「でも、国内で開くことにして正解だったよ」青山がふいに口を開いた。「どうして?」小夜は不思議に思い、尋ねた。「公安のプロジェクトで少し問題が起きてね。しばらくは海外へ出られそうにないんだ。婚約まで時間もないし、問題が片づくのを待ってはいられなかったから」青山は困ったように説明した。「何があったの?」口にした途端、小夜は聞いてはいけないことだったと気づいた。「今の質問は忘れて」あのプロジェクトのことなら、小夜も知っていた。基盤となるソースコードの構築に、彼女自身も一部関わっていたからだ。だが、公安のプロジェクトであり、機密性は極めて高い。軽々しく聞いていい話ではなかった。そもそも、尋ねるべきではない。青山は頷いた。「ごめん。やっぱり詳しいことは話せないんだ」青山は機密保持契約を結んでいる。『雲山』のアルゴリズムを組み込んだ公安のプロジェクトは、システムの防御に加え、大量の情報処理も担い、情報部門と密接につながっていた。わずかな情報漏洩でさえ、重大な危険を招く。今回は外部から攻撃を受けたものの、防御が十分に機能し、逆に信号を追跡できたため、実害は出なかった。だが、それはあくまで結果である。公安が重く見ているのは、攻撃を仕掛けられたという事実そのものだった。決して見過ごすことはできない。追跡を進めれば国際的な問題へ発展する可能性が高く、当然、厳重な機密保持が必要になる。信号が海外から送られたことまでは分かっている。ただ、相手が情報を何重にも暗号化しており、発信元の正確な位置はまだ特定できていなかった。青山は、プロジェクトの技術責任者である。国内に残り、技術面の方向性を見定めなければならない。この重要な時期に、現場を離れられるはずがなかった。詳しい事情は分からなくても、公安が関わる以上、小さな問題ではない。小夜は心配になった。「こんなときに婚約の準備をして、仕事に影響はない?無理なら延期してもいいのよ。問題が片づいてからでも……」何を優先すべきかくらい、小夜にも分かっている。自分の身の安全に関わる問題など、公的機関が抱える重大事に比べれば、優先順位は低い。しかも、小夜はあのアルゴリズムのソースコードを一部担当しており、どんな役割を持つものかよく知っていた。公安が扱う仕事まで考えれば、何が起きたのかもおおよそ察しがつく。おそら
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