焼き上がったたこ焼きが食卓に並ぶと、部屋いっぱいにソースの匂いがふわりと広がった。 湯気の向こう側で、蓮司もお母さまも、そしてシリウスまで嬉しそうにしている。 「いただきまーす」 ひと口かじると、外はカリッ、中はとろっ。 紅生姜の香りがふわっと跳ねて、蛸がぷりっと弾む。 ——ああ……こんな普通の味が、どうしてこんなに愛おしいんだろう。「美味しい!」思わず笑みがこぼれる。 「だろ?」蓮司が自慢げだ。「俺が紅生姜を入れたからな」 「いや、それほとんど私だからね?」 「……細かいことはいいんだよ」 ああ、この人となら、きっとこれから何があっても笑っていられる。 そう思える穏やかな時間だった。「ひかりさん、たこ焼きパーティーなんて、とても楽しいわ。ありがとう。これからも時々来てくれる?」 お母さまがやわらかく微笑んだ。「もちろんです。来ます。何度でも」 「よかった……蓮司、あなたもよ」 「当たり前だよ、母さん。ひかりが来るなら、俺も来る」 そう言いながら、蓮司の手がそっと私の左手を包む。 薬指の指輪が、灯りを受けてきらりと揺れた。 隣でシリウスが私の膝に顎をのせてくる。 「甘えん坊だなぁ、シリウス」 「ワンッ」(当たり前だ、の顔) 笑いながら頭を撫でると、尻尾がもっと激しく動く。 家の中にあった“空気の隙間”が、少しずつ、確かに埋まっていく。 音も、匂いも、気配も、全部が家族になっていく。 ふっと、お母さまが穏やかに言った。「……ひかりさん。あなたが来てくれたおかげよ」「え……?」「この家、ずっと静かすぎたの。蓮司も、私も。こんな風に冗談を言って食事を食べたこともなかったわ。でもあなたが来てくれたことで、とても楽しい時間を過ごすことができたの。本当にありがとう」 胸の奥がじんわり熱くなる。「……私こそ、ありがとうございます。蓮司と、こんな時間を作れるなんて思いもしませんでした」 蓮司がたまらないとばかりに私の肩を引き寄せる。「ひかり。俺はな……ずっと、こういう日常に憧れていたんだ。家族で囲む食卓、話し声、笑い声……全部。この家は母さんが言うように、静かすぎたから」 その腕があまりに優しくて、すごくウルっときちゃった。「これからはずっと一緒に作っていこう。御門の家族じゃなくて、俺たちの家族をさ」
Last Updated : 2025-11-28 Read more