いくら小夜が抵抗したところで、結局は準備運動に付き合わされ、潜水時のルールや注意事項をインストラクターからひと通り聞かされる羽目になった。観念したのか、彼女も真剣に説明に耳を傾けた。もはや断れない以上、遊び半分で海に潜るわけにはいかない。細心の注意を払うのは当然だ。傍らの圭介はダイビングに慣れているらしく、小夜が不安そうにしているのを見ると、微笑みながら耳元でそっと囁いた。「心配するな。これから潜るのは浅いポイントだから、経験がなくても問題ない。俺がついてる」――あんたがいるから不安なんだってば!小夜はまだ不安げに尋ねた。「インストラクターさん、本当に深くないんですか?」インストラクターはがっしりとした体格の、よく笑う中年男性だった。彼は豪快に笑いながら答えた。「ご安心ください。水深は一番深いところでも十メートルほどで、大半は四、五メートル程度です。海の中の景色は本当に見事で、カップルにもとても人気のあるスポットなんですよ。怖がって見逃してしまうのはもったいないですよ」「カップルじゃありません、ただの他人です。無理やり連れてこられただけなんです」小夜はすかさず否定した。すると圭介が涼しい顔で付け加えた。「たしかにカップルではないな。俺たちは夫婦だ」「もう離婚してます!」インストラクターはただの痴話喧嘩だと思ったのだろう、笑顔のまま何も言わなかった。とはいえ、水深が浅いことと、プロのスタッフが海上で常時待機していることを確認すると、小夜もようやく腹をくくった。準備を整え、ウェットスーツとダイビング機材を身に着けた後、圭介に手を引かれながら、ゆっくりと海へ足を踏み入れる。足元を波が洗っていく。ほんの一瞬ためらった隙に、隣の圭介に引き込まれるようにして、陽光がきらめく透明な海中へと沈んでいった。――彼女は息を呑み、目を大きく見開いた。胸の奥が、激しく震える。広がっていたのは、想像をはるかに超えた光景だった。この辺りの海はもともと透明度が高く、太陽の光が遮られることなく海底まで届いていた。浅い海底は異様なほど明るく照らし出され――その眼下には、古く壮大な海中都市が横たわっていたのだ。同時に、装着していた防水イヤホンからダイビング用のガイド音声が流れ始めた。「皆様の眼下に広がるのは
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