All Chapters of 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!: Chapter 31 - Chapter 40

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 「どうしたらこんなに手が赤くなるの! 真白さん、いったいどういうこと?」「あ…あのこれは…」お母さまに叱られた真白さんが、しどろもどろになっている。「指導という名の暴力?」 キラリとお母さまの目が光る。「違います! わたくしはただ、ひかりさんに少しでも早く御門家の一員として、認められるように教育を…」 お母さまはふう、と小さく息を整えてから落ち着いた声で言った。「今までのひかりさんへの様子は報告をもらっているわ。扇子で叩く指導なんて、言語道断。即刻禁止よ。以後、ひかりさんの身体には触れないで。是正は手順の提示か見本の実演でお願いね」  お母さま、最初から知っていたんだ。  だから私を助けるために入ってきてくださったのね…!  感激した。「承知しましたわ。つい、熱が入って行き過ぎました。失礼」 不承不承という形で謝られた。謝る気ゼロよね。  まあいいわ。「真白さん。休憩は五十分ごとに十分取りましょう。水分補給も忘れてはいけませんよ。それから、稽古は私が記録します。ひかりさんにはしっかり蓮司の伴侶に相応しい教育が必要だと思いますから、同席して私も指導員として加わるわね」「いえ、そんな、おばさまの手を煩わせるわけには…」「あら、なぜ? 私が同席しているとなにか不都合でも?」 まるで蛇に睨まれた蛙だ。真白さんは言葉を詰まらせた。「いえ…かしこまりました。どうぞ、同席ください」 さすが御門蓮司母。真白さんが言い負かされた!  笑顔はそのままだけど、目の奥が悔しそうに揺れているのを私は見逃さなかった! うーん、すっきり!「では仕切り直しましょう。まず座位の姿から――」 お母さまのの指導を受けると、背筋が自然に伸びてしんどさが半分になった。え、すごい。「では、今のお作法でもう一度やってみて、ひかりさん」 言われた通りやってみると、さっきとは比べ物にならないくらい
last updateLast Updated : 2025-09-03
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 休憩を挟んで、もう一度みっちり練習を行った。お母さまに“手順で直す”を叩き込まれて、最後に通しでお点前。なんとか形になったところで、時間を見てお母さまが言った。「本日はここまでにいたしましょう」 隣の真白さんも、にっこり(口角だけ)。「初日にしては、まあ及第点、というところですわね。続きはまた明日」「明日は仕事がありますので、会社が終わってからでもいいですか?」「かまいませんわ」 まあ、ダメって言えないもんね。「明日も私が同席します」 お母さまがさらりと言うと、真白さんがきゅっと扇子を握り直した。 よし、見張り継続! ありがたい! 片付けを手伝って玄関へ。外はもう夕方になっていて、茜色に染まっていた。門外にヘッドライトが浮かぶ。スマートフォンにメッセージが入った。〈門の前〉 ひとことすぎるっ…! もうちょっと愛想のあるメッセージ送れないのかしら。仮にもあなたの妻であるために頑張ったというのに!「蓮司が来てくれたみたいね。ひかりさん、行きましょう」 チラ、と真白さんの方を流し見してお母さまは私の背中に手を添え、歩き出した。  振り向けないからわからないけれど、きっと真白さんは悔しそうな顔をしているんだろうな。  その様子を想像するだけで爽快に思ってしまう私、性格悪いかな? 車に近づくと、蓮司が降りてきた。「お疲れ」「なんですかそのひとことは! もう少しねぎらったらどうなの! ひかりさん、大変だったのよ」 私ではなくお母さまがプリプリ怒っている。  それだけで救われるなぁ~。ありがたい。「手、どうしたんだ。赤いじゃないか」「真白さんよ」 お母さまが心底嫌そうな顔で言った。「だからあの子は嫌いなのよ。意地悪で高慢で、ウソばっかり」 そうだ。お母さまは嘘をつく人間が嫌いなんだった。  となれば…私、もしかしてやばい? 偽装婚だってこと、ぜったいバレないようにしなきゃ!!「このくらい平気です、お母さま。私、頑丈なんで」「九条家は私の大事な嫁にこんな仕打ちをしたのよ。信じられる? 蓮司、あんたがなんとかなさい」「…わかった。考えとく」  会社でよく見るやつだ!!  恐ろしいやつ!!「もう痛くないので心配しないでください。ほら、このとーり」 後部座席にお母さま、私は助手席へ。ドアが閉まると、世界が少し静かになる。
last updateLast Updated : 2025-09-03
