All Chapters of 逆ハーレム建国宣言! ~恋したいから国を作りました~: Chapter 31 - Chapter 35

35 Chapters

第31話:再建の街と、囁かれる策謀

朝日の差す街は、戦いの名残を残していた。瓦礫が散乱し、焦げた匂いが風に乗る。それでも人々は懸命に動き始めていた。バケツで水を運ぶ者、傷ついた者を手当てする者、泣きじゃくる子をあやす者……そこに、エリシアたちが駆け込んだ。「怪我人を集めて!急いで火を消して!」エリシアはすぐに指示を飛ばす。その声に、街の人々の顔に少しずつ光が戻っていった。カイラムは剣を収めると周囲を見回し、潜む敵がいないか探る。ユスティアは治療魔法で傷ついた兵士を癒し、クレインは自ら怪我人を背負って安全な場所へ運ぶ。「……まだ煙がひどいな。」カイラムが呟くと、ヴァルドが大きな桶を抱えて現れた。「井戸水だ!こっちの通りを手伝ってくれ!」ネフィラは子どもたちを避難させながら、踊るような軽やかさで瓦礫を乗り越える。「泣かないで。もうすぐ大丈夫になるからね。」エリシアは一息つくと、ふと城門の影で密やかに話す男たちの姿を見つけた。彼らは紋章を隠した外套を着ており、誰にも聞かれぬように何かを囁いている。目が合った瞬間、彼らはすぐに雑踏に紛れた。(……まだ何かある?)胸の奥に不安が残る。街は守られたが、戦いは終わっていない。いや、むしろこれからが本番なのかもしれない。クレインが歩み寄り、額の汗を拭った。「エリシアさん……街の人たちは、もう大丈夫そうだ。」「ありがとう、クレイン。」「でも……あの紋章をつけた奴ら、ただの残党じゃない。組織だった動きだった。」「そうね……私も見たわ。城門の影で何か話してた。」ユスティアが心配そうに眉を寄せる。「まだ敵が潜んでいるの?」「ええ。次はきっと、もっと大きな何かを仕掛けてくる。」エリシアの胸に、戦いの炎が再び燃え始めていた。カイラムが剣
last updateLast Updated : 2025-07-30
Read more

第32話:潜む闇と、集いし者たち

夜の帳が落ちる頃、グランフォード領の仮設の作戦室には、エリシアたちが集まっていた。窓の外では人々がまだ瓦礫を片付けている。街の灯火が揺れ、遠くで犬が吠える声がする。緊張の中にも、復興の息吹が感じられた。「……ここまでやられるとは思わなかった。」カイラムが地図を見ながら低く呟く。彼の剣はまだ鞘に収められず、戦士の警戒が抜けていない。「でも、今ならまだ間に合うわ。」エリシアは真っすぐに前を見た。「私たちには、この国を守る力がある。……あの外套の男、きっとまた現れる。準備を怠らないようにしなきゃ。」ユスティアが魔法書を抱えて顔を上げる。「後で鏡の間の魔力を調べてみる。あれほど強い反応があったのなら、どこかに繋がる手がかりがあるはず。」「なら、俺は門の修理と防衛の見直しを。」ヴァルドが大きな手で顎を撫でた。「次に来たとき、ただでは済まさん。」ネフィラが軽やかに笑う。「私も街を巡回するわ。踊りの途中で聞こえてくる噂って、案外ばかにできないものよ。」クレインは黙って椅子に座り、両手を見つめていた。彼の瞳には先の戦いの余韻が宿っている。「……俺も、もっと出来ることを見つけます。」エリシアはその肩にそっと手を置いた。「あんたはもう十分やってる。でも、あんたがそう思うなら……私たちはもっと強くなれる。」作戦室の空気が一瞬、柔らかくなる。だが次の瞬間、外で急ぎ足の音が響いた。門番が飛び込んできて叫ぶ。「報告!西の村から伝令です!見たことのない武装集団が森に潜んでいるとのこと!」「……やはり来たか。」カイラムが立ち上がり、剣を抜いた。エリシアは即座に指示を出す。「ヴァルド、ネフィラ、巡回を強化して!カイラム、クレイン、私と一緒に行くわ!」「了解!」
last updateLast Updated : 2025-07-31
Read more

