All Chapters of 逆ハーレム建国宣言! ~恋したいから国を作りました~: Chapter 21 - Chapter 24

24 Chapters

第21話:闇の都と、消された記憶

王都・アルバレスト――かつて繁栄を誇ったその都は、今、妙な静寂に包まれていた。「……音が、ない。」馬車を降りたネフィラが眉をひそめる。街路に人影はある。だが、誰も声を発しない。笑いも、怒りも、交渉も、嘆きも、何もない。「まるで、“感情が削がれた”みたいだね……。」ユスティアの呟きに、カイラムが警戒を強める。「それに、“魔力の痕跡”もない。まるでここ一帯が……。」「“記憶ごと洗われた”ような空間ってことか。」エリシアが苦い顔で言った。◆◆◆調査のためにかつての王家の諜報施設――“黒塔”に潜入した一行は、記録室に残された断片にたどり着く。「これは……失踪者の名前……? でも、全部“記録不備”で抹消されてる……。」「というか、“記録そのものが削除されている”気配だ。普通の魔法じゃこんな痕跡は残らない。」ネフィラが急ぎ補足する。「“存在を編纂から外す”って、ただの禁呪じゃ無理よ。これは、“編纂そのものを支配している者”の仕業……!」「……世界法則の領域に干渉するってこと?」「うん。“記憶の根幹”を操れる存在――もしかして、“神に近いもの”。」そのとき、記録室の奥からひとつのノートが落ちた。エリシアが拾い上げると、そこには見覚えのある筆跡が残されていた。『君のことを忘れたくない。だから、この一冊だけは、記憶の底に隠す。』「……これ、レオニスの字だ。」その瞬間
last updateLast Updated : 2025-07-20
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第22話:偽りの神と、選ばれぬ未来

――回収した“封印領域”の記録断片を分析した結果、ユスティアはひとつの仮説を立てた。「この“断絶魔術”は、個人の記憶改変の域を超えている。“世界そのものの記録”に干渉してるんだ。」「それってつまり……“神の仕事”ってこと?」エリシアの問いに、ユスティアは苦々しく頷いた。「正確には、“神を名乗る何者か”だろうね。」◆◆◆一行は“古代魔導図書館”の封印地下層にて、禁書《記録なき神譚》を発見する。そこにはこう書かれていた。『選定されぬ民には言葉を与えず。選ばれぬ未来には記録を許さず。“神”とは、選定を繰り返す監視者なり――』「……なるほど。じゃあ“私たち”は、“神に選ばれていない存在”ってこと?」「もしくは、“選ばれようとしなかった存在”かもな。」カイラムが言う。「でもそれ、おかしくない?“生きる価値”に選ばれも落とされもないわ!」エリシアの声は、禁書の部屋に反響する。「……このままだと、“歴史そのもの”を編纂されるわよ。私たちの築いた国も、“最初からなかった”ことにされるかもしれない。」ネフィラの声に、一同は静かに息をのんだ。「なら、抗うしかない。神だろうと、編纂者だろうと、私たちの未来は“自分で選ぶ”!」エリシアは、空へ拳を突き上げた。◆◆◆そして――その夜。古代魔導図書館の上層部に、“声”が降ってくる。≪選ばれぬものたちよ。未来は与えられるもの。決して、選ぶものではない≫「……来たな、“偽神”!」“声”は形を持たぬ存在――だが、その魔力の圧力は、確かに空間を歪める。「お前たちの選択など、世界に記されぬ。だから消えるのだ。」「消えないわよ!」エリシアの声が、魔力となって夜空を切り裂いた。「私がここにいる限り、“記録されない未来”だって、ちゃんと存在してるって証明してみせる!」“偽神”の気配が、一瞬揺らいだ。
last updateLast Updated : 2025-07-21
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第23話:静かなる準備と、胸に秘めた答え

「……王都から戻ったばかりなのに、もう次の準備か。」カイラムのため息を聞きながら、エリシアは執務机に山積みになった資料を見つめた。「やるしかないわよ。あの“偽りの神”を退けただけじゃ、まだ足りない。これから何が来ても、私たちが選べるように、全部整えておかなきゃ。」ネフィラが腕まくりをし、ユスティアは新たな魔法式を書き連ねている。誰もが静かだが、その目は未来に向けて研ぎ澄まされていた。「……とはいえ、今は“嵐の前の静けさ”ってやつだね。」ユスティアがぽつりと言う。「だからこそ、しっかり準備しなきゃ。私たち、もう簡単には折れないんだから。」エリシアは言葉に力をこめた。だが、その夜――◆◆◆夢を見た。見慣れたはずのグランフォードでも王都でもない。白い霧が立ち込める、どこか懐かしい図書館のような空間。そこで、ひとりの少女が机に向かい、パーカーの袖をまくりながら本を書いていた。「……あなたは?」思わず問いかけると、少女はペンを止め、静かにこちらを見た。「ごめんなさい。私がまだまだ未熟だから……。」「……え?」「私が書くこの世界は、まだ不完全で、傷つけてしまうこともある。それでも――。」少女の瞳は、深い愛情と悔しさを湛えていた。「せめて、これだけは言わせて。私はあなた達人類を愛しているの。だから、負けないで。」「……あなたは、誰?」少女は少しだけ微笑み、そして自分を指差した。「私は――“神様”なのよ。」◆◆◆その瞬間、白い世界が光に包まれた。エリシアは目を覚まし、冷たい夜気を吸い込んだ。胸の奥が熱い。
last updateLast Updated : 2025-07-22
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第24話:流れる砂と、刻まれた約束

「……また王都方面から奇妙な報告が?」広間に置かれた地図の上に、ネフィラが指を滑らせた。北西、砂嵐に覆われた未開の地。その中央に、新たな“砂の都市”が突如現れたという。「もともとあそこは荒れ地で、集落もなかったはずなのに……。」ユスティアが古い記録をめくりながら顔をしかめる。「しかも、その都市は“時間の流れが違う”らしいのよ。王都の斥候が一日滞在しただけで、戻ったときには数年分の老化が進んでいたって。」「……嫌な予感しかしないわね。」エリシアは地図を見つめたまま呟く。胸の奥で、あの夢の中の少女の声がふとよみがえる。――私はあなた達人類を愛しているの。だから、負けないで。「……だから、見て見ぬふりはできないのよね。」「行くのか?」カイラムが問う。「行くわ。“時間を奪う”なんて、また誰かの選ぶ権利を奪うことになるもの。」◆◆◆出発の日、彼女たちは砂漠に立っていた。乾いた風が頬を切り、地平線に砂嵐が渦を巻いている。「この先に、その“砂の都市”がある……。」ネフィラが呪文を唱え、風を抑える結界を張った。「……ん?」エリシアは足元の砂をすくい上げた。さらさらとこぼれ落ちるはずのそれが、なぜか一瞬、彼女の手のひらで止まった。「これ……普通の砂じゃない。“時間砂”よ。」「時間砂?」「古代の伝承にある。時間の流れを固定したり、逆に加速させる術式の触媒……誰かが大規模に使った跡かも。」カイラムが剣の柄に手を置き、あたりを見回した。「用心しろ。俺たちが踏み入れるのは
last updateLast Updated : 2025-07-23
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