしてどれだけ全夫との夫婦生活が劣悪な環境だったのか、身に染みて思った。「ひかり、大げさだ。当然のことだからいちいち礼を言うな」「それでも、嬉しい時は感謝の気持ちを伝えます。それが私のモットーですから!」 お辞儀してキッチンを後
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-14
Baca selengkapnya

13

 8時半に到着するように区役所へ行き、早速ふたりで婚姻届けを提出した。すぐに受理され、私は晴れて(?)御門ひかりになった。 山川(前夫の姓)→中原(旧姓)→御門(新姓)なんて、どう考えても普通じゃないッ。  1週間以内に苗字が3回も変わる人間なんて、世の中探してもそうそういないだろう。「行こう」「はい」 ここから車で5分ほどの所に会社があるので、タクシーで社まで行く。一緒にフロアに入るのは憚れたため、蓮司が一足先に社へ入っていった。わざとゆっくり回り道をしながらいつもの部署へ向かう。9時までに入ればセーフなので、まだ時間はある。 見慣れたフロアに着くと、いつも通りの景色が広がっている。通常運転のオフィスは就業前のふわっとしたゆるい空気の中、早くに出勤していた写真の誰かがキーボードを叩く音が規則正しく重なる。そんな中で、私はごく自然に「おはようございます」と声を出した。 「おはよ、ひかり」  私の声を聞きつけた同期の潮亜由美(うしおあゆみ)、30歳が振り返る。彼女は入社以来の同期だ。  肩までのゆるいウェーブヘアに、明るい色の口紅がよく映える華やかなタイプ。  誰に対しても人懐っこく、社内でも声が通るから、彼女の楽しそうな話声はいつもオフィスのどこかで響いている。  仕事は早くてそつがなく、面倒見もいい。上司への報告も、後輩へのフォローも手慣れたものだ。  ただし自由
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-15
Baca selengkapnya

15

 「楽しそうですね。僕も混ぜてくださいよ」  同じ部署の後輩、坂下健太郎(さかしたけんたろう)28歳から声を掛けられた。彼は私の後輩兼部下で、すでに部署内では中堅として頼りにされている存在に育った。私が育成したのだから、鼻が高い。  彼の身長は180センチ近くあり、すらりとした体格。爽やかな笑顔と穏やかな物腰が印象的で、社内では密かに“癒し系イケメン”と噂されている。彼女はいないらしい。知らないけど。  髪はややくせのある茶色がかった黒髪で、無造作にセットされた前髪がきまぐれに額を覗かせている。シャツの第一ボタンは外していて、少しラフなのに清潔感は失わない不思議なバランス感覚。  普段はおっとりして見えるが、仕事では抜け目がなく、資料作成や取引先対応にも定評がある。細やかな気配りができるタイプで、誰に対しても壁を作らずに接するところが彼の強みだった。  「お隣失礼しまーす」  そう言って私の席の隣に座った。持っているトレイの上には大皿に盛られたな料理が並んでいた。 「デラックスA定食とは豪華ね」  彼が手にしていたのは、社員食堂で一番高額なデラックスA定食だった。社員食堂だから基本的に安いけれど、A定食はその中でも値が張る。社食で980円だから豪華
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-17
Baca selengkapnya

17

「ありがとう。でも、期待させてしまうのも悪いから、待たないで」「大丈夫です。僕のことは気にしないでください」 気にするなって言われても…。  どう話をしようかと思っていたら、遅れていた亜由美がやってきた。「お疲れさまー! 遅くなってごめーん」 亜由美がバタバタと入ってきた。明るい笑顔で手を振りながら、席に着く。「全然大丈夫だよ。お疲れ様」「坂下君もお疲れ様! もう注文した?」 坂下君は少し困ったような表情をしていたが、すぐに笑顔を作った。「まだです。メニューを見ていたところで」 亜由美が来てからは、場の雰囲気が一気に明るくなった。彼女のおかげで、さっきまでの重い空気が和らいだ。「じゃあ、とりあえず乾杯しよう! ひかり、今日は飲める?」「うん、少しなら」 生ビールで乾杯し、料理を注文した。亜由美がいると会話が弾む。仕事の話、最近見たドラマの話、芸能人のゴシップまで。坂下君も徐々にリラックスしてきたようで、笑顔を見せるようになった。 でも、時々彼が私を見つめているのに気づく。さっきの告白のことを考えているのかもしれない。申しわけない気持ちが込み上げてくる。「あ、そういえば、ひかり。なにかいいことでもあった?」 亜由美の質問に、心臓が跳ねた。「そ、そんなことないよ」「でも昨日から明らかに雰囲気変わってる。なんか、生き生きしてる感じ?」 やばい。亜由美の観察力は鋭すぎる。「離婚が成立してすっきりしたのかも」冷汗が出た。「それもあるけどさー。もしかして新しい恋人でもできた?」 ぎくっ。 恋人じゃなくて夫だけど…!「そんなことないって! 離婚したばかりだよ? なに言ってんの!」「でも、ひかりってモテるからなー」 坂下君がちらりと私を見た。きっと彼の告白を知ったら、亜由美はもっと騒ぐだろう。「本当になにもないから。しばらくは一人でいたいし」「そう言いながら、結婚願望は強いよね。すぐに次の人見つけそう」 見つけるどころか、もう見つけてしまった。しかも昨日の今日で。「もうしばらく結婚なんて考えられないよ」「まあ、そりゃそうか。あの元ダンナ、最低だったもんね」 亜由美がため息をついた。 そんな会話をしているうちに、8時半を過ぎた。私は時計を見て、そろそろ帰らなければと思った。蓮司のことが心配で仕方がない。「あ、ごめん。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
Baca selengkapnya

19

「…わかった。じゃあ、どうやって君に生活費をわたせばいい?」「レシートで管理し、そちらを請求します。しかし今は前の夫に貯金を持ち逃げされてしまい、あまり金銭的余裕がありません。ですから、次のお給料が入るまでは都度払いいただけると助かります」 私は今日のスーパーのレシートを彼に渡した。紙は少し湿っていて、指に洗剤の匂いが残っている。「わかった。ではこうしよう。家に帰ってきてまで領収書のやり取りはしたくない。だから普通の君専用のカードを作ろう。生活費はそれで支払う。現金しか無理な場合もあるだろうから、十万円ほど先に渡しておく。これでどうだろう?」「はい。とても名案だと思います!」「じゃあ、先に渡しておくよ」 蓮司が長財布から新札を取り出し、丁寧に数えて封筒に入れた。角のそろった紙が、机に小さく音を立てる。さらに、今日の分の代金も支払ってくれた。「助かります。では、食器洗いが残っているので」 頭を下げて再び片づけに戻る。蛇口の水音に、彼のキーボードを打つ音が重なる。規則正しいリズムだ。食器を洗いながら、私は今日一日を振り返った。坂下君の告白も、蓮司の優しい言葉も、すべてが現実のこととは思えない。けれど封筒の重みは確かで、胸の奥の強張りを少しだけ解いた。 この一年間は、今まで経験したことのない日々になり
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-21
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status