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9.曖昧な関係④

Penulis: 鷹槻れん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-13 05:00:23

 驚いて瞳を見開いた瞬間に、限界まで溜まっていた涙がポロリとこぼれ落ちる。

 そのことに気づいただろうに、奏芽《かなめ》さんはあえて何も言わなくて……そのまま話を続けてくれた。

「さっき……凜子《りんこ》が俺に脈があるかもって教えてくれただろう?」

 言われて涙でぼんやり霞んだ視界のまま、小さく首肯する。頭を動かした途端、またポトリと涙が落ちる。

「俺さ、こんなだから結構沢山の女と付き合ってきたわけ」

 言われた瞬間、言いようのないモヤモヤがこみ上げてきて、涙目のまま思わず握られた手を引こうとしたけれど無理で。

「まぁ、怒るなよ。過去の話だ」

 ってそういうことをサラリと言えてしまえるところが嫌なんだと、何で気づけないんだろう。バカっ!

「――べっ、別に怒ってませんっ」

 唇を噛み締めてそう吐き出したら、悔しさのせいかもっともっと視界が霞んで。

 そんな私に、「そっか」って何もかもお見通しみたいに奏芽《かなめ》さんがうなずくの。

 そこで信号が青になって、奏芽さんの手が呆気なく私から離れる。

 その瞬間、思わず「待って」って思ってしまって、私はそれが恥ずかしくて唇を噛み締めた。

***

 どこか無理矢理運転に集中するように前方を見つめたまま奏芽さんが続けるの。

「けどさ、……何だろ。さっき凜子《りんこ》に……俺にもチャンスがあるかもって言葉をはっきりもらった瞬間、どうしようもなく嬉しいって思っちまって。――自分からそうなるように仕向けといてバカかって思われるかも知んねえけど……そんな風に思ったことに正直めちゃくちゃ戸惑ったんだよ」

 その衝動が自分でも初めてで、訳が分からなくて困惑したのだと奏芽さんが言う。

 あの「なんだ、これ」はそういう意味だったのねって思ったら、何だか今更のように照れてしまった。

「凜子が結

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