それこそが、珠季にとっていちばん気がかりなことだった。かつて樹とその父親がそろって若葉に親しげに接し、小夜を深く傷つけたと知った時、珠季の胸には、あの子に対するわだかまりも少なからず生まれていた。とはいえ、樹は小夜の息子だ。この一年は、以前よりずいぶん落ち着いていることも確かだった。だからこそ、余計に安心できなかった。最近の長谷川家の動きを見る限り、あちらは小夜を家から切り離す気などまるでない。自分がイギリスで目を光らせていなければ、その手はとっくにこちらまで伸びていたはずだ……それが、珠季には何より腹立たしかった。あの男はもう死んだというのに、子どもだの遺言だの会社だのを口実にして、いつまでも小夜を縛りつけようとする。その魂胆が、どうにも許せない。結婚したからといって、長谷川家そのものに嫁いだわけではない。ましてや、あの男はもうこの世にいない。婚姻関係だって、とっくに終わっている。それなのに、いつまでこんなことを続けるつもりなのか。もちろん、小夜の心にあるものも珠季には分かっていた。自分をかばって銃弾を受けた相手への罪悪感だ。長谷川家が大事に育ててきた後継者を死なせてしまったという負い目なのだろう。だが、あれは圭介の自業自得だ。小夜に背負わせてきたものを返しただけで、当然の報いでもある。ただ、そこへさらに、子どもから父親を奪い、片親にしてしまったという事実が重なる。放っておけないのも、無理はなかった。珠季は理解している。だが、このまま続けば、自分が目を閉じたあと、長谷川家はこの大切な姪孫を、そしてスプレンディドのたった一人の後継者を、骨の髄までしゃぶり尽くしてしまうのではないか。そんなことは、絶対に許せない。だからこそ、珠季は小夜の結婚を急いでいた。結婚し、新しい家庭を築いて初めて、長谷川家とは完全に一線を引ける。できることなら、もう一人子どもがいればなおいい。そうすれば、心から安心してあの世へ逝くことができる。ただし、そうなると相手は誰でもいいわけではない。長谷川家からの圧力に耐えられる男でなければならない。肩を並べて渡り合えるほどでなくてもいい。少なくとも、気骨のない軟弱者では困る。志があり、小夜をしっかりと支え、思いとどまらせるだけの力も必要だ。小夜が情に流され、また馬鹿な真
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