جميع فصول : الفصل -الفصل 552

552 فصول

第551話

それこそが、珠季にとっていちばん気がかりなことだった。かつて樹とその父親がそろって若葉に親しげに接し、小夜を深く傷つけたと知った時、珠季の胸には、あの子に対するわだかまりも少なからず生まれていた。とはいえ、樹は小夜の息子だ。この一年は、以前よりずいぶん落ち着いていることも確かだった。だからこそ、余計に安心できなかった。最近の長谷川家の動きを見る限り、あちらは小夜を家から切り離す気などまるでない。自分がイギリスで目を光らせていなければ、その手はとっくにこちらまで伸びていたはずだ……それが、珠季には何より腹立たしかった。あの男はもう死んだというのに、子どもだの遺言だの会社だのを口実にして、いつまでも小夜を縛りつけようとする。その魂胆が、どうにも許せない。結婚したからといって、長谷川家そのものに嫁いだわけではない。ましてや、あの男はもうこの世にいない。婚姻関係だって、とっくに終わっている。それなのに、いつまでこんなことを続けるつもりなのか。もちろん、小夜の心にあるものも珠季には分かっていた。自分をかばって銃弾を受けた相手への罪悪感だ。長谷川家が大事に育ててきた後継者を死なせてしまったという負い目なのだろう。だが、あれは圭介の自業自得だ。小夜に背負わせてきたものを返しただけで、当然の報いでもある。ただ、そこへさらに、子どもから父親を奪い、片親にしてしまったという事実が重なる。放っておけないのも、無理はなかった。珠季は理解している。だが、このまま続けば、自分が目を閉じたあと、長谷川家はこの大切な姪孫を、そしてスプレンディドのたった一人の後継者を、骨の髄までしゃぶり尽くしてしまうのではないか。そんなことは、絶対に許せない。だからこそ、珠季は小夜の結婚を急いでいた。結婚し、新しい家庭を築いて初めて、長谷川家とは完全に一線を引ける。できることなら、もう一人子どもがいればなおいい。そうすれば、心から安心してあの世へ逝くことができる。ただし、そうなると相手は誰でもいいわけではない。長谷川家からの圧力に耐えられる男でなければならない。肩を並べて渡り合えるほどでなくてもいい。少なくとも、気骨のない軟弱者では困る。志があり、小夜をしっかりと支え、思いとどまらせるだけの力も必要だ。小夜が情に流され、また馬鹿な真
اقرأ المزيد

第552話

海外で良縁がまとまりかけていたその頃、国内では、栄知の別邸の書斎から、年老いてなお腹の底から響くような彼の怒声が飛んでいた。「この馬鹿者めが!自分の不始末を自分で片づけようともせず、毎日毎日ろくでもないことばかりやらかして、いざ収拾がつかなくなったら、この老いぼれの顔を使って泣きつくつもりか?よくもまあ、そんなことを思いついたものだ!」書斎の机のそばに控えていた馬場執事は、栄知が怒りで息を乱しているのを見て、慌てて手を伸ばし、その背中をさすった。ようやく呼吸が落ち着いたかと思えば、電話の向こうで何を言われたのか、栄知はたちまちまた爆発した。「この大馬鹿者!夫婦の間には誠意が要ると、わしは何度言った?お前は全部、右の耳から左の耳へ聞き流してきたのか!お前が自分で招いたことだ。自分で何とかしろ!わしに尻拭いをさせようなどと思うな。毎日毎日、考えることといえばろくでもない小細工ばかりだ。手元のくだらん騒ぎをさっさと片づけて、自分で出向いて頭を下げてこい。この老いぼれが行くより、よほど役に立つだろうが!ほう、相手が会いたがっていないことはよく分かっているじゃないか。それはご立派な心がけだ。偽装死などという真似まで思いつく長谷川家自慢の賢い孫は、どこへ行ってもちやほやされるとでも思っておったのか」栄知は皮肉たっぷりに吐き捨てた。「この恩知らずのろくでなしめ。さっさと行け!」言い終わるが早いか、栄知は勢いよく電話を切り、スマホを机に叩きつけた。まだ怒りは収まっていなかった。馬場執事はすぐに一杯のお茶を差し出した。栄知がそれを飲んだのを見届けてから、馬場執事は控えめに尋ねた。「大旦那様、本当にお手を引かれるおつもりですか」「手を引けるものか。どうやって見捨てろというのだ」口では怒っていても、お茶で息を整えた栄知は、結局のところあの孫が可愛くて仕方がなかった。「見捨てられるわけがなかろう。あれは壁にぶつかるまで引き返さない性分だ。本当にそのまま突っ走って自滅させるわけにもいくまい」言い終えると、栄知はまた深くため息をついた。「あの時から、わしは二人の結婚には反対だったのだ。馬場もそう思うだろう。騙すようにして手に入れた縁に、よい結末などあるはずがない。まったく、とんだ悪縁だ」「……」「連絡を取れ
اقرأ المزيد
السابق
1
...
515253545556
امسح الكود للقراءة على التطبيق
DMCA.com Protection Status