「っちゅーことでさ、凜子《りんこ》が家に寄りたいってんなら、俺、雨宮《あまみや》にはちゃんと一報入れるぜ?」 スマホに視線を投げながらそう言ってくれる奏芽《かなめ》さんに、私は「貴方のそう言うところが大好きなんです」ともう1度、心の中でつぶやく。 だって、まだ声に出しては言えない。 のぶちゃんにちゃんと話をしてからでないと――。 私、今感じているような素直な気持ち、一刻も早く、奏芽さんにちゃんと胸を張って言えるようになりたい。 そのためにも、のぶちゃんに自分から連絡をしないと。 そう、思ったの。 *** 「なぁ凜子、聞いてる?」 奏芽さんに目の前でひらひらと手を振られて、ハッとする。 考え事に夢中になってしまって、彼の問いかけへの答えをちゃんと出来ていなかった。「あ、あの……えっと……」 ソワソワと視線を泳がせたら、「別の事考えてただろ」って正鵠《せいこく》を射られてしまった。 また、「俺と一緒にいるのに他の男のこと?」って叱られるかと身構えた私に、「急かす様なこと言っちまったけど……焦って結論出す必要はないんだからな?」って予想に反した言葉が続く。「え?」 思わず頓狂な声を出して奏芽さんを見つめたら、「生真面目な凜子のことだ。きっと俺への返事絡みであれこれ考えてんだろ?」って私をじっと見つめてくるの。 本当、この人には敵わない――。「……奏芽《かなめ》さんは……やっぱりエスパーか何かみたいです。――私、いま、のぶちゃんと……。えっと、幼なじみの彼と……ちゃんと話してからでないと、奏芽さんとのことにも向き合えないなって……そんなことを思ってました」 今までは、ただ漠然と「また連絡するね」と言ってくれたのぶちゃんからのコンタクトを待てばいいと思っていたのだけれど、自分のことなのにそんな受け身でいいのかな?って……。自分から動かないとダメなんじゃないかな?と思ってしまった。 ただ単に、自分の中で結論が出てしまったから、のぶちゃんに少しでも早くそれを伝えたくて堪らないだけなのかも知れない。 のぶちゃん側の気持ちの整理なんてお構いなしに、自分本位に動こうとしているに過ぎないんだと言うのも分かってるつもり。 でも、私がノブちゃんに伝えたい言葉は、それが遅くても早くても、きっと彼を傷つけるから。 だったら、いっそ早
Last Updated : 2025-08-16 Read more