「奏芽《かなめ》さん、弟さんか妹さん、いるでしょ?」 その思いは半ば確信に近い。 だって、のぶちゃんが私に小さい頃あれこれしてくれていたそれに似てる。「なに、凜子《りんこ》、エスパーか何かなの?」 奏芽さんがクスクス笑って、私も今朝、貴方に同じことを思ったのよ、って思ってつられて笑ってしまった。「この間の夜、見ただろ。ちっこい女の子」 私の手から学食の紙袋を取り上げると、中身を出して手渡してくれながら、奏芽さんが言う。「……えっと、和音《かずね》、ちゃん?」 ハンバーガーを受け取りながら言ったら「よく覚えてんじゃん。そう、和音」って言って、「あれ、俺の妹の娘」 何でもないことのようにさらりと付け加えた。「えっ? ……妹さんのっ!?」 ハンバーガーを手にしたまま、驚きのあまり大声でそう叫んで奏芽さんを見つめたら「ちょっ、まさか凜子。和音のこと俺の娘とか思ってたわけじゃ!?」って慌てるの。 ごめんなさい、顔立ちも似てたし……絶対そうだと勝手に思ってました。「じゃ、あの……和音ちゃんは……その……奏芽さんの姪っ子さんってこと、ですか?」 改めて聞くまでもなく、妹さんのお嬢さんってことはそうなんだけど……彼の口からハッキリ聞きたいって思ってしまったの。 あれは俺の娘じゃない、姪だよ、と。「ああ、そう姪っ子。幼なじみと妹が一緒になってさ。まぁ俺も仕事柄 和音のことは生まれた時から診てる感じだから……そうだな。娘って感覚、ないわけでもねぇわ」 あの日は妹さんと幼なじみさんが月に1度のデートの日だったとかで、和音ちゃんを奏芽さんが預かっていたんだとか。 お寿司が食べたいという姪っ子さんを連れて回転寿司店《あのお店》に来て、たまたま私たちを見つけたらしい。「結婚して8年も経
Last Updated : 2025-08-07 Read more