「……わたくしが、“あなたの記憶”を守っていました――この時のために!」山の風を背に、現れた少女は堂々と宣言した。銀色の長髪が陽を弾き、まっすぐな視線が“語られぬ王”セレヴェルを見据えている。「……リュシア・アメリア=アルティリオ。記録から消された“姫君”か。」セレヴェルが名を呼ぶと、少女は静かに膝をついた。「祖父上の名を、ようやく“外の世界”で耳にできました。今こそ、失われた記憶を――語るべき時です。」◆◆◆グランフォード本城、応接室。セレヴェルとリュシアを迎え入れた一同は、驚きの連続だった。「まさか、王家に“もう一つの継承筋”があったとはね。」ネフィラが記録魔導具を展開しながらつぶやく。「しかもそれを、ずっと“口伝”で残してたなんて。」「血筋ではなく、言葉と記憶で継ぐ一族……かっこよくない?」「うちの国家、名乗り方いちいちドラマチックなのよ!」エリシアは椅子でぐるぐる回りながら興奮していた。だが、セレヴェルの言葉は重く静かだった。「記録は裏切る。だが、記憶と誓いは、魂に刻まれる。私はそれを証明するため、あらゆる痕跡を捨て、眠っていた。」「つまり……“忘れられること”すら、覚悟の上だったってこと?」ユスティアが問うと、セレヴェルは頷いた。「そして今。君たちが記憶を呼び覚まし、“忘れられた者たち”に光を与え始めた。」「それは、この世界における“血を超える継承”だ。」リュシアが口を開く。「我々“記憶継承者”にとって、何より尊いこと。それは――“思い出してくれる
Last Updated : 2025-07-10 Read more