翌朝は和食にした。昨夜のスープを温め直し、焼き鮭と浅漬け、豆腐とわかめの味噌汁、炊きたてのほかほかご飯。卵焼きは昨日より少し甘めに巻いた。食卓を整えたころ、寝室の扉が開く。「おはよう」「おはようございます。今日は和食です」「いい匂いだ」 蓮司は椅子に腰を下ろし、味噌汁を一口すすって目を細める。「落ち着く味だな」「よかった。卵焼き、気に入ってくれたみたいだったので、少し甘さをプラスして、もう一回だけ出してみました」「もう一回だけとはどういうことだ? もう食べられないのか」「いえ。同じものばかりだと飽きますから。当分は作らずに、別のものにするという意味です」「そうか。頼もしいシェフだ」 軽口のやり取りが自然にできるようになってきた自分に気づく。食べ終えたタイミングで、蓮司がスマホを差し出した。「家計カード、今日の午後にデジタル発行されるはずだ。君のメールに案内が届く。物理カードは数日で届くから、それまではこの仮カードを使ってくれ」
Last Updated : 2025-08-23 Read more