半開きのドアを隔て、病室の内と外で二人はその場に凍りついた。見開かれた小夜の目は、振り返った男の視線を正面から受け止める。張り詰めていた緊張が解け、早鐘を打っていた心臓がすとんと元の位置に収まるような感覚だった。「どうして、ここに……」「ママ!」アライグマの着ぐるみパジャマ姿の星文が、よろよろと駆け寄ってくる。静まり返った病室に、くぐもった泣き声がやけに鮮明に響いた。この二人が、明け方の四時や五時に、よりにもよって自分の病室にいる――どういうことだと問いただすより先に、小夜はとっさにしゃがみ込み、胸に飛び込んできた小さな体を抱きしめ優しくあやした。よほど恐ろしいものでも見たのか、あるいは来る前に散々泣き腫らしたのか。ほどなくして星文は彼女の腕の中で、疲れ果てたように眠りに落ちてしまった。星文を抱きかかえてベッドへ運び、丁寧に布団をかけてやる。それからようやく傍らに立つ翔へと向き直った。お互いの瞳には、同じような戸惑いの色が浮かんでいる。言い訳を考える間もなく、翔が先に口を開いた。「驚いたよ。三時過ぎに来てみたら君はいないし、電話しても出ない。何かあったのかと思って、警察に通報する一歩手前だった」驚いたのはこっちの方よ!病室に人影を認めた瞬間、心臓が止まるかと思っただから。宗介に恨みを持つ者が乗り込んできたのかと、一瞬本気で肝を冷やしたのだ。それにしても、効率が良すぎないか、と。このまま逃げ出そうとした矢先に、まさか柏木家の人に行方を阻まれるとは思いもしなかった。小夜は心の中で深くため息をついた。よりによって、最も会いたくないタイミングで鉢合わせてしまった。ここはうまく取り繕わなければならない。彼女は冷静に部屋の隅へ歩いていくと、羽織っていたダウンジャケットを脱ぎ、中の病衣を見せた。何食わぬ顔でそれをハンガーにかけると、極めて自然な口調で答える。「デザイン画を届けに来てくれた友人と、駐車場で少し話し込んでしまって。それより、どうして急にこちらへ?星文に何かあったんですか?」一つ嘘をつけば、どんどん嘘を重ねなきゃいけない……本当に疲れる。幸い、以前「友人と徹夜でデザイン画を詰める」と話していたことが功を奏したのか、翔は特に疑う様子も見せず、意識はすぐにベッドの星文へ戻った。その整
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