「パパ、会いたいよ」画面の中の樹は顔色が悪く、ひどく落ち込んでいるようだった。「ずっと帰ってこないんだもん。パパとママに会いたい……パパ、ママ見つかった?」「ああ、見つかった」樹の目がぱっと輝いた。「どこ?」「ママは――」圭介は「寝てる」と言いかけて、口をつぐんだ。何か思うところがあったのか、数秒の間を置いてから彼はガラス戸を開け、寝室に戻った。ベッドの縁に腰を下ろし、背を向けて横たわる小夜の肩にそっと手を置く。「小夜。樹が会いたがってる」小夜はぐっすり眠っているのか、身じろぎもしない。返事もなかった。画面の向こうで、小夜がそばにいると知った樹の声が一気に跳ね上がった。「ママ!ママ、会いたかったよ!あのね、僕ね、最近すごくいい子にしてたんだよ。どこにも勝手に行ってないし、ごはんもちゃんと食べて、お勉強もして、おじいちゃんやひいおじいちゃんの言うこともちゃんと聞いて……ママ、なんでお返事してくれないの?」いくら呼んでも小夜の声が返ってこない。樹の口調がだんだん焦りを帯びてきた。声が詰まり、それでもなお大きく叫んだ。「ママ!なんで返事してくれないの!」圭介が眉をひそめ、たしなめようとした瞬間、画面の中で必死に叫んでいた樹の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。嗚咽が止まらなくなる。「ママ……もう勝手にどこかに行ったりしない。これからはちゃんとママの言うこと聞くから、もう絶対しないから……ママは僕のママでしょ、無視しないでよ……ごめんなさい、ママ」圭介にははっきり分かった。小夜の肩に置いた彼の手を通じて、微かな震えが伝わってきたのだ。彼女の体そのものも、かすかに揺れていた。けれど最後まで、彼女は振り返らなかった。声も出さなかった。静かなままだった。小さく息をつき、圭介は手を引いた。立ち上がり、再びバルコニーへ向かう。淡々とした声で樹に言った。「ママは寝てるんだ。起きたら電話させるから」彼はガラス戸を閉めた。「パパの嘘つき!」樹の声に、怒りがにじんだ。「樹」圭介の目に冷たい光がよぎった。静かに画面の中の樹を見据えると、樹はたちまち黙り、しょんぼりと目を伏せた。「パパ……ママ、僕のこともういらないの?」「そんなわけがない」圭介の声は低く、揺るぎなかった。「樹。覚え
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