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第167話

Auteur: 一燈月
夕日が傾き、空は茜色に染まっている。

帝都大学の正門前。たすき掛けにしたショルダーバッグ、わずかにカールした髪の先は夕陽の色を帯びている。

佑介の端正な顔立ちには、隠しきれない名残惜しさが滲んでいた。

「姉さん、明日、本当に行ってしまうんですか?」

小夜は彼の肩をぽんと叩いた。

「ええ。明日の裁判が終わって結果が出たら、すぐにパリへ発つわ。次にいつ帰ってこられるか、分からないけれど」

今日は、大学の新学期が始まる日だった。

出国が決まり、しばらくは戻れないと分かってから、小夜は佑介を誘って夕食をとったのだ。

ちょうど今日から授業再開だというので、ここまで送ってきたところだった。

次に会えるのがいつになるか分からない――そう思うと、小夜の顔にも自然と寂しさが滲む。

二十年以上暮らした故郷を、もうすぐ離れる。

大切な人とも、しばらくの別れだ。

「姉さん、心配しないでください」

彼女の悲しげな様子を見て、佑介はすぐに明るい笑顔を作った。

「僕、勉強は得意ですから。先生の数学の課題と研究を終わらせたら、すぐに留学を申請します。そうすれば、また一緒に遊べますし……毎日姉さんに会えますよ!」

小夜は微笑み、瞳を潤ませながら、彼の肩を軽く叩いた。

「それなら頑張らないとね」

「はい!」

夕日の中、小夜は佑介に手を振って別れを告げた。遠ざかっていく彼の背中を見送ると、振り返った彼女の胸には様々な感情が込み上げ、目頭が熱くなった。

車に戻ると、車内で待っていた星文が彼女の様子を察したのか、両手を広げて抱きついてきた。

「ママ?」

小夜は感情を落ち着かせ、その小さな体を受け止めるように抱きしめると、微笑んで言った。

「行きましょう。美味しいものを食べに連れて行ってあげる」

この数日、竹園の別邸では、星文はずっと寝室で大人しく過ごし、勝手に歩き回るようなこともなかった。

約束のご褒美をあげる時だ。

……

小夜は車を走らせ、可愛らしく華やかな内装のキャンディショップへと向かった。

星文の手を引いて、ドアを押し開ける。

店内はそれなりに混雑していたが、常連である彼女を見るなり、店の女将が声をかけてきた。

「あら、お久しぶりだね。いつものにする?」

ここは手作りキャンディの専門店で、何十年も続く老舗だ。素材は清潔で安心でき、食感は豊か
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