グループ本社、社長室。 デスクの上に置かれた新規プロジェクトの報告書と、若葉が提出したAI自動化技術の計画書にざっと目を通すと、小夜はそれを相手へ押し返した。目の前の隆栄を真っ直ぐに見据え、再び端的に断りをいれる。 「駄目ですよ。岸本さん、役員会でも何度も言ったはずですよ。このプロジェクトは、今の技術チームでは到底体制が追いついていません。計画書をいくら手直ししたところで根本的な解決にはなりません。資金を食いつぶすだけの穴になるのは目に見えています。……あなた、頭がどうかしましたの?会社のために他にやれることがないわけじゃないでしょう」 小夜の声には、隠しきれない苛立ちが混じっていた。 長年グループに貢献してきた大株主である人間だ。あまりきつい言い方はしたくなかった。けれど、ここまで頑なに話が通じないと、さすがにうんざりしてくる。 若葉はこの男に、いったい何を吹き込んだのか。 それとも、この男がただの馬鹿なのか。 「しかし社長、このプロジェクトの発想そのものが優れているのは事実です。将来性も計り知れません。機会さえ与えていただければ、十分に成功する可能性があります。もし初期投資が大きすぎると懸念されるのでしたら、まずは少額で立ち上げ、様子を見ながら段階的に……」 隆栄が食い下がりかけている、その途中だった。 彼の手元のスマホが震えた。取り上げてそのまま切ろうとした隆栄だったが、続けて届いたメッセージを見た瞬間、顔色がサッと変わった。小夜に「失礼」と一言だけ短く告げると、慌ただしく部屋を出ていった。 ようやく静寂が戻った。 秘書の奈々にデスクの上の書類を片付けさせながら、小夜はふと壁の時計を見上げた。もう少しで、樹を学校へ迎えに行く時間だ。 今夜はちょうどスケジュールが空いている。 樹を連れて外で食事でもして、どこかで遊んでから帰ろう。 しばらく、母親としてまともに相手をしてやれていなかった。せっかくの帰国なのだから、少しは埋め合わせをしてやらなければ。そう思って自分のスマホを取り出し、子供が喜びそうなイベント情報を調べようとした。 その時だった。 ドアが乱暴に開いた。隆栄が血相を変えて戻ってきて、小夜を憎々しげに睨みつけた。 「社長。私への当てつけのつもりか知らないが、私の提案を通したく
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