第33話:夜明けの誓約と、揺れる不安

森の戦いを終えてから数時間後、エリシアたちは夜明けとともに街へ戻った。まだ空が淡い群青に染まる頃、街の門をくぐると、人々が徹夜で瓦礫を運び出している姿が目に入る。暖かなスープの匂いが漂い、救護所ではメイドたちが包帯を交換していた。「……みんな、おつかれさま。」エリシアが低く声をかけると、作業していた人々が振り向いて笑みを見せる。だが、その笑顔の裏には不安が潜んでいるのを彼女は見逃さなかった。カイラムは無言で剣を拭きながら、門の外を見つめている。「あの仮面の男……あのまま帰したのは気に食わん。」「でも、あれ以上やってたら被害が出てたわ。」ユスティアが肩をすくめる。「情報を持ち帰らせてしまったことも気になるけどね。」クレインは腰を下ろし、手のひらを見つめていた。まだ微かに震えるその指に、戦いの重さが宿っている。「……彼、最後に俺を見ていた。何か言いたそうに。」「それでも、あんたは剣を振るった。立派だったわ。」エリシアは優しく微笑むが、その胸には痛みがあった。ヴァルドが大きな手で肩を叩く。「戦いは戦いだ。迷うのは当然だが、それを乗り越えるのもまた力だ。」「……はい。」クレインは力強くうなずく。そのとき、ネフィラが舞うような足取りでやってきた。「街中でまた噂を聞いたわ。西門の近くで、外套を着た怪しい連中が夜な夜な動いているらしいの。」「……やっぱり、街の中にも潜んでる。」エリシアは眉をひそめ、すぐに作戦を練り始めた。「まずは夜警を増やすわ。ユスティア、結界を強化できる?」「もちろん。」集まった仲間たちの間に、決意の熱が再び生まれる。だが同時に、誰もがまだ見えぬ脅威を感じていた。◆◆◆夜が明けきる頃、街の広場では小さな集会が開かれていた。焚き火を囲
last updateLast Updated : 2025-08-01
Read more

第34話:静かな昼下がりと、迫る陰影

昼過ぎ、街はようやくひと息ついたように見えた。瓦礫は片付けられ、商人たちが慎重に屋台を並べ始めている。広場には香ばしい焼きたてパンの匂いが漂い、子どもたちが走り回っていた。まるでつい昨日まで戦闘があったことが夢だったかのように、街は平穏を取り戻そうとしていた。エリシアは父と母が営む小さな屋敷の庭を訪れていた。母は薬草を摘み、父は木材で椅子を修理している。「無事でよかったわね、エリシア。」母は娘の手を取り、傷がないか確かめるように撫でた。「あんたが戦いに出ていくたび、胸が締めつけられるのよ。」「ごめんなさい……でも、私はここを守りたい。」エリシアは穏やかに答えた。父が微笑む。「お前はもう、私たちの自慢だ。だが、自分も大事にしろ。」その言葉が胸に沁みた。まだ街を守る責務が重くのしかかる中、両親の温もりは彼女にとって何よりの支えだった。その後、広場に戻ると、仲間たちが作戦会議を始めていた。カイラムは地図を広げ、警備のルートを見直している。ユスティアは新しい結界の設計図を書き、ネフィラは商人たちから聞き込みを行っていた。ヴァルドは防壁の補修計画を確認し、クレインは台所で傷ついた兵士たちのための特別なスープを煮込んでいる。「みんな、ありがとう。」エリシアが声をかけると、ネフィラが軽やかに笑った。「こちらこそ。あなたがいるからこそ、私たちも頑張れるのよ。」そのとき、門番が駆け込んできた。「報告!北の森で不審な隊商が目撃されました。外套を着た者たちが……!」空気が一瞬で張り詰めた。「すぐに確認しに行くわ。」エリシアが答えると、カイラムが立ち上がる。「俺も行く。」クレインは鍋の火を止め、真剣な眼差しを見せた。「俺も行きます。戦うために剣を握るって決めたから。」「待って、街はどうする?」ユスティアが問いかけると、ヴァルドが
last updateLast Updated : 2025-08-02
Read more

第35話:決意の剣と、迫り来る影

夜が明けたばかりの街。鐘の音が響き、人々が新しい一日を迎えるために動き出していた。昨日の報告を受け、エリシアたちは再び作戦室に集まっていた。壁には地図が広がり、敵の動向や隊商の情報が書き込まれている。「クレインの兄が……」と、ユスティアが慎重な口調で口を開く。「その情報は重い意味を持つわ。敵がどこまで組織だっているかを示している。」クレインは、昨日の夜を思い返すように目を閉じた。だがその表情には、これまでのような迷いはもうなかった。「あのとき、俺は迷った。でも……もう二度と、迷わない。」カイラムが剣を研ぎながら目を細める。「その言葉、簡単じゃないぞ。」「わかってる。」クレインははっきりとした声で答えた。「兄さんが敵になった理由は、これから知る。でも、俺の選ぶ道は変わらない。この街と、この仲間を守る。それが俺の決意だ。」エリシアはその言葉に優しく微笑み、剣の柄を握った。「なら、頼もしい限りね。」「……情報を持ち帰ったあの隊商、今度は東の丘を越えるらしい。」ネフィラが報告する。長い髪をかきあげながら真剣な目を向けた。「今ならまだ追いつけるわ。」「よし、準備を整える。」ヴァルドが立ち上がり、戦斧を肩に担ぐ。「向こうも前より強く警戒しているだろう。こっちも気を抜くな。」出発の準備を進める中、エリシアは両親の屋敷へ立ち寄った。母は相変わらず薬草を摘み、父は道具の手入れをしている。「また出かけるのね。」母が静かに問いかける。「ええ。でも、ちゃんと帰ってくるわ。」エリシアの答えに、父は力強くうなずいた。「お前は私たちの誇りだ。戻ったらまた一緒に夕食を食べよう。」その言葉を胸に刻み、エリシアは仲間のもとへ戻った。クレインはすでに剣を帯び、カイラムと肩を並べている。「準備はいいか?」とカイラムが問う
last updateLast Updated : 2025-08-03
Read more
PREV
1234
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status