赤いシルクハットをかぶった、ころんと丸い小さなブリキのロボット。ある賭けがきっかけで、「空に浮かぶお月様を摘み取ってみせる」と大見得を切り、えっへんと胸を張って家を飛び出した。それが、世界を巡る冒険の旅の始まりだった。 旅の途中、ロボットはたくさんの人と出会い、彼らに降りかかる不幸を知った。そして英雄のように現れては、出会った人々を苦しみから救っていく。家族からの虐待、愛する者からの裏切り、そして別離…… 描かれている数々の苦難を、小夜は嫌というほど知っていた。 漫画の中で救われる人々は、すべて彼女自身の過去の影だったのだ。空から降ってきた小さなロボットは、暗い部屋に閉じ込められ、飢えと暴力にさらされている少女を助け出し、食事も与えずに殴りつける身内を追い払った。 そして長い間そばに寄り添い、新しく温かい家が少女を受け入れるのを見届けてから、またえっへんと胸を張って去っていく。 去り行く背中に、少女は心から祈った。 ――あなたならきっと、お月様を摘み取れるわ。 また別の場所で、ロボットは家の者に無理やり花嫁輿に押し込まれた娘に出会った。輿のそばを通りかかった時、中から声にならない泣き声と、助けを求める気配を感じ取ったのだ。ロボットは婚礼の場に乗り込むと、命と金を賭けた大勝負の末、二十億円で娘の自由を買い取った。 自由になった娘は、心から祈った。 ――あなたならきっと、お月様を摘み取れるわ。 やがてロボットは、ある古い城の前を通りかかった。城の主に道を尋ね、立ち去ろうとした時、地の底から女の泣き叫ぶ声が聞こえた。迷うことなく地下牢へ飛び込むと、そこには冷たい鎖で繋がれた女がいた。 ロボットは女の悲痛な声に応え、城の主を打ち倒して、彼女を暗い地下から連れ出した。 光を浴びた女は、ロボットの冷たいブリキの身体にそっと口づけをし、心から祈った。 ――あなたならきっと、お月様を摘み取れるわ。 そしてロボットは、一人の美しい顔立ちの男に出会った。男は言った。 「俺はある女を愛して、結婚した。だが、彼女の心には別の男がいる。それが憎い。けれど、どうしても手放したくはない。そして何より……俺のこの愛を、彼女に知られたくはないんだ」 さすがの小さなロボットにも、どうしたらいいかわからなかった。 今度ばかり
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