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 ゆっくりお風呂に入った。夕食の買い物行ってないどうしようかな、と思っていたら、リビングで待っていてkくれた蓮司がテーブルの上にメニューをずらっと並べてくれた。「腹が減っているだろう。なにがいい?」「これはどうしましたか?」「今日の報酬だ。好きなものを食べていいぞ」「えー最高♡」 お取り寄せなんて最高すぎる!  お寿司、天ぷら、ピザ…ああ、どれにしよう!!  冊子はまるで夢の国が広がっていた。パスタに丼、お肉…そしてスイーツ、ご褒美プリン。 選手層が厚い!「理性は湯豆腐を選べと言っていますが、魂が寿司と肉を要求しています」 真剣な顔で伝えた。「あははっ。なんだそれは」 蓮司が笑った。ふいの笑顔にドキっとする。なんか…破顔して笑う素敵な様子、初めて見た。  会社で本部長の蓮司は、気難しくて言葉足らずで冷徹で…なんか、こんな風にラフな状態を見るなんてことなかった。「よし。魂派でいこう。握り2人前と、肉の盛り合わせ。どうだ?」「甘いものは別腹でお願いします。極上生プリン×2もセットで!」「了解(即決)」 注文を済ませたら、届くまで30分ほどかかると言われた。空き時間がいちばん危ない。緊張の糸も溶けてだらんとなってしまう。「母さんからびっしりメールで報告をもらっているけど、真白になにされたんだ?」「あー、教育的指導ってヤツですよ。私が気に入らなかったんでしょう。別に、大したことありません」「でも、大事なひかりの手が」 そっと手を取られた。 わっ。びっくりする! 蓮司が近いッ!!「御門家のゴタゴタに巻き込んですまなかった」「いえ。引き受けた以上は全力でやらせていただきます」「ひかりを選んでよかったよ。湿布、俺が貼ってやる」「いえ、いいです! 後でちゃんとケアしますから。このくらい大したことないです」「だめだ。俺だってひかりのためになにかやってやりたいんだ。このくらいさせてくれ」 手を取られ、赤くなっている甲の部分に冷シップを当ててくれた。「この箱の山…自宅にストックでもあったのですか?」  リビングテーブルにいろいろな湿布薬の箱が積み上げられている。「いや、母さんから連絡を受けて、急いで買いに行った」 10箱以上あるし!「買いすぎですよ…」「どれがいいかわからなかったから、いっぱいあったら困らないかと思って」
last updateLast Updated : 2025-09-04
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 「蓮司はいつもみんなのことをよく見ていますよね」「そうか?」「はい。的確な指示を出しては、鬼のダメ出し攻撃するので」「なんだ。ひかりは俺のことを褒めているのか、貶しているのかどっちだ」「ふふ。褒めているんですよ」 笑って言うと、蓮司が顔を反らした。あれ。褒められ慣れていない感じ?「蓮司、会社ではすごくえらいですよー(棒読み)すごーい(棒読み)てんさーい(棒読み)」「思ってもいないことを言うなよ」「思ってます」 真剣に言った。「御門家のことを知って、蓮司がいかに窮屈で、大変な思いをして育ってきたのか、よくわかりました。結婚相手さえ自由に選べないのは、辛いですよね」「…まあな」「私みたいな奔放な人間だと、後で『合わなかった』と離縁しても『仕方ない』ですみますもんね」「仕方ないとはならないだろう」「じゃあ、期間が来たらどうするんですか?」「そうだな…」蓮司は顎に手を当て、真剣に考えている。「場合によっては延長の申し出をするかもしれない」「え”」 偽装の婚約期間を延長するの!?「困ります。そんなことしたら、私、行き遅れます」「もう俺に嫁いでいるだろう」「あ、いや、まあ、そうですけど…蓮司と離婚したら、バツ2になるんですよ。再々婚となればハードル高いですし、婚活は早めの方がいいと思っているんですが…」 バツ2なんて、超問題あり物件と思われるよね。そこ、考えてなかった! 考えなしに行動するから後悔しても遅いよね。とほほ…。「まだ結婚中だぞ。そんな先の話はいいだろう」 なぜか蓮司が不機嫌になった。  そこ、不機嫌になるところ!? 困っていると、ピーンポーン、とインターフォンが鳴った。ドアフォンを見ると、マンションの入り口の所に出前の会社、ウーハーイートの配達員の人が映っている。『御門さんでしょうか。お待たせしました、ウーハーイートです』「はい、どうぞ」 対応し、ドアロックを開けると、配達員のお兄さんが中に入ってくる様子が映っていた。「よし、来たな。取ってくるから食べよう。飲み物を頼む」「はい」 一緒に飲もうということで、ビールを用意した。私はワインやシャンパンよりビール派なのよ。  おっさんか、とよく言われるけれども気にしない、気にしない!「届いたぞ」 玄関から戻ってきた蓮司さんが丁寧に注文品をテーブルに置い
last updateLast Updated : 2025-09-05